あんなに遅れた光回線、町長は「1期目から精力的に国に働きかけた」と言うけれど…【屋久島 in FACT】
2018年当時、屋久島町は「ネット後進地」で旧式のADSL回線
整備負担3億円、NTTの提案を断り新庁舎建設を優先
光回線、鹿児島県内どん尻の2020年に導入

<対外的には1期目から精力的に国や県に働きかけ、特に力を入れて訴え続けたのは、光ブロードバンド敷設と……>
屋久島町の荒木耕治町長は2025年4月7日に更新された全国町村会のウェブサイトに、こんな一文を寄稿している。<屋久島町のさらなる飛躍をめざして>と題して寄せた随想だが、一読して「これは本当なのか?」と目を疑ってしまった。
荒木町長が初当選したのは2011年10月なので、町長1期目は2011年~2015年となる。それに対し、屋久島町にインターネットの光回線が入ったのは2020年5月以降だ。初当選から数えれば、町内に光回線が導入されるまで、実に9年近くを費やしているのだ。本当に<1期目から精力的に国や県に働きかけ>たのであれば、これほど長い年月がかかるはずはない。
荒木町長、光回線は「電気水道ガスに並ぶライフライン」!?
そんな疑念を抱きながら随想を読み進めていくと、荒木町長はこんなことまで書いていた。
<今やブロードバンド回線は電気水道ガスに並ぶライフラインと言っても過言ではなく、その整備を急ぎました。令和2年(2020年)5月にサービスを開始し、その後一気に需要が増したWeb会議やオンラインイベントの開催・配信においても遺憾なくその通信の安定性と速度を発揮するなど、本格的なコロナ禍に突入する前に整備できたことは、まことに僥倖であったと感じています>
ここまで読んで、荒木町長は「ウソ」を書いていると確信した。
なぜなら、町内に光回線が整備される2年前の2018年当時、すでに屋久島町は全国でも残り少ない「ネット後進地」だったからだ。鹿児島県内では大半の市町村に光回線が整備され、お隣りの種子島1市2町でも、その数年前から高速インターネットのサービスが全島民に行きわたっていたのである。

動画配信サイト、通信アプリ、ネット教材など まともに利用できず
もう記憶が薄れているかもしれないが、そのころの屋久島町では、多くの町民が「カメ」のように遅い旧式のADSL回線に悩まされていた。
動画配信サイトで映画やドラマを観たくても、画像がコマ送りのように詰まってしまい、全く楽しむことができない。外国からの宿泊客が多いホテルや民宿では、海外と通話したくてもスカイプなどの通信アプリが使えない。小中高生がデジタル教材やオンライン英会話で学びたくても、目の前のパソコン画面は固まってばかり……。
奄美市、光回線で「フリーランスが最も働きやすい島化計画」
そんな屋久島町を尻目に、奄美市は東京のIT関連会社と提携し、2015年から「フリーランスが最も働きやすい島化計画」を開始。通信環境が整った島内に都会から移住者を呼び込み、2020年までに200人のフリーランスを島内で育成する計画を立てていた。
2021年に奄美大島は世界自然遺産に登録されるのだが、同じ遺産登録地の屋久島よりも、ずっと早く光回線を活かした移住政策を始めていたのだ。人口減少に歯止めをかけ、増加が予想される観光客に対応するためにも、先見の明がある対応だったといえる。

荒木町長、光回線の未整備「財政的な問題が一番先にある」
それでは、なぜ屋久島町では光回線の整備が大幅に遅れてしまったのか?
最大の理由は、2013年ごろにNTT西日本から提案された光回線の整備計画を、荒木町長が断ったことである。町側の自己負担は3億円ほどだったが、新しい町役場庁舎の建設計画を温めていたため、光回線に予算が回せなかったのだ。
その問題を町議会で指摘された荒木町長は「財政的な問題が一番先にある」と答弁し、光回線の未整備について釈明を続けていた。

