最終弁論「屋久島町はJTBパブリッシングの『言い値』で海底清掃事業を実施した」

y@kushima-post-administrator@

原告町議、ふるさと納税の寄付金1700万円支出の違法性を主張

予定価格の未設定 合理的な理由がない特命随意契約……

住民訴訟が結審、判決は9月15日

【左】屋久島町議会で、海底清掃事業について一般質問する渡辺千護町議=2024年3月11日、同町議会YouTubeチャンネルより【中】JTBパブリッシングが制作した観光ガイド冊子「るるぶ特別編集 屋久島」【右】渡辺町議の質問に答弁する荒木耕治町長=2024年3月11日、同町議会YouTubeチャンネルより

屋久島町が2022年度に実施した海底清掃事業をめぐる住民訴訟が6月23日、すべての審理を終えて結審した。

事業費1700万円で海底清掃2時間のみ

この事業は、ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用した環境保全事業で、本来であれば事業の主眼は海底清掃であった。ところが、いざ事業が終わってみると、1700万円の大半が屋久島の観光情報を紹介するガイド冊子と動画の制作費に使われていたことが判明。一方、実際に海に潜って清掃したのは2時間のみで、海底から回収したごみの総量が報告されることもなかった。

JTBパブリッシング、競争入札ないまま優先的に契約

町から業務を委託されたのは旅行大手JTBの出版部門を担うグループ会社「JTBパブリッシング」(本社・東京都江東区)で、この事業を請け負うまで海底清掃事業を手掛けた実績は一度もなかった。それにもかかわらず、町は複数の業者が参加した競争入札を実施することなく、優先的に同社と特命随意契約を結んだ。

屋久島町の委託でJTBパブリッシングが制作した観光ガイド冊子のグルメ情報ページ

荒木町長ら幹部3人に1700万円の賠償責任を主張

「これは海底清掃をすると見せかけた偽りの環境保全事業で、実際にはJTBパブリッシングが得意とする観光広報事業だったのではないか?」

そう疑った屋久島町議会の渡辺千護町議は2024年6月、この事業への公費支出の違法性を問う住民訴訟を提起。町に対して、事業費1700万円を荒木耕治町長、日高豊副町長(当時)、泊光秀・観光まちづくり課長(同)の3人に賠償請求するように求めた。

提訴から2年。10回目となった口頭弁論で、渡辺町議は次のような主張して最終弁論を結んだ。判決は9月15日に鹿児島地裁で言い渡される。

鹿児島地方裁判所=屋久島ポスト撮影

1 予定価格の未設定

屋久島町は2022年年3月に開かれた町議会3月定例会に海底清掃事業の予算案を提案する際に、法的に設定することが定められた予定価格(予算の上限額)を作成しないまま、総事業費として約1700万円の予算額を決めた。また、その予算額を決めるにあたって町は、この事業を企画提案したJTBパブリッシング1社のみが提出した見積書を参考にして、一般社会の相場に照らして適正な価格か否かを精査しなかった。

その結果、事業の業務委託費のうち観光ガイド冊子と動画の制作費については、過去に町が実施した同様の事業に比べて、冊子は約10倍、動画は約102万円も、それぞれ高額になった。また、海底清掃の業務委託費についても、同様の事業を手掛ける団体や業者と比較することは一切なかった。

この経緯を踏まえれば、町は法的に定められた予定価格の設定を怠り、JTBパブリッシングが提示した「言い値」のまま事業費を支出したと言える。

よって、この事業への公費支出は、予定価格の設定を義務付けた屋久島町契約規則第26条(地方自治法第234条を前提)に違反していることは明らかである。さらに加えて、公費の支出を必要最小限に抑えることを定めた地方財政法第4条にも違反していることから、この事業への公費支出は、その全額が違法な支出であったと主張する。

鹿児島地方裁判所の法廷(左)と外観=裁判所ウェブサイトより

2 合理的な理由のない違法な特命随意契約

この事業は海底清掃を主目的とする環境保全事業であったところ、町が業務を委託したJTBパブリッシングには海底清掃事業を手掛けた実績は全くなかった。それにもかかわらず、町は競合他社が参加する一般競争入札を実施することなく、優先的に同社と特命随意契約を結んだ。

この経緯を踏まえて、町に対して「海底清掃事業を委託した合理的な理由を、具体的に主張立証すべきである」と主張した。しかしながら、町は「JTBパブリッシング自体が海底清掃作業などは行わないが、これまでの実績及び経験から、海底清掃作業に適した外部専門家と繋がりがあり、彼らと共同して海底清掃作業及びその撮影が可能であった」などと述べるだけであった。そして、同社が業務を再委託したダイビング業者「オーシャナ」にも、海底清掃事業を手掛けた実績は一度もなかったことから、町がこの事業を特命随意契約で同社に委託する合理的な理由がなかったことは明らかである。

なお、JTBパブリッシングは主に旅行情報誌の発行を専門とする出版社であり、この事業に含まれる観光ガイド冊子と動画の制作は得意分野であったと言える。しかしながら、観光ガイド冊子と動画を制作する観光広報事業が得意な広告代理店や出版社は全国に多数あり、同社だけが優先的に特命随意契約を結ぶ理由には、到底なり得ないことは言うまでもない。

よってJTBパブリッシングには、この事業を優先的に請け負える合理的な理由はなく、町が同社と結んだ特命随意契約は地方自治法施行令第167条の2第2号に違反していることは明らかである。

3 寄付金の目的外利用

この事業に支出された「ふるさと納税」の寄付金は、寄付者が使途を「環境保全事業」に指定したものであった。しかしながら、この事業では事業費の大半が観光ガイド冊子と動画の制作に使われていることから、実質的には「観光広報事業」であったと言える。

よって、この事業への寄付金の支出は目的外利用であり、屋久島町だいすき寄付条例を前提とした民法第1条2項「信義則」に違反する支出であったことは明らかである。

4 実費の未精算

町はJTBパブリッシングに事業の業務委託費である1698万9918円を支払う際に、「ゴミ回収廃棄費」と「交通宿泊費」について実費精算することを怠った。業務委託契約を結ぶ際に根拠となった見積書には、両費用について「※下記は、終了後実費精算」と記載されていることから、実費精算を怠った行為は契約に反するものである。

よって、事業費を支出する際に実費精算を怠った町の行為は、公費の支出を必要最小限に抑えることを定めた地方財政法第4条に違反していることは明らかである。

■屋久島町政への提言や意見
屋久島町政について、読者からのご提言やご意見をお待ちしています。以下URLのフォームから投稿をお願いいたします。
https://forms.gle/4jwVGJ144BYUYESYA

関連記事
これらの記事も読まれています
記事URLをコピーしました