【視点】過重労働死、担当職員の責任を明確にしたい屋久島町長
荒木町長、死亡事故の調査せずに6年4カ月放置 → 町の管理責任を認める和解案をはねつけ判決求める
町長「どの部分の何がどう悪いのか明確にしたい」
屋久島町営牧場 過重労働死訴訟

屋久島町営牧場で町職員の田代健さん(当時49)が過重労働で亡くなった公務災害をめぐる国家賠償請求訴訟で、被告の町は11月25日、町が遺族に解決金4000万円を支払う和解案に応じないことを鹿児島地裁に伝えた。町総務課によると、町として労働時間の管理を怠った一定の責任は認めるが、荒木耕治町長がこう言って納得しないのだという。
「どの部分の何がどう悪いのかが具体的にわからないので、判決によって責任の所在を明確にしたい」
つまり、誰のどのような行為や判断がいけなかったのかを、裁判のなかで明らかにしたいということである。
裁判官と町代理人、町長の判断に困惑
だが、この訴訟は田代さんの死の要因となった過重労働について、遺族が町の雇用主としての管理責任を問うために提起したものだ。地裁が示した和解案は、労働時間の管理を怠った町の責任を認める内容で、町に対して、亡くなった田代さんに哀悼の意を捧げるとともに、適正な労働管理で再発防止に努めることを求めている。
それゆえに、地裁の裁判官と町代理人の弁護士は困惑しているようだ。
訴訟関係者によると、和解案をはねつける町長の判断に対し、裁判官は納得がいかない様子だったという。また、町の代理人についても、和解案に応じるように町を説得しているようで、町と代理人の間で意見が大きく割れているとみられる。

町の法的責任を問う国賠訴訟なのに……
これらの状況を踏まえて感じるのは、この訴訟の趣旨について、荒木町長がまったく理解していないということだ。法廷で審理されているのは、労働時間の管理を怠った町の法的責任であり、町営牧場の担当だった職員一人ひとりの過失が問われているわけではない。国家賠償請求訴訟なので、担当職員の行為や判断に誤りがあったとしても、その責任を負うのは地方自治体としての屋久島町である。
町は第三者委員会で独自調査を
ところが、荒木町長はこれに納得がいかないようだ。
自分は町営牧場の管理に直接関わっていないので、そこで起きた死亡事故の責任は、牧場業務を担当した各職員にあると言いたいのだろう。だが、そんなことを言い出したら、地方自治体のトップである市町村長は何のために存在するのか。社員が引き起こした不祥事の責任を問われた社長が、「それは社員が悪いので、私の責任ではない」とでも言ったら、そんな企業は社会の笑いものになるだけである。
もし、荒木町長が各職員の責任を明らかにしたいのであれば、この訴訟を踏まえて、町が独自の調査をするしかない。弁護士や社会保険労務士といった専門家を招いて第三者委員会を設置すれば、荒木町長が知りたい「どの部分の何がどう悪いのか」が具体的かつ明確にわかり、それが再発防止につながることになる。
町長、調査せずに公務災害の認定事実を完全否定
そして、そもそもだが、田代さんが亡くなった2019年8月の段階で、なぜ荒木町長は死亡事故の調査を実施するように、当時の担当課長らに命じなかったのか。さらには、地方公務員災害補償基金が2023年2月に公務災害を認定し、田代さんが過重労働で死亡したと判断した際に、どうして荒木町長らは「過重労働はなかった」と強弁して、公務災害の認定事実を完全否定したのか。
田代さんが亡くなってから6年4カ月。これほど長きにわたり、荒木町長は死亡事故の調査や検証をしないまま、職員の過重労働死問題を放置してきた。それにもかかわらず、いざ裁判で町の管理責任が認められそうになった途端に、一転して「どの部分の何がどう悪いのか明確にしたい」と言い出しても、誰も納得しないであろう。それなら「なぜ最初から自分たちで調査をしなかったのか?」と、逆に突き放されるだけである。

町の全責任を負うのは荒木町長
今後、法廷では担当職員らの証人尋問を経て、判決が言い渡されることになる。判決文には、各職員の過失も具体的に明記されるかもしれない。だが一つ、そのなかで確実に指摘されるのは、田代さんの労働時間の管理を怠った町の法的責任である。
そして、その全責任を負うことになるのは、屋久島町の代表である公人としての荒木町長であることは、ここで言うまでもない。
