屋久島ポスト、合理的な理由なき石田尾議長の取材拒否に反論
町、沖縄県議会取材拒否訴訟の判例を根拠に「記者クラブに限定した取材許可は肯定される」
屋久島ポスト反論、記者クラブ加盟だけを条件にした取材拒否は「憲法違反」
【議会取材の自由を守る訴訟】

屋久島町議会(石田尾茂樹議長)が市民メディア「屋久島ポスト」の議会取材を拒否したのは、「表現の自由」などを保障した憲法に違反しているとして、屋久島ポストが町を相手取って提起した「1円訴訟」――。
この訴訟で被告の町は、「議長には議会傍聴にかかる制限について広範な裁量が認められており、録音・撮影行為を県庁記者クラブのような新聞協会や民放連に限定する運用は肯定される」と主張し、その根拠として、福岡高裁那覇支部が「沖縄県議会取材拒否訴訟」で言い渡した2021年1月21日の判決を示していました。
これに対し屋久島ポストは2月12日にあった弁論準備手続きで、記者クラブ加盟だけを条件にした取材拒否に合理的な理由はなく、「法の下の平等」や「表現の自由」などを保障した憲法に違反すると反論しました。

町の主張に対し、屋久島ポストが反論した内容は次のとおりです。
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■沖縄県議会の取材不許可をめぐる訴訟
屋久島町は「議長には議会傍聴にかかる制限について広範な裁量が認められており、録音・撮影行為を県庁記者クラブのような新聞協会や民放連に限定する運用は肯定される」と主張し、その根拠として、福岡高裁那覇支部が言い渡した2021年1月21日の判決を示している。
しかしながら、判決を詳細に読み込むと、この訴訟を提起したドキュメンタリー映画製作会社「森の映画社」の取材を不許可とした沖縄県議会の判断は、単に同社が沖縄県庁記者クラブに加盟していなかったということが理由ではないことがわかる。
やや長くなるが、その理由が読み取れる部分を、同判決文から以下に引用する。
<控訴人は、ドキュメンタリー映画の製作会社であり、ニュース報道を目的とする新聞社、放送局などの典型的なマスメディアではない。撮影の目的もドキュメンタリー映画の製作に用いるというものであり、直ちに報道目的といえるか議論の余地があり、県議会における撮影許可の前例もないものであったが、本件許可申請に係る申請書には、控訴人のこれまでの活動状況が簡単に記載されているにすぎず、これらの情報のみから直ちに、当時の新里議長において、控訴人が会議に関わる事実を正確かつ公平に報道することのできる能力・資質を備えており、また前記2(2)で述べたような撮影による弊害が生じるおそれも乏しいなどと判断することは極めて困難であったものと推認される。
そして、本件許可申請がされたのが本件本会議の4日前であることからすれば、本会議開会期間中の新里議長において、自ら進んで控訴人についてさらなる調査を行うこと自体難しかったと推認されるし、仮に調査をしたとしても、控訴人が上記のような能力・資質を備えている報道機関であると判断することは困難な状況にあったというべきである。
また、本件許可申請の対象となっていた会議において審議、採決が予定されていた議案及び当該議案の採否については、報道機関や国民から全国的に関心が寄せられており、その背景として、辺野古新基地建設の是非を巡る激しい意見の対立があったのであるから、このような状況の下では、一般的に、傍聴人による不適切な撮影行為がされる可能性や、実際にそのような撮影行為がされた場合の弊害が大きいものとなる可能性は高いといえる。
加えて、上記のような状況で、県議会における前例がなく、報道機関といえるか議論の余地がある控訴人による撮影を許可した場合には、今後、同様の撮影許可が多数申請されるという事態も想定され、その結果、会議の秩序が乱されたり、ニュース報道を目的とする報道機関の撮影の機会が阻害されたりする可能性があると考えることも不合理とはいえない。
これらの事情を踏まえれば、新里議長において、本件許可申請について、例外的に撮影を許可すべき必要性があり、かつ、撮影によって弊害が生じる現実的危険性が乏しいとの判断に至らず、そのためにこれを不許可としたことが不合理であるとはいえず、本件不許可処分に係る判断が全く事実の基礎を欠き、又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるといえるものではない。
したがって、本件不許可処分は、新里議長において、その裁量権の範囲を超え、又はこれを濫用したものではなく、これが国賠法1条1項の適用上違法であるということはできない。>
上記の判決文を踏まえると、同社の取材が不許可となった主な理由は、次の6点となる。
(1)森の映画社はドキュメンタリー映画の製作会社であり、取材の目的が直ちに報道目的といえるか議論の余地があった。
