石田尾茂樹議長へ、法廷で取材拒否の理由を聴かせてください
屋久島町、記者クラブ加盟社に限定した鹿児島県議会の慣行に従った
撮影と録音は禁止なのに「取材は禁止していない」
町の主張は詭弁ばかり、やむなく証人尋問へ
【議会取材の自由を守る訴訟】
※屋久島ポストは訴訟の当事者であるため、主観を入れた取材記の体裁にしています

屋久島町議会(石田尾茂樹議長)が市民メディア「屋久島ポスト」の議会取材を拒否したのは、「表現の自由」などを保障した憲法に違反しているとして、屋久島ポストが町を相手取って提起した「1円訴訟」――。
この訴訟の第5回弁論準備手続きが3月26日にウェブ会議であり、今後の審理で証人尋問が必要かどうかについて、原告と被告の双方が意見を述べました。
最大の争点は「取材拒否の具体的かつ合理的な理由」
最も大きい争点は、石田尾議長が屋久島ポストの取材を拒否した「具体的かつ合理的な理由」です。
被告町の代理人である新倉哲朗弁護士は、これまでの書面で理由は述べているとして、証人尋問は必要ないと主張しました。
一方、原告の屋久島ポスト(共同代表・鹿島幹男、武田剛)は、取材拒否の理由について石田尾議長が「議長判断」としか説明していないため、このまま具体的かつ合理的な理由が示されないようであれば、証人尋問で聴かざるを得ないと伝えました。
本来であれば、この日の弁論準備手続きまでに、前回の期日で屋久島ポストが質問していた取材拒否の具体的な理由について、町が準備書面で答える予定でした。しかし、書面の提出が遅れたため、ウェブ会議のなかでは話し合うことができませんでした。

石田尾議長、取材の能力や経験は判断せず
そして、期日が終了したのちの夕方、鹿島と武田の自宅に町の準備書面がそれぞれ届きました。さっそく開封して文書を読むと、残念ながら私たちが期待しているような具体的かつ合理的な理由は書かれていませんでした。
端的に言うと、町の主張は次のような趣旨の内容です。
鹿児島県議会が県庁記者クラブに加盟しているマスコミ各社に取材を許可していることを踏まえて、石田尾議長もその慣行を踏襲した。屋久島ポストのような県庁記者クラブに加盟していないネットメディアなどについては、「議会の内容を公平公正かつ正確に伝えられる能力や経験があるかどうか」を判断することなく、県議会の慣行に従って取材を認めていない。
鹿児島県議会はどう考えているのか?
町の書面を読むと、一見は具体的な理由を説明しているように思えますが、実はこのなかには大きな詭弁が隠されています。
県議会が記者クラブ加盟社に議会取材を許可しているのには、それなりの「合理的な理由」があるはずなのですが、それが明確に説明されていないのです。確かに書面の前段では、全国の地方議会が日本新聞協会などの加盟社に議会取材を慣例で認めているという一般論を示していますが、具体的な理由については、やはり鹿児島県議会に尋ねてみなくてはわかりません。

屋久島町議会の自主性と独立性はどこに?
さらに言えば、鹿児島県議会といえども、屋久島町議会とは対等な立場にある地方自治体の議会です。全国を見渡せば、フリーランスの記者やネットメディアだけでなく、一般市民にも議場での撮影と録音を認めている地方議会は多々あります。つまり、議会の傍聴のあり方については、それぞれが独立した立場で判断することが求められるのです。
記者クラブというはマスコミ各社でつくる任意団体にすぎません。そして、そもそもですが、屋久島町議会には記者クラブなるものは存在しません。
それにもかかわらず、ただ単に鹿児島県議会の慣行に従って、県庁記者クラブの加盟社だけに取材許可を限定するという判断は、屋久島町議会の自主性や独立性を蔑ろにするものです。屋久島町で暮らす一住民としては、全くもって納得できません。

拒否から許可へ、一転した理由については完全無視
そして、町の主張が詭弁だと感じる最大の理由は次の点です。
石田尾議長は2025年4月、それまで約3年半にわたって拒否し続けてきた屋久島ポストの議会取材について、一転して認める判断をしましまた。
なぜ、その判断が変わったのか?
提訴前から屋久島ポストはその理由を石田尾議長に問い続け、この訴訟でも質問を投げかけています。ところが町は、3月26日に受け取った準備書面を含め、その具体的な理由はおろか、私たちの質問そのものを完全に無視しています。
「議長の裁量権」は錦の御旗か?
答えられないのは当然でしょう。
なぜなら、ただ単に県議会の慣行に従って取材を不許可にしたと説明しているのに、途中でその判断が一転して変わったのですから。さらには書面で町は、「議会の内容を公平公正かつ正確に伝えられる能力や経験があるかどうか」を判断することを強制することは、「議長の裁量権の否定に繋がるので許されない」とまで言っています。
不都合な質問には答えない。おそらく、そういうことなのでしょう。そして、「議長の裁量権」を錦の御旗のように掲げて、自身の詭弁を押しとおすのだと思われます。

取材活動で撮影・録音は不可分なのに……
最後にもう一つ、町の詭弁を紹介します。
屋久島ポストに対する取材拒否について、町は「議長が許可しなかったのは撮影行為のみ」で、取材を全面的に禁止したわけではないとしています。しかし、マスコミが映像や写真を報じるのと同じく、屋久島ポストも動画や写真をネットで配信します。さらには、石田尾議長は撮影に加えて録音も禁止しています。
そうなると、屋久島ポストは議会の内容を正確に報道することができません。取材活動には撮影と録音が不可分の関係で含まれており、撮影と録音を禁止するということは、実質的に取材を禁止することに他ならないのです。

箸がなくては弁当は食べられない
これを別に例えるなら、公共の休憩スペースなどで、お弁当やカップラーメンなどの食べ物は持ち込んでいいけれど、箸やスプーン、フォークなどは使ってはいけませんと、言っているのと同じです。もちろん、素手で食べることはできますが、そんなことは日本の生活習慣では考えられず、実質的に「飲食禁止」と言っていることになります。
それでも、きっと町と新倉弁護士は言うのでしょう。「そこまで言うのなら、おにぎりかサンドイッチを食べればいいのに」と。
でも、私たち屋久島ポストは、たっぷりとデミグラスソースがかかった特製ハンバーグ弁当が食べたいのです。そして言いたいです。「私たちが食べるものを、勝手に決めないでください」と。
ということで、これだけ詭弁ばかり言われると、まともな議論にならないので、やむを得ません。石田尾議長には鹿児島地裁に出廷してもらい、私たちから直接、屋久島ポストの取材を拒否した理由を聴きたいと思います。
※「屋久島ポスト」は訴訟の当事者であるため、この【議会取材の自由を守る訴訟】については、記事の文体を「です、ます調」にしたうえで、主観を入れた体験取材記の体裁にしています。
