【視点】補助金不正、司法判断に反して工事業者を提訴する屋久島町の危うさ
住民訴訟判決、補助金1700万円の返還理由は町の虚偽報告と認定
町、工期内に工事が終えられなかった業者の責任と強弁
勝手に公印を使った職員3人の処分もなし
それでも業者に1330万円の賠償求めて提訴

2022年3月、水道工事の国庫補助金の不正請求をめぐり、屋久島町が国に補助金1700万円を返還するに至った法的責任は、いったい誰にあるのか?
町の主張に耳を傾けると、工期内に工事を終えられなかった業者の責任だという。そして2月24日、賠償請求に応じていない業者に対し、町は1330万円の損害賠償を求める訴訟を鹿児島地裁に提起した。
提訴した理由について、荒木耕治町長は3月10日の記者会見で「工事請負業者の債務不履行に基づく損害と判断し、支払いを請求する旨の提訴をした」と説明。屋久島ポストが「業者が約束を破って、本来であれば終わるはずの工事が終わらなかったということか?」と確認すると、荒木町長は「そういうことだ」と認めた。

司法判断、町長らは「職員が違法行為を行わないよう監督指導すべき義務を負っていた」
ところが、この国庫補助金の返還をめぐる住民訴訟では、町の主張とは、全く逆の司法判断が示されている。
2023年9月6日に鹿児島地裁であった判決で、坂庭正将裁判長は補助金の返還に至った理由について、「町が本件事業を完了していなかったにもかかわらず、これを完了したとする事実と異なる本件報告書を提出したこと」としたうえで、これによって補助金適正化法に違反したと認めた。さらには、荒木町長ら町幹部の責任について、次のような趣旨の指摘をした。
「町職員が違法行為を行わないよう監督指導すべき義務を負っていた」
「虚偽報告や工事について、調査等をするよう指示を行わなかった」
「虚偽報告をした職員の説明をたやすく信用すべきではなかった」
鹿児島地裁の判決内容を踏まえると、補助金1700万円を国に返還するに至った法的責任は、荒木町長ら町幹部にあるということになる。

町、判決内容を町議会などに公表せず
そうであるならば、なぜ町は司法判断に反して、「工事が遅れた業者の責任だ」と強弁できるのか?
それは、詳細な判決内容を町議会や町民に公表していないからだ。この住民訴訟は最高裁まで争われ、町の主張は完全に退けられている。だが、判決内容が広く知られていないのをいいことに、町は司法判断を無視した独自の主張を続けているのである。
不正行為の職員、判決確定から1年経っても処分されず
この住民訴訟では、水道工事を担当した職員3人の不正行為も明らかになっている。
町が提出した答弁書などによると、職員らは国に実績報告書を出す際に、町の公印を勝手に押して、町長や副町長、担当課長らの決裁を受けることなく、独断で提出したというのだ。だが町は、この職員らの不正行為について、住民訴訟が終わったのちも町議会や町民に報告していない。さらには、判決が確定してから1年が経った今現在でも、職員に対する処分も決めていないのだ。

予算の繰り越しで補助金返還は避けられた
このような状況のなかで、屋久島町は業者を相手に訴訟したことになるが、本当に大丈夫なのかと心配になってくる。
もちろん、工事が遅くなった業者にも一定の責任はある。だが、そもそものところ、国に実績報告を出した2021年3月の段階で、正直に工事が未完成であることを伝え、翌年度に予算の繰り越し手続きをしていれば、1700万円を返還する事態は避けられたはずだ。
そうなると、町に賠償を求める権利があるかどうかも怪しくなってくる。
まずは、近く始まる訴訟を見守るしかないが、住民訴訟の判決内容を踏まえると、この訴訟は無謀に思えてならない。
