屋久島町長、10年前にそっぽを向いた「世界自然遺産こどもネットワーク」と同じ構想で「人間教育」を提案
荒木町長、子どもより大人を優先した協議会を結成
屋久島が失った「世界自然遺産5地域の子ども交流」の好機
電通ではなく屋久島独自の計画を期待

日本の子どもたちに国内にある世界自然遺産5地域を訪ねてもらい、五感で体験するような人間教育をしたい――。
屋久島町の荒木耕治町長は6月の町議会一般質問で、「観光基本計画に基づく子供の学習の場の提供」について問われ、こう答弁した。屋久島を筆頭にして、白神山地(青森県、秋田県)、知床(北海道)、小笠原諸島(東京都)、奄美・沖縄(鹿児島県、沖縄県)の各自然遺産地域を訪問するプログラムをつくり、「環境教育」を屋久島観光の柱の一つに据えたいというのだ。
日本で初めて世界自然遺産になった屋久島を預かる町長として、「なかなか先見性のある企画だ」と評価されたかったのだろう。

2013~14年に屋久島と白神山地の子どもが交流
だがこの構想、実は10年以上も前に屋久島と白神山地で生まれ、両地域の住民有志が「世界自然遺産こどもネットワーク」を発足させる準備を進めていたものだ。2013年に青森県深浦町の子どもたちが来島し、2014年には屋久島の子どもたちが雪深い白神の森を訪ねて相互に交流。将来的には知床や小笠原諸島とも交流を重ねながら、全国の子どもたちにも参加を呼びかける計画だった。
その第一歩となった屋久島と白神山地の交流では、深浦町や鹿児島県などから公費での支援があった。また、2014年に白神山地を訪ねた際には、屋久島町から副町長や担当職員も参加しており、日本の世界自然遺産地域が一つにつながる機運が高まっていた。

荒木町長、子どもではなく「おとなのネットワーク」を結成
ところが、荒木町長はこの企画にそっぽを向いた。
そして、子どもではなく「おとなのネットワーク」をつくると言い出し、2016年に「世界自然遺産地域ネットワーク協議会」を結成し、5地域の代表として荒木町長が会長に就任。その一方、屋久島と白神山地の「こどもネットワーク」は梯子を外された格好となり、途中で計画がとん挫してしまった。

町長主導の協議会、何も実績がないまま10年で解散
それから10年。子どもよりも大人を優先してつくった協議会だったが、近く活動を休止することが決まっている。これまで各地域の持ち回りで計10回の会議を開催。だが、屋久島環境文化財団が中心となって2023年に発足した「世界自然遺産5地域会議」に吸収されることになり、具体的な活動や成果を一つも残すことなく幕を閉じることになったのだ。
協議会を発足させた当初、荒木町長は大手広告代理店・電通の企画案で事業を展開するつもりだった。だが、各地域の市町村長が電通と組むことに反対。その後は新たな企画を提案できないまま、毎年恒例の会議を開くことだけに多額の予算を費やすことになった。
そんな「大失敗」をしたからだろう。
町議会で将来の観光ビジョンを問われ、荒木町長が口にしたのは、10年以上前に立ち消えになった「世界自然遺産こどもネットワーク」と同じ構想だった。それならば、最初から子どもの交流を軸にした協議会を結成すればよかったのに、なぜ「おとなのネットワーク」をつくると言い出したのか?

各自治体から嫌われた電通の企画案
世界自然遺産の屋久島ならではの構想なので、これからでも遅くはない。ただ、当時の関係者は他の道に進み、この企画を一から立て直すのは極めて難しい。その当時、屋久島と交流した深浦町は大いに乗り気だったが、いまでは町長も代わり、すっかり熱も冷めてしまっている。
その意味で、10年前に荒木町長が逃した好機は、あまりにも大きかった。そして町長は、これからどのようにして、この構想を前に進めていくのだろうか?
前回は電通の企画案が各自治体から嫌われた。そうであれば、今回は広告代理店やAI(人工知能)に頼ることなく、屋久島が自ら紡いだ独自案で計画を練り上げてほしい。
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