【展望】和解か? それとも判決か? 過重労働死訴訟で揺れる屋久島町

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町幹部に「判決で原因や問題点を明確にすべき」との意見

判決なら元課長らの証人尋問は必須

11月25日、町営牧場過重労働死訴訟で判断へ

【上】屋久島町役場=屋久島ポスト撮影【左下】屋久島町営牧場で公務中に亡くなった田代健さん=遺族提供【右下】鹿児島地裁=屋久島ポスト撮影

屋久島町営牧場で町職員の田代健さん(当時49)が公務中に亡くなった公務災害をめぐる損害賠償請求訴訟で、鹿児島地裁が出した和解案に対し、被告の町が揺れている。

地裁は労働時間の管理を怠った町の責任を認め、町が遺族に解決金4000万円を支払うことなどを提示。町は次回の裁判がある11月25日までに、この案に応じるかどうかを判断しなくてはならない。

ところが、町幹部からは和解ではなく、判決を求めるべきだとの意見が上がっているというのだ。

その理由は、和解案の内容では田代さんの死亡について、その原因や問題点が具体的にわからないからだ。そして、それらが裁判で明確に示されなければ、責任の所在も不明なままで、再発防止策を講じることができないという。

遺族、提訴しなければ「泣き寝入り」だった

だが、これまでの訴訟審理で町は、「過重労働はなかったという認識」だと主張し、町としての管理責任を完全否定してきた。それにもかかわらず、なぜ和解案が提示された途端に、一転して死亡の原因や問題点を明確にしたがるのか。それならば、2019年8月に田代さんが亡くなった当初の段階で、第三者委員会を設置するなどして、町が自ら積極的に調査するべきではなかったのか。

ここで視点を変えると、もし訴訟が提起されなければ、町はその原因や問題点を明らかにすることはなく、田代さんの遺族は「泣き寝入り」を強いられていたということだ。

屋久島町営牧場・過重労働死訴訟の記者会見には、報道各社の記者やカメラマンが大勢集まった=2023年10月19日、鹿児島県庁記者クラブ

町、公務災害の認定を公表せず

田代さんの死亡について、地方公務員災害補償基金の鹿児島県支部(支部長・塩田康一知事) は2023年2月、過重労働が原因で心筋梗塞を発症したことによる公務災害と認めている。ところが、町は「過重労働はなかった」と強弁し、公務災害が認定されたという事実すら公表しなかった。さらには、荒木耕治町長ら町幹部が町議会で哀悼の意を捧げることもなく、田代さんの命を奪った公務災害は、なかったも同然に扱われてきた。


荒木町長、法廷で証言の可能性も

いまの時点で、町の最終的な判断はわからない。だが、もし「判決を求める」となれば、裁判は長期化することになる。

まずは、町営牧場を所管していた農林水産課(現・産業振興課)の課長や牧場長、担当職員ら、当時の職員に対する証人尋問をしなくてはならない。また、事故発生後の対応については、田代さんの雇用主だった屋久島町のトップとして、荒木町長が法廷で証言を求められる可能性もある。

和解か?

それとも判決か?

11月25日、屋久島町の判断に注目したい。

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