屋久島町は職員の死にどう向き合ってきたのか

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過重労働死から6年4カ月、管理責任を完全否定した町に解決金4000万円を提示

町営牧場 過重労働死訴訟

地方公務員災害補償基金が2023年2月14日付で出した公務災害認定通知書

屋久島町営牧場で町職員の田代健さん(当時49)が公務中に亡くなった公務災害をめぐる損害賠償請求訴訟で、被告の町は11月25日、鹿児島地裁が示した和解案を受け入れるかどうかの判断を明らかにする。和解案は、町が遺族に解決金4000万円を支払うもので、労働時間の管理を怠った町の責任を認める内容だ。

2019年8月に田代さんが亡くなってから約6年4カ月。この間、屋久島町が田代さんの死に対してどう向き合ってきたのか、以下に時系列で振り返る。

2019(H31/R1)年

4月1日

時間外勤務あっても固定給

田代健さんが屋久島町と雇用契約(非正規職員)を結び、町営長峰牧場の業務を担当する。牧場には約100頭の牛がいて、同僚職員と2人体制で作業に従事した。雇用条件は次のとおり。

賃金:月額23万9000円。6月・12月の賞与分と通勤費は月額に含まれ、支給しない。また、退職金は支給しない。

勤務:1週間の勤務時間は基本40時間。時間外勤務の賃金に関する規定はなし。

4月半ばごろ

勤務記録「週40時間」に収まるように指示

町営牧場を所管する産業振興課の係長が、牧場業務の記録について「週40時間」に収まるように指示。実際は相当時間の時間外労働が発生していたが、町に提出する勤務記録には、「週40時間」以内になるように記載することになった。

4月下旬ごろ

担当課長、増員要請に「予算がない」

同僚職員が町営牧場を所管する産業振興課の課長を訪ね、「仕事がきついので、職員を増やしてほしい」と要請。これに対し、課長は「予算がなくて、すぐには無理だが、考えておく」と回答した(その後は何も対応がなされず)。

広大な屋久島町営長峰牧場の衛星写真=グーグルアースより

8月2日

同僚の病気で1人勤務に

同僚職員が急性肝炎で8月5日まで休業となり、1人勤務体制となる。

8月5日

1人勤務後に体調不良に

午後1時ごろに体調不良で早退。屋久島徳洲会病院を受診したところ、急性胃腸炎との診断を受けた。

8月6~7日

急性胃腸炎で休暇を取得。

8月8日

水源管理の作業中に死亡

午後から1人勤務。牧場の水源を管理する作業に向かったまま連絡が取れなくなる。同日夜、水源で倒れているところを発見。その後、屋久島徳洲会病院に搬送され、死亡が確認された。

8月11日

町が遺族に対し、公務災害の申請手続きに入ることを説明。

9月13日

町が地公務員災害補償基金の鹿児島県支部に公務災害の申請書一式を提出。

11月29日

勤務時間が短く「公務災害ではない」

同基金支部が公務災害の申請内容に対し、勤務時間が短いために常勤的非常勤職員に該当せず、公務災害の対象にならないとの見解を示した。

地方公務員災害補償基金のウェブサイト画面

2020(R2)年

2月17日

同基金支部が公務災害の申請について、常勤的非常勤職員に該当しないため、公務災害の対象にならないと判断。これを受け、町は遺族に対して、鹿児島労働基準監督署に労働災害の申請を検討する旨を伝えた。

5月19日

労災申請に関する連絡がなかったため、遺族が町に確認をすると、申請手続きが何もなされていなかったことが判明。

6月10日

遺族が鹿児島労基署を訪問し、労災申請について相談したところ、担当者は「労災ではなく公務災害の対象」との見解を示した。これを受け翌6月11日、遺族が念のために労災申請の書類一式を提出。

2021(R3)年

3月4日

労基署、労災ではなく公務災害の対象と判断

鹿児島労基署から遺族に通知書が送付され、地方公務員災害補償法における常勤的非常勤職員に該当するため、労災ではなく公務災害の対象だとの判断が示される。

屋久島町役場=屋久島ポスト撮影

3月19日

担当課長と総務課長、公務災害の申請を拒否

鹿児島労基署の判断結果を踏まえて、遺族が産業振興課の課長らと面談し、公務災害の認定請求の手続きを進めることを要請。これに対し課長は、同基金支部が公務災害に該当しないと判断していることを理由に、公務災害の申請を拒否した。

3月25日

遺族が総務課及び産業振興課の両課長らと面談し、再度公務災害への申請を求めたが、両課長は申請を拒否した。

4月26日

町、一転して公務災害に申請

産業振興課の課長らが遺族を訪ね、それまでの方針を一転させて、公務災害に申請する旨を伝えた。その理由は、町の法律顧問が「遺族の求めに応じて公務災害に申請をするべき」と判断したためとされた。

5月19日

町が同基金支部に公務災害を申請。町営牧場で一緒に勤務していた同僚職員の陳述書や記憶に基づく勤務記録を添付した。

2023(R5)年

2月14日

過重労働による公務災害と認定

同基金支部が公務災害を認定。死因は過重労働によって発症した心筋梗塞とされた。認定された主な勤務状況は次のとおり。

・死亡前1カ月間の時間外勤務は約81時間

・死亡3日前までの連続勤務が約50日

・死亡前の半年間で取得した休暇は5日

3月7日

町幹部、公務災害について公表せず

町議会3月定例会で、総務課の岩川茂隆課長(現・副町長)が公務災害の認定について、「その原因が(地方公務員災害補償基金から)詳細に示されていない」として、町からは公表しないことを報告。また、荒木耕治町長は「諸般の報告」や「行政報告」のなかで、公務災害について何も言及しなかった。

10月19日

遺族、町に損害賠償請求訴訟を提起

遺族が屋久島町(荒木耕治町長)を相手取り、約7000万円の損害賠償を求めて鹿児島地裁に提訴。

2024(R6)年

1月15日

町、過重労働を否定し全面的に争う姿勢

第1回目口頭弁論で町は、過重労働の実態があったとは認められず、職員の死亡は「予見することは不可能であった」と主張。遺族の訴えに対し全面的に争う姿勢を示し、請求の棄却を求める。

屋久島町営牧場・過重労働死訴訟の記者会見には、報道各社の記者やカメラマンが大勢集まった=2023年10月19日、鹿児島県庁記者クラブ

2025(R7)年

11月7日

地裁、町の管理責任を認める和解案を提示

鹿児島地裁が和解案を提示。労働時間の管理を怠った町の責任を認める内容で、町が遺族に支払う解決金は4000万円。

11月25日

鹿児島地裁の和解案に対し、町と遺族の双方が受けいれるか否かを回答へ。

屋久島町営牧場の過重労働死訴訟が審理されている鹿児島地裁=屋久島ポスト撮影

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