【視点】全国の善意を裏切る「JTBパブリッシング」の海底清掃事業

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寄付金1700万円、海底清掃事業なのに大半は観光広報事業に支出

実際に回収したごみの総量は未報告

事業費の見積書は真っ黒で非開示

住民訴訟への情報提供は拒否

【手前】海底清掃事業を請け負ったJTBパブリッシングが入るJTBグループのロゴ(左)と屋久島町ふるさと納税のロゴ【背景】屋久島町役場

屋久島町の海底清掃事業を請け負ったJTBパブリッシング(本社・東京都江東区)は、この事業が全国から集まった寄付金1700万円で実施されたという自覚を持っているのだろうか?

この事業の取材を始めてから2年半が過ぎ、その疑念は深まるばかりだ。

事業費1700万円で海底清掃は計2時間のみ

まず問題なのは、海底清掃で集めたごみの総量を明らかにしていないことである。

JTBパブリッシングは2022年秋に計2回にわたって海底清掃を行ったのだが、その合計時間はわずか2時間だった。そして、町に提出した実施報告書には、実際に回収したごみの総量を示すことなく、「40分ほどでプラスチック片やペットボトルを多く回収」「漁具(釣り糸)も多かった」などと記載しただけだった。

そのため、屋久島ポストはJTBパブリッシングに取材を申し込み、この事業で回収したごみの総量を尋ねてみた。だが、同社のブランド戦略室は「業務の一部を委託したオーシャナが適正に処理しており、重量や回収総量についても同社が管理しております」と答えて、具体的な数量を明らかにしなかった。

海底清掃業務を再委託したのはわかるが、この事業を町から請け負ったのはJTBパブリッシングであり、再委託先に尋ねれば、回収した総量はすぐにわかるはずだ。それにもかかわらず、実施報告書も含めて、実際に集めたごみの総量を報告しないのは、寄付金を原資にした公共事業としては、全くもってあり得ない話である。

2022年度から始まった海底清掃事業で、海底のごみを回収するダイバーたち=屋久島町YouTubeチャンネルの動画「海・山・川の繋がりで豊かな屋久島の自然を守るプロジェクト」より

寄付金による公共事業なのに支出内訳は「営業秘密」で黒塗り

事業費の見積書を黒塗りにして隠した対応も、寄付者の善意を顧みないものだった。

屋久島ポストは2023年10月、この事業に関する記録文書を町から開示された。そのなかには、事業費1700万円がどう使われたのかを示す見積書が含まれていたのだが、なんと詳細な内訳が真っ黒に塗られて、寄付金を何にどう支出したのが全くわからないのだ。

それを受けて屋久島ポストは、「のり弁当」のように黒い見積書を示して、担当の町観光まちづくり課に訴えた。

「全国からの寄付金が適切に使われたかどうかを確認するためには、見積書の内訳に記載された情報は必要不可欠だ」

ところが、同課の職員から返ってきたのは、耳を疑うような答えだった。

「営業秘密なので開示できない」

詳しく聴くと、JTBパブリッシングからの要請で、黒塗りで非開示にする判断をしたというのだ。だが、寄付金をどう使ったのかを聴かれれば、詳細に説明するのは当然の義務である。それは町だけでなく、公共事業を請け負ったJTBパブリッシングも同じだ。

屋久島ポストの抗議で、最終的にJTBパブリッシングは見積書の全面開示に応じた。しかし、もし強く開示を求めなければ、見積書は黒塗りのままだった。そう思うと、「何かやましいことを隠したかったのではないか?」と疑わざるを得ない。

屋久島町が開示した海底清掃事業の見積書。JTBパブリッシングが「営業秘密」を理由に非開示を要請し、支出内訳は全面黒塗りになった

交通宿泊実費「係争中につき、回答を控える」

そして極めつけは、海底清掃事業をめぐる住民訴訟で、JTBパブリッシングが審理に必要な情報の提供を拒否していることだ。

この訴訟で町は、見積書で実費精算すると書かれていた交通宿泊費などの金額について、証拠として提出するように求められた。ところが町は、鹿児島地裁に次のように説明して、実費額を開示しなかった。

「JTBパブリッシングに(実費額を)開示してほしいと求めたが、拒否されたためにわからない」

裁判で必要な情報の開示を求められている町としては、信じられない回答である。さらには、寄付金の使い方を問われているのに、公共事業を請け負ったJTBパブリッシングが拒否するとは何ごとか。

これについても、屋久島ポストはJTBパブリッシングに取材を申し入れ、実費額の開示を拒否した理由を尋ねてみた。だが、返ってきたのは、不都合な取材を受けたときに使われる常套句だった。

「係争中の案件につき、回答を控えさせていただきます」

鹿児島地方裁判所=屋久島ポスト撮影

町、競争入札なく優先的に特命随意契約

そもそもだが、この事業が係争案件になったのは、JTBパブリッシングが海底清掃事業の成果を明確に報告しなかったからだ。

実際に回収したごみの総量を示さず、見積書の内訳は真っ黒に塗って隠す。清掃活動で海底に潜ったのは計2時間だけ。寄付金1700万円の大半は、屋久島の魅力を紹介する観光ガイド冊子と動画の制作費に支出。

さらには、海底清掃が主目的の事業なのに、JTBパブリッシングには海底清掃事業を請け負った実績が一度もない。それにもかかわらず、町は複数の業者が参加した競争入札を実施することなく、優先的に同社と特命随意契約を結んだ。

屋久島町の委託でJTBパブリッシングが制作した観光ガイド冊子のグルメ情報ページ

コロナ禍なのに観光ガイド冊子や動画を制作

そして2022年を振り返ると、当時は新型コロナウイルスの感染拡大で、日本国内はおろか、全世界は観光を楽しんでいる状況ではなかった。特にJTBパブリッシングが事業企画を提案した2021年度末はコロナ禍の真っただ中であり、屋久島の魅力を紹介する観光ガイド冊子や動画を制作する社会的なニーズは全くなかった時期である。

この事業で使われたのは「ふるさと納税」の寄付金で、なかでも寄付者が「屋久島の自然を守ってほしい」として、使途を環境保全に指定した浄財だった。

社会的に求められていない観光広報事業を実施するために、環境保全事業のために託された寄付金を使ったとすれば、それは全国の寄付者の善意を裏切る行為だと言わざるを得ない。その点を踏まえ、屋久島町とJTBパブリッシングには、今後の住民訴訟で真摯な対応を期待したい。

■屋久島町海底清掃事業へのご意見
屋久島町がふるさと納税の寄付金1700万円を活用して実施した海底清掃事業では、事業費の大半が海底清掃ではなく、観光広報事業に使われました。この寄付金は「屋久島の自然を守ってほしい」と使途が環境保全事業に指定されたものであり、事業費の使い方が不適切だとして、いま住民訴訟が提起されています。この事業について、以下URLから読者の皆さまからご意見をお待ちしています。https://forms.gle/Jqm3PZbwHEc2Epji6

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