【視点】屋久島町の教訓、約束を破って寄付金を使い訴訟沙汰に

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海底清掃に1700万円支出したのに潜水2時間 ごみの回収量も報告なし

請負業者の言いなりで観光ガイド冊子などを制作

2025年度「ふるさと納税」は3600万円減額

【左】屋久島町が海底清掃事業で制作した観光ガイド冊子「るるぶ特別編集 屋久島」の表紙【右】海底清掃事業をめぐる住民訴訟が提起された鹿児島地裁=屋久島ポスト撮影

屋久島町が2025年度に寄付を受けた「ふるさと納税」は約6億1500万円で、前年度より約3600万円減り、2年連続の増額から一転してマイナスとなった。特に2024年度は1年で約1億1600万円も増えていただけに、財政難に苦しむ町は大きく落胆していることだろう。

だが、ふるさと納税の寄付金で実施した町の海底清掃事業をめぐり、いま鹿児島地裁で住民訴訟が続いていることを思えば、それは仕方がないかもしれない。

JTB「るるぶ特別編集 屋久島」と動画に事業費の大半

2022年度に町は寄付金1700万円で海底に溜まったごみを清掃したというのだが、いざ事業が終わってみると、実際に海に潜って清掃したのは計2時間だけだったのだ。実施報告書には回収したごみの総量が記載されていなかったため、事業を請け負ったJTBパブリッシング(本社・東京都江東区)に取材で尋ねてみたが、明確な答えは返ってこなかった。

それでは1700万円もの寄付金は何に使われたのか?

情報公開請求で町から記録文書を手に入れると、屋久島の観光情報などを伝えるガイド冊子「るるぶ特別編集 屋久島」と動画の制作に事業費の大半が支出されていたことが判明した。さらに、この1700万円は寄付者が使途を「環境保全事業」に指定していたものだとわかり、寄付金の目的外利用が疑われる事態となった。

屋久島町の委託でJTBパブリッシングが制作した観光ガイド冊子のグルメ情報ページ

「全国の善意を裏切る行為」と住民訴訟に

「全国から『屋久島の自然を守ってほしい』と寄せられた善意を裏切る行為だ」

町議会の一部から抗議の声が上がったが、荒木耕治町長ら町幹部は「妥当な事業費の支出だった」と主張。それを受けて町議が住民訴訟を提起し、町に対して1700万円を荒木町長らに損害賠償請求するように求めて争っている。

訴訟で町は、寄付金の目的外利用だとの指摘を受けて、希望の使途どおりに寄付金を使わなかったとしても、法的には問題がないと反論。それに対し町議は、町はふるさと納税に関する条例で「環境保全事業」や「子育て教育事業」など5項目の使途を定めたうえで、寄付者に希望する使い道を尋ねており、「その約束を守るのは自治体として当然の責務だ」と訴えている。

寄付金の使い道で町は二枚舌

その争いを踏まえて、2025年度の寄付金について報告する「町報やくしま」(2026年8月号)の記事を読むと、町の説明に大きな違和感を抱いた。

<皆様からお寄せいただいた寄附は、「屋久島町だいすき基金」に積み立てられ、寄附者の皆さんが選択する5種類の「使い道」に沿って、翌年度以降に基金を取り崩して、町の事業に活用しています>

訴訟では、希望の使途どおりに寄付金を使わなくても法的に問題はないと主張しているのに、町報では<寄附者の皆さんが選択する5種類の「使い道」に沿って>事業に支出していると書いているのだ。これでは完全な二枚舌であり、屋久島のためを思って寄付する人たちは、どちらの言葉を信じていいのかわからなくなる。

2025年度のふるさと納税に関する「町報やくしま」(2026年8月号)の記事

全国から応援メッセージもあるのに……

また、町報の記事では寄付者からの応援メッセージも紹介されている。

<もう20 年近く前になりますが、一度伺わせていただいた時の感動を今でも覚えています。後世に残したい貴重な場所です。ほんの少しですが、その一助になれれば幸いです>

<屋久島には何度も行きました。素晴らしい自然遺産に毎度圧倒されます。後世にまで続くよう、町の皆さまのご尽力に敬意を払いつつ、期待を込めて今年も寄付します>

こんなメッセージを受け取っておきながら、よくも町は訴訟で「希望どおりの使途でなくても法的な問題はない」と言えたものである。

「町報やくしま」(2026年8月号)の記事で紹介された寄付者からの応援メッセージ。希望した寄付金の使途にしたがって、それぞれの思いを寄せている

町、JTBパブリッシングの見積書を精査せず1700万円支出

海底清掃事業をめぐる一連の取材で感じるのは、請負業者のJTBパブリッシングから言われるがままに、町が事業費の支出を決めていることだ。契約前に見積書をしっかり見れば、事業の主眼である海底清掃に予算の大半を使うべきだとわかるはずなのに、町は何も精査せずに1700万円を「言い値」で支払ってしまったのである。

住民訴訟は1カ月後の9月15日に判決が言い渡される。町の事業支出に対し、地裁がどのような判断をするのかが注目されるところだが、ここで最も大切なのは司法の判断ではない。

全国から寄せられた善意の浄財を約束どおりに使う――。

地方自治体としては当然のことだが、それができなかったのであれば、訴訟沙汰になった教訓として、荒木町長ら町幹部はしっかりと自省するべきだ。そして、もし今後も約束を守れないのであれば、屋久島町に寄付金を集める資格はない。

■屋久島町政への提言と意見
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