【展望】職員の尊い命に寄り添えない屋久島町議会

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町議会、町民代表の立場を忘れ 町を追及せず  地裁、町の責任を認める和解案を提示

職員の尊厳を守る南城市議会とは大違い

屋久島町営牧場 過重労働死訴訟

【左】屋久島町営牧場で公務中に亡くなった田代健さん=遺族提供【右】屋久島町議会=屋久島ポスト撮影

屋久島町営牧場で町職員の田代健さん(当時49)が公務中に亡くなった公務災害をめぐる損害賠償請求訴訟が、事故発生から6年3カ月の歳月を経て大詰めを迎えている。

原告の遺族は、田代さんの死因は過重労働による心筋梗塞で、その責任は労働時間の管理を怠った町にあると主張。これに対し被告の町は、田代さんに長時間の勤務を命じたことはなく、町としては過重労働があったという認識はないと反論した。

そして、鹿児島地裁は11月10日、町が遺族に解決金4000万円を支払う和解案を提示した。労働時間の管理を怠った町の責任を認める内容で、地裁が起案した書面には、町の管理責任を問う文言が盛り込まれている(※は屋久島ポストが挿入)。


地裁「安全管理が十分でなかった」

<被告は、原告らに対し(※中略)、労働時間の管理を中心として、その心身に対する安全管理が十分でなかったことを認め、改めて亡健(※田代健さん)の冥福をお祈り申し上げるとともに、原告らに対して心からのお見舞いを申し上げる。>

<被告は、今後も、本件と同様の事態が発生するのを防止するため、職員の業務遂行に伴う疲労等が過度に蓄積して職員の心身の健康を損なうことがないよう、引き続き勤務時間や勤務実態をなお一層適正に把握するなどして、健康状態の適正な管理に努める。>

遺族が提訴してから約2年。やっと地裁に町の責任を認めてもらえた。

屋久島町営牧場の過重労働死訴訟が審理されている鹿児島地裁=屋久島ポスト撮影

町議会は町長らに寄り添い、遺族は「孤立無援」の闘い

だが、田代さんが亡くなってから6年余りの道のりは、遺族にとっては「孤立無援」の闘いだった。ほんの一部の町議や町民が町との交渉や訴訟で支援したが、「過重労働はなかった」と強弁する町を追及する声は大きくならなかった。

なかでも、特にひどかったのは屋久島町議会(石田尾茂樹議長)で、その最たる責任は町議会にある。

2023年2月、地方公務員災害補償基金の鹿児島県支部(支部長・塩田康一知事)が田代さんの死亡を過重労働による公務災害と認定したあとも、町議会がこの問題を取り上げることはなかった。一部の町議が議場で町幹部を問いただすことはあったが、大半の町議は何も聞こえていないかのように、じっと沈黙を続けた。

町議会とは町民の代表が集う場であり、本来であれば、無念にも家族を亡くした遺族の声を町に届ける立場だ。だが、大半の議員が口をつぐんで寄り添ったのは、荒木耕治町長をはじめとする屋久島町の幹部だった。

屋久島町営牧場・過重労働死訴訟の記者会見には、報道各社の記者やカメラマンが大勢集まった(2023年10月19日、鹿児島県庁記者クラブ)

南城市議会、不信任決議でセクハラ市長を失職に

この公務災害とはケースは違うが、市長のセクハラ問題を追及する沖縄県の南城市議会は、被害を受けた市職員に寄り添った議会活動を続けている。11月17日には古謝景春市長に対して、5度目の不信任決議案を可決。前回の不信任決議で市議会を解散した古謝市長を、改選後の初議会で失職に追い込んだ。

南城市議会の決議文に目を通すと、そこには市民の命と暮らしを守るという、議会としての信念が綴られている(※は屋久島ポストが挿入)。

「被害者救済は一刻の猶予も許されない」

<これ以上、制御不能な市長の〝公権力の暴走〟によって、市民が傷つけられることがあっては、決してならない。被害者救済は一刻の猶予も許されない。議会の行政監視権能が揺るがされることがあってはならない。>

「すべての市民の人権を守る」

<われわれ議会は、日本国憲法が保障する基本的人権の尊重に則り、すべての市民の人権を守るため、そして(※中略)、一縷でも市民の希望と成り得るよう、〝公人失格〟の市長の即刻退陣を求め、地方自治法第178条の規定により市長不信任を決議する。>

 被害に遭った市職員、そして市民の尊厳を守るという決意にあふれた決議文である。

 これに対し、屋久島町議会はどうか。町職員の尊い命が公務で失われても、何事もなかったかのように、死亡事故から6年以上にわたって沈黙を続けている。

沖縄タイムスが配信している「南城市長セクハラ・パワハラ問題」の記事一覧のウェブサイト画面

町議会は1万1000町民のために存在しているのか?

鹿児島地裁が示した和解案について、町が応じるかどうかは、まだ決まっていない。和解の席に着かずに一審判決を受けたのち、高裁、最高裁と争い続けることもできるが、いずれ訴訟は決着する。

そのとき、町議会はどのように動くのか。

これまでどおり、じっと沈黙を続けるのか。それとも、亡くなった田代さんとその遺族に寄り添い、二度と同じ犠牲者を出さないために対策を講じるよう、町に求めていくのか。

さらには、町議会は荒木町長ら町幹部のために存在するのか。それとも、1万1000町民のためにあるのか。

この訴訟が終わるとき、これらの疑問が解かれて、屋久島町議会の「本性」が明らかになるだろう。

沖縄県南城市議会の議場=同議会ウェブサイトより

古謝景春南城市長の不信任を求める決議

二元代表制に基づき市政の一翼を担う議会として、このような長きにわたり事態を収束できなかったことに対し、まずは、被害者のみなさま、市民のみなさまへ心よりお詫びを申し上げる。

市長によるセクハラ疑惑発覚からおよそ2年、市長は自らが設置した第三者委員会によるすべてのセクハラ認定と辞職提言にも向き合うどころか、誹謗中傷や脅迫など被害者やその周辺に対する二次加害を重ねている。

10月6日には、自らの不祥事で可決された不信任決議に対し、保身のための暴挙ともいえる〝大義なき議会解散〟を強行した。その結果、一部支援者を巻き込んだ悪質極まりない被害者への二次加害、市民の分断が今なお加速する一方である。

この間、副市長をはじめとする市執行部も被害者を置き去りにし続けた。新たな市民本位の市役所を創造しなければならない。何より、先の市議会議員選挙にみる過去最低の投票率は、市政や議会に対する市民のみなさまの怒りと落胆、疲弊のあらわれであり、政治不信、市民の分断を広めてしまう形となってしまったことを議会も深く反省し、本来の議会力再生に努めていくものである。

これ以上、制御不能な市長の〝公権力の暴走〟によって、市民が傷つけられることがあっては、決してならない。被害者救済は一刻の猶予も許されない。議会の行政監視権能が揺るがされることがあってはならない。

われわれ議会は、日本国憲法が保障する基本的人権の尊重に則り、すべての市民の人権を守るため、そして、来年はたちを迎えるハートのまち南城市の市政の品格を保ち、一縷でも市民の希望と成り得るよう、​〝公人失格〟の市長の即刻退陣を求め、地方自治法第178条の規定により市長不信任を決議する。

2025年(令和7年)11月17日
沖縄県南城市議会

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