【視点】「痛ましい」職員の過重労働死、早急に第三者委員会で調査検証すべき

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死亡事故から6年半、町は「過重労働はなかったとの認識」のまま

地方公務員災害補償基金、町の労務管理体制の杜撰さを指摘

荒木町長が初言及「痛ましい事故で、二度と起こってほしくない」

屋久島町営牧場 過重労働死問題

【上左】屋久島町営牧場で公務中に亡くなった田代健さん=遺族提供【上右】職員が過重労働で死亡した町営長峰牧場の衛星写真=Google Earthより【下】屋久島町役場=屋久島ポスト撮影

「痛ましい事故で、二度と起こってほしくない」

2019年8月に屋久島町営牧場で町職員だった田代健さん(当時49)が過重労働で死亡した事故について、荒木耕治町長は3月10日の記者会見で、初めて自身の認識を明らかにした。事故が起こってから約6年半。町幹部は「過重労働はなかったとの認識」と主張し続け、この問題が町議会で取り上げられても、荒木町長が発言することは一度もなかった。

公務災害の認定後も議会で報告なし

田代さんの死亡事故については2023年2月、地方公務員災害補償基金の鹿児島県支部(支部長・塩田康一知事)が民間の労働災害にあたる公務災害と認定。過重労働によって心筋梗塞を発症して死亡したという判断を下した。そして、同支部は「時間外勤務時間を含めた業務配分を現場の職員に任せ、そもそも業務命令権者として主体的に勤務時間を管理する体制になっていなかった」などと、町の労務管理体制の杜撰さを指摘した。

それにもかかわらず岩川茂隆・総務課長(現副町長)ら町幹部は、田代さんの公務災害について町議会で報告することはなかった。荒木町長も行政報告などで言及する機会は何度もあったが、公務災害の認定はおろか、田代さんが死亡した事実さえも、自ら語ることは一切なかった。

つまり、屋久島町役場としては、田代さんの死亡事故はあくまでも個人的な問題であり、行政機関として説明や報告をする必要はないと判断したということである。

屋久島町営牧場の過重労働死訴訟について、記者会見で話す荒木耕治町長=2026年3月10日、屋久島町役場、屋久島ポスト撮影

荒木町長、和解案を拒否も訴訟は劣勢

それなのに、なぜ荒木町長は記者会見で「町としては、コメントする立場にない」と言わなかったのか。

おそらくだが、田代さんの遺族が提起した損害賠償請求訴訟で、「町の形勢が悪い」と判断したからだろう。鹿児島地裁は2025年11月、町が遺族に解決金4000万円を支払う和解案を示したが、荒木町長は受け入れを拒否。判決による解決を求めたものの、地裁が示した和解案の内容を踏まえれば、町が敗訴する可能性が高いことは明らかである。

荒木町長は記者会見で、記者から「事故の調査と検証をして、再発防止策を講じる必要がある」と指摘されると、こんな発言もした。

「全然やってないことはないが、今は係争中なので、回答は控えさせていただきたい」

この回答を踏まえると、すでに町役場のなかで何らの調査や検証をしているということである。それなら、どうして町議会などで報告しないのか。「痛ましい事故」が「二度と起こってほしくない」のであれば、少しでも早く調査と検証の結果を公表して、再発防止策を講じる必要があるのではないか。

裁判とは関係なく「痛ましい事故」の再発防止策を

和解案を拒否した理由を問われ、荒木町長はこうも言った。

「この辺でいいのではないか。まだ裁判中なので。私には私の考えもあってやっている」

だが、裁判とは関係なく、町では大勢の職員が働き続けている。地方公務員災害補償基金が指摘したとおり、町の労務管理体制には大きな問題があり、このままの状態を放置すれば、また再び「痛ましい事故」が起きる危険性がある。

屋久島町のために働いた職員の尊い命が失われたのである。係争中であるかどうかは関係ない。町は早急に第三者委員会をつくり、事故の調査と検証をしたうえで、二度と痛ましい事故が起きないための対策を取るべきだ。

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