【視点】なぜ、屋久島町は「話し合い」ではなく「裁判」での解決を選ぶのか?
「違法かどうかに関係なく、寄付金は約束した使い道のとおりに使うべき」
住民訴訟の原告町議、屋久島町に話し合いを求めるも門前払いに
海底清掃事業をめぐる住民訴訟は「やむなく」控訴審へ

屋久島町 海底清掃事業・住民訴訟
ふるさと納税で「屋久島の自然を守ってほしい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報を紹介するガイド冊子や動画の制作費に支出された。この問題を受けて、寄付金の目的外利用などを理由に、町長らに事業費1700万円の賠償を求める住民訴訟が提起されたが、鹿児島地裁は2026年9月に請求を棄却した。
裁判所に違法と判断されなければ、屋久島町は寄付を町にしてくれた人たちとの約束を守らなくてもいいと思っているのだろうか?
海底清掃事業への寄付金支出の違法性を訴えた住民訴訟で、請求を棄却された渡辺千護町議は9月15日の判決後、町に対して申し入れをした。
「今後の寄付金の使い方について、裁判を離れて一緒に話し合いませんか?」
事業に使われた寄付金は使途が「環境保全事業」に指定されたものだったが、実際には寄付金1700万円の大半が観光ガイド冊子の制作など「観光広報事業」に使われていたからだ。判決では、寄付金の運用について規定した町条例に「寄附者の意向に拘束されるとの定めはない」などとして、寄付金の使い道は「町長の広範な裁量に委ねられている」と指摘。町がふるさと納税の寄付金を「目的別に管理して支出していない」ことも認められた。

町「弁護士から『話し合いは控えた方がいい』と指示された」
裁判所がそう判断したとなると、今後も町は寄付者が指定した使い道のとおりに寄付金を使わなくていいことになる。
渡辺町議は「違法かどうかに関係なく、寄付金は約束した使い道のとおりに使うべき」と判断し、町と協議したいと考えた。だが、町から返ってきたのは、当事者意識が乏しい答えだった。
「弁護士から『話し合いは控えた方がいい』と指示されたので、話し合いには応じられない」
渡辺町議「控訴審で町民に負担をかけたくない」と思ったのだが……
原告と被告、お互いの利益が関係する民事訴訟であれば、その判断は理解できる。
しかし、これは町の財産を守るための公益的な住民訴訟だ。裁判に勝っても負けても、原告の渡辺町議には何の利益もない。町に話し合いを求めたのは、今後は寄付者の意向に沿って寄付金を使ってほしいとの思いがあったからだ。また、このまま控訴して裁判を続ければ、さらに町は弁護士に報酬を払う必要があり、これ以上は町民に財政的な負担をかけたくないという考えもあった。
だが、町は渡辺町議の求めを門前払いしてしまった。そうなると、残された道は控訴しかない。
渡辺町議は9月26日に「やむなく」控訴し、今後は福岡高裁宮崎支部で裁判を続けることになる。

屋久島ポスト、控訴審よりも話し合いの方がいいのでは?
さらに裁判費用を公費から支出して控訴審を続けるよりも、ここは話し合いで解決した方がいいのではないか?
そんな疑問をもって屋久島ポストが町に取材をすると、この事業を担当した観光まちづくり課の有馬照幸課長は、こんな回答をしてきた。
「判決は出たが、これまで議会などで出された意見を尊重して、(役場)内部で検討するなどの取り組みをしている」
担当課長「内部の取り組み」を理由に話し合い拒否も 具体的な取り組みは「何も決まっていない」!?
なるほど、判決とは離れて、すでに町内部で取り組みをしているということだ。そこで尋ねてみた。
「役場内部でどのような取り組みをしているのか、具体的に教えてほしい」
ところが、有馬課長は不可解な答えをした。
「検討した中身については、何も具体的には決まっていないので説明できない」
思わず「おいおい、それはないだろう」と、胸の内で言ってしまった。すでに町内部で取り組みをしているから、渡辺町議との話し合いを断ったのだ。それにもかかわらず、その取り組みについて具体的に尋ねたら、「何も具体的には決まっていない」とは、一体どういうことなのか。
それから何度も「町内部の取り組み」について確認したが、やはり有馬課長は具体的に答えることはなく、そのまま取材は終わった。

町長も町幹部も選ぶ裁判継続への道
報道する立場ではあるが、屋久島ポストで取材を続ける私たちも屋久島町民である。町の担当課長に公費の支出に関わる重要な質問をしているのに、町民に対して、そんないい加減な説明をして、本当に許されると思っているのだろうか。
かくして、海底清掃事業をめぐる住民訴訟は控訴審となり、町はさらなる裁判費用を負担することになった。何とももったいない話ではあるが、それが荒木耕治町長によって抜擢された有馬課長ら町幹部の方針だということである。
そういえば、町営牧場で職員が過労死したことをめぐる民事訴訟でも、荒木町長は裁判所が勧める和解案を蹴って、判決に向けて裁判を続ける判断をした。
魚は頭から腐る――。
あまり言いたくないことわざだが、町があまた抱える訴訟への対応を見ていると、そう思わざるを得ない。
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