昔の苦労、とっくに町民は忘れていると思っているのか?
それにもかかわらず、どうして荒木町長は全国町村会のウェブサイトに、光回線の整備を「1期目から精力的に国や県に働きかけ」たと書いたのか? 先述した経緯を踏まえれば、町長の記述は過去を顧みない、事実とは全く違う内容である。
おそらくだが、旧式のネット回線で苦労したことなど、とっくの昔に町民は忘れているに違いないと、高を括っているのだろう。だが、屋久島ポストの前身であるブログニュース時代の原稿を読み返すと、その当時の「事実」がしっかりと記録されており、荒木町長が「ウソ」を書いていることがわかる。
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町長や町役場が説明していることは、本当に正しいのか? そんな疑問を感じたとき、屋久島ポストは【屋久島 in FACT】と題して、ファクトチェックをする記事を不定期で掲載します。
その初めとして、今回は屋久島ポストの武田剛・共同代表が書いた2018年5月28日付の記事「【オピニオン】光回線の整備は最優先課題」を以下に転載し、事実確認の根拠として示します。
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【オピニオン】光回線の整備は最優先課題
2019年度の予算で光回線の整備を
町、「財政難」理由にNTT西日本の提案を断り未整備
移住者誘致、観光客増、教育の充実などに不可欠
【2018年5月28日付】

屋久島は情報化社会から完全に取り残されている――。
NTT西日本が公開している光回線サービスのエリアマップを見て、そう確信した。鹿児島県内の大半に通信速度の速い光回線が整備されているなかで、未整備の数少ない自治体として、屋久島町がポツンと取り残されているのである。
お隣りの種子島を見ても、全島に光回線が整備され、遠く離れた奄美大島でも、大半の自治体が高速な回線を利用している。県内の離島でこれだけ普及しているなかで、なぜ屋久島が未整備なのだろうか。
理由は、5年前にNTT西日本から提案された光回線の敷設について、町が断ったからだ。3億円ほどの自己負担が出せなかったことについて、荒木耕治町長は町議会で「財政的な問題が一番先にある」と答弁している。だが、節約すべきは光回線の予算ではなく、その他に削減できる事業があったのではないか。
現在のADSL回線でも、「それほど不自由はない」と思われる人もいるであろう。しかし、人口が減り続ける島の将来を考えると、それが「致命傷」になる可能性がある。
まずは、移住者の誘致だ。奄美市は東京のIT関連会社と提携して、2015年に「フリーランスが最も働きやすい島化計画」を開始。通信環境が整った島内に都会から移住者を呼び込み、2020年までに200人のフリーランスを島内で育成する計画を立てている。
移住ブームが去った屋久島でも、同じような試みが望まれる。だが、数十分の動画ファイルの送信に、何時間もかかるような旧式の回線では成す術もない。1万3000人で安定していた人口は減少に転じ、現在は約1万2700人。2050年には1万人を切ると推計されているのだが、町は有効な対策を打ち出せていない。

外国人が急増している観光にも、深刻な影響が出ている。スカイプなどの通信アプリで海外と会話をしようにも、通信速度が遅くて、まともに通話ができないといった苦情があり、ホテルや民宿の関係者は頭を悩ませているという。
また、公衆の無線LAN「Wi-Fi」スポットの整備も急務だ。種子島の西之表市では、市役所や鉄砲館、観光案内所などで利用でき、観光マップで場所を紹介している。一方、屋久島町では環境文化村センターの1カ所のみで、あとは民間頼み。町が提供するサービスは一つもない。
教育面でも心配がある。今後は、さらにデジタル教材が普及して、タブレットやパソコンで勉強をする子どもが増えるが、現在の回線速度では利用できない教材も出てくる可能性がある。
その他、災害時の緊急連絡や情報収集でも、光回線は欠かせない。この情報化社会のなかで、町が最優先にするべき課題の一つは、この光回線の整備である。
5年前、NTT西日本の提案を断ったのは、荒木耕治町長の判断ミスだった。そして、それを取り戻すには、光回線の整備に予算を投じることを、一日でも早く決断することだ。
遅くても、2019年度の当初案で予算化することが強く求められる。
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