(2)同社が会議に関わる事実を正確かつ公平に報道できる能力・資質があるか否かを判断するのが困難な状況であった。
(3)許可申請がされたのが本会議の4日前であり、本会議開会期間中の議長が自ら進んで同社について調査を行うことが難しかった。
(4)採決が予定されていた議案については、辺野古新基地建設の是非をめぐる激しい意見の対立があり、傍聴人による不適切な撮影行為がされる可能性や、その弊害が大きいものとなる可能性が高かった。
(5)上記のような状況で、報道機関といえるか議論の余地がある同社による撮影を許可した場合、今後、同様の撮影許可が多数申請されるという事態が想定された。
(6)上記の結果、会議の秩序が乱されたり、ニュース報道を目的とする報道機関の撮影の機会が阻害されたりする可能性があった。
上記の6点を踏まえると、沖縄県議会の議長が同社の撮影を不許可としたのは、単に同社が県庁記者クラブに加盟していないことが理由ではなく、同社に撮影を許可すべきか否かを検討する時間や余裕がなかったことが大きな要因であったことがわかる。また、辺野古新基地建設の是非をめぐる激しい意見の対立があるなかで、議会内で不測の事態が起きる可能性を危惧したことも大きな理由であった。
さらに町は、「ちなみに、上記福岡高裁那覇支部2021年1月21日判決は、議会記者クラブに所属しないドキュメンタリー映画の製作会社に対する本会議の撮影不許可処分に、憲法14条1項・同21条1項違反、裁量権の逸脱濫用の違法がないとされており、本件の解決についても参考になるものと思料される。」と主張する。
しかしながら、先述した6点のとおり、沖縄県議会が同社の撮影を不許可とした詳細かつ具体的な理由を踏まえれば、上記判例を本件にそのまま適用することは不適切であるといえる。すなわち、屋久島ポストの取材を不許可とした当時の屋久島町議会には、沖縄県議会と同じような事情は一つもなく、石田尾議長が取材を制限する合理的な理由はなかったということである。
そこで、その根拠について、沖縄県議会の事例に従ってまとめると、次のようになる。
(1)屋久島ポストは調査報道を主目的にした市民メディアであり、取材の目的が報道であることは明らかだった。
(2)屋久島ポストが会議に関わる事実を正確かつ公平に報道できる能力・資質があることは、武田共同代表の取材経験から明らかであった。それがゆえに、石田尾議長が2021年11月26日の全員協議会において、武田共同代表らの取材を「今回限りの特例」で許可したところ、屋久島ポストは会議に関わる事実を正確かつ公平に報道した。
(3)屋久島ポストは2021年11月26日の全員協議会で取材を許可されており、その11日後に開かれた同年12月7日の本会議において、屋久島ポストが会議に関わる事実を正確かつ公平に報道できることは明らかであった。
(4)屋久島ポストの取材が不許可とされた会議において、激しい意見の対立があった辺野古新基地建設のような問題や議題は一つもなく、傍聴人による不適切な撮影行為がされる可能性や、その弊害が大きいものとなる可能性は全くなかった。
(5)上記のような状況で、屋久島ポストの取材を許可しても、その後、同様の撮影許可が多数申請されるという事態は想定されていなかった。
(6)屋久島ポストの取材が許可されたとしても、会議の秩序が乱されたり、ニュース報道を目的とする報道機関の撮影の機会が阻害されたりする可能性は全くなかった。
■屋久島ポストに対する取材拒否の不合理
沖縄県議会の取材をめぐる訴訟の判例を踏まえると、屋久島ポストの取材を不許可とした石田尾議長には、同県議会の議長と同じような理由や事情はなかったといえる。そして、屋久島ポストの取材を不許可とした理由として、町がただ一つだけ挙げているのは、屋久島ポストが鹿児島県庁記者クラブに加盟していないということである。
これまで再三にわたって主張してきたが、屋久島ポストが県庁記者クラブに加盟していないことだけをもって、議会取材を不許可にすることは極めて不合理である。沖縄県議会の取材をめぐる訴訟の判例からもわかるように、取材を不許可とするのであれば、どのような不都合や支障が予見されるのかを具体的に示す必要がある。
よって、屋久島ポストとしては、武田共同代表らの議会取材を不許可とした石田尾議長の判断は極めて不合理であり、「法の下の平等」や「表現の自由」「取材の自由」などを保障した憲法に反するものであると主張する。そして、もし今後も町が同様の主張を続けるのであれば、屋久島ポストが議会取材をすることによって、どのような不都合や支障があるのかについて、沖縄県議会のように具体的に示すことを求める。
※「屋久島ポスト」は訴訟の当事者であるため、この【議会取材の自由を守る訴訟】については、記事の文体を「です、ます調」にしたうえで、主観を入れた体験取材記の体裁にしています。
