屋久島町が主導した世界自然遺産地域ネットワーク、一つの成果もないまま発足10年で幕引き
荒木町長が呼びかけた「おとなのネットワーク」、活動は毎年恒例の会議や視察だけ
屋久島と白神山地の子ども交流プログラムは中断
大阪・関西万博に参加の「世界自然遺産5地域会議」に統合へ

日本国内にある世界自然遺産地域の市町村でつくる「世界自然遺産地域ネットワーク協議会」(会長・荒木耕治町長)が発足10年で活動を休止することが、町への取材でわかった。
同協議会は荒木町長の呼びかけで2016年に結成され、これまで各地域の持ち回りなどで計10回の会議を開催。だが、屋久島環境文化財団が中心となって2023年に発足した「世界自然遺産5地域会議」に統合されることになり、具体的な活動や成果を一つも残すことなく幕を閉じることになった。
東京や各地域に出張して会議と視察
同協議会は「世界自然遺産地域を有する自治体が共通の使命を認識し、自然資源の保護と活用の方策を確立する」ことを目的に、荒木町長が白神山地(青森県・秋田県)、知床(北海道)、小笠原諸島(東京都)の各市町村に呼びかけて2016年に発足した。その後、2021年に遺産登録された沖縄・奄美(沖縄県・鹿児島県)の各市町村も加わり、これまで東京や各地域の持ち回りで計10回の会議を開催。荒木町長をはじめとした各市町村の首長や担当職員が出張して集まり、具体的な活動計画について協議してきた。

これまでに開催された会議や視察は次のとおり。
2015年11月
世界自然遺産登録地域の自治体連携に向けた意見交換会
開催地:東京都
2016年6月
小笠原諸島登録5周年記念イベントで「世界自然遺産地域ネットワーク協議会」発足
開催地:東京都
2016年11月
第2回世界自然遺産地域ネットワーク協議会
開催地:東京都
2017年6月~7月
小笠原諸島視察
参加:鹿児島県屋久島町、秋田県藤里町
2017年11月
第3回世界自然遺産地域ネットワーク協議会
開催地:東京都
2018年10月
第4回世界自然遺産地域ネットワーク協議会
開催地:秋田県藤里町
2019年9月
第5回世界自然遺産地域ネットワーク協議会
開催地:北海道羅臼町
2020年・2021年
新型コロナウイルス感染拡大で中止
2022年11月
第6回世界自然遺産地域ネットワーク協議会
開催地:東京都
2023年11月
第7回世界自然遺産地域ネットワーク協議会
開催地:鹿児島県屋久島町
2025年1月
第8回世界自然遺産地域ネットワーク協議会
開催地:鹿児島県伊仙町
2025年8月
第9回世界自然遺産地域ネットワーク協議会
開催地:北海道斜里町
唯一の活動は森林環境税の提案・要望
このように発足準備も含め、これまでに計10回の会議が開かれてきたが、同協議会が具体的な活動計画を立案することはなかった。実際の活動としては、2018年5月に森林環境税に関する提案・要望書を林野庁と環境省に提出したのみで、実質的に毎年恒例の会議を開くことだけが同協議会の活動になっていた。
5地域会議、日本型自然保護のメッセージを発信
その一方、2023年に屋久島環境文化財団が中心となって「世界自然遺産5地域会議」が発足。5地域の市町村や公益財団法人などが協力し、活動の第一弾として2025年6月に大阪・関西万博で「千の自然・千の時間―私たちと世界自然遺産5地域」と題したイベントを開き、人と自然が調和した保護の重要性を訴えた。
また、万博が閉幕したのちの11月20日には5地域会議の第5回会合が開かれ、「共生」や「環境文化」といった日本型自然保護のメッセージを発信する事業などを継続することを確認。さらに、世界自然遺産地域ネットワーク協議会については、5地域会議と会員の多くが重なることから、一つに統合する方向で調整することが承認された。
これによって、荒木町長が主導した「世界自然遺産地域ネットワーク協議会」は具体的な活動や成果を一つも残さないまま、発足10年で姿を消すことになった。

荒木町長の提案で「こどもネットワーク」は中断
世界自然遺産地域の交流をめぐっては、2013年と2014年に屋久島と白神山地の子どもたちが相互に訪問し合う企画が実施され、両地域では「世界自然遺産こどもネットワーク」の発足に期待が高まっていた。だが、荒木町長が提案した「おとなのネットワーク」によって、子どもたちの交流プログラムに対する公的な予算がなくなり、活動が中断されたままになっている。

10年間の活動で一つの成果も挙げられなかったことについて、同協議会の事務局を務める屋久島町観光まちづくり課は取材に対し「一連の経緯について、何らかのかたちで町民に報告することを検討している」としている。
