多目的交流センター

【展望】多目的交流センター、建設地も含めて全町民でじっくり検討を

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1万1000町民が「平等かつ公平に利用できる」施設にするために

建設費の高騰で完成予定が大幅延期

【左】老朽化で大ホールの利用が休止されている屋久島町総合センター=屋久島町安房
【右】多目的交流センターの平面イメージ図(町政策推進課が作成した資料より)

いつの間にか、町民の知らないところで決まっている。

屋久島町が建設計画を進める多目的交流センター(文化兼体育施設)の取材をして感じることだ。

町は島内の北部と南部に計二つある文化施設を一つに統合する計画だが、新たに建てる多目的交流センターを北部に建てる一方、南部の文化施設は廃止する方針を決めていたのだ。それも、その詳細な計画を全町民に配布される町の広報誌で知らせることなく。

そこで南部の町民たちは驚いた。

屋久島の広さは約500㎢もあり、本土の鹿児島市とほぼ同じだ。島の中央には標高2000m近い山々が連なり、南北を縦断する道路はない。そのため、南部から新たなセンターの建設が予定される北部の宮之浦に路線バスで行くと、最大で1時間半もかかる。

空から望む屋久島の全景。島の中央には高い山々が連なり、南北を縦断できる道路はない

南部の町民が町長に直訴

そんな不便を強いられては困ると、南部の町民たちは荒木耕治町長に直訴した。

南部地域の安房にある屋久島町総合センターの大ホールを存続してほしいと。そして、もしそれが不可能であれば、新たな多目的交流センターは南北の中間地点で、町役場の庁舎がある小瀬田に建てて、「全町民が平等かつ公平に利用できる」施設にしてほしいと。

荒木町長の決断と約束

その声を受けて、荒木町長は昨年9月に決断し、町民たちと約束した。

北部に新たなセンターを建てるのに加えて、いま老朽化で利用休止になっている南部の安房大ホールも「必要最低限の整備」で維持すると。それも、早急に整備計画を立て、できるだけ早く工事を始めると。

屋久島町総合センター・大ホールの存続をめぐる意見交換会で、住民と向かい合う荒木耕治町長ら町幹部=2024年9月26日、屋久島町安房の安房公民館、屋久島ポスト撮影

予算不足で約束と建設計画に暗雲

しかし、それから1年が経ち、その約束が守れそうになくなってきた。

南部の大ホールを改修すると、当初心づもりしていた1億円を大幅に上回り、3億5000万円もかかることがわかったのだ。「必要最低限の整備」とはいえ、こんな高額な予算を老朽化した施設に投じられないと、荒木町長は二の足を踏んでいるという。

そこに来て、さらに新たな問題が持ち上がった。

全国で公共施設の建設費が高騰するなかで、多目的交流センター建設の予算確保が難しくなったのだ。高騰分を補うためには、国の補助金を申請しなくてはならない。それには当初の構想を見直す必要があり、設計書や計画書の作成などに「2年ほどかかる」という。

屋久島町総合センター・大ホールの廃止について答弁する荒木耕治町長=2024年6月11日、屋久島町議会YouTubeチャンネルより

完成まで5年、検討する時間はたっぷり

これまでの計画で、多目的交流センターの完成は2029年3月の予定だった。それが2年遅れるとすれば2031年3月になり、いまからなら、あと5年以上もある。

完成が遅れるのは残念だが、時間がたっぷりできたのであれば、ここは一つ、じっくり検討し直してはどうか。1万1000町民が「平等かつ公平に利用できる」施設にするためには、建設する場所の選定も含めて、新たな文化兼体育施設の整備はどのように進めるべきなのかと。

多目的交流センターの基本計画によると、センター内にはコンサートや演劇、スポーツなどができる「ホール兼アリーナ」、図書室、子育てを支援する「キッズルーム」などが整備される。そして、将来的に人口減少が続けば、このセンターが町内で唯一の文化兼体育施設になることは明らかである。

そんな時代が訪れたとき、みんなが笑顔で集える憩いの場にするためには、いまこそ全町民と町役場でしっかりと話し合うことが大切である。

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