屋久島ポスト、石田尾議長に陳述書を要求「なぜ議会取材を拒否したのですか?」
屋久島ポスト、武田共同代表の陳述書で取材拒否の違憲性を主張
屋久島町、石田尾議長の陳述書提出を検討へ
【議会取材の自由を守る訴訟】

屋久島町議会(石田尾茂樹議長)が市民メディア「屋久島ポスト」の議会取材を拒否したのは、「表現の自由」などを保障した憲法に違反しているとして、屋久島ポストが町を相手取って提起した「1円訴訟」――。
この訴訟の弁論準備手続きが2月12日にあり、原告側から屋久島ポストの武田剛共同代表が陳述書を提出し、合理的な理由がない議会取材の禁止は、「法の下の平等」や「表現の自由」などを保障した憲法に違反すると主張しました。
陳述書を踏まえ、原告側から石田尾議長に陳述書を提出するように求めたところ、被告の町は検討する旨の回答をしました。
今後の審理で、もし被告側から石田尾議長の陳述書が提出されない場合、屋久島ポストとしては石田尾議長の証人尋問を請求し、取材を拒否した具体的な理由を法廷で問いただす予定です。

この日、原告側が裁判所に提出した武田共同代表の陳述書は以下のとおりです。
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陳述書
※第1「経歴および屋久島での取材」と第2「屋久島町で調査報道を始めた経緯と成果」は省略。
第3 屋久島町議会による取材妨害
屋久島ポストに対する屋久島町議会の取材拒否は、私たちの報道によって、屋久島町の国庫補助金不正請求事件が発覚した2021年11月から始まりました。
その詳細な経緯については訴状に譲りますが、ここで私が最も問題視しているのは、石田尾茂樹議長が鹿児島県庁の記者クラブに所属しているのか否かを基準にして、同クラブに所属していない屋久島ポストの議場取材を拒否したことです。
その一方で石田尾議長は、新聞やテレビのマスコミ各社には議場での取材を許可していますが、その根拠は、マスコミ各社が鹿児島県庁の記者クラブに所属していることであり、それがゆえに、マスコミ各社は議会の内容を公平公正かつ正確に伝えられる能力があると判断しています。
しかしながら、ここで重要なのは、議会取材をしたいと望む者が、記者クラブに所属しているか否かではなく、議会の内容を公平公正かつ正確に伝えられる能力や経験があるかどうかです。もし、記者クラブの所属だけが条件となれば、フリーランスのジャーナリストは誰も取材できず、池上彰氏や田原総一朗氏、江川紹子氏といった著名なジャーナリストの取材でも、すべて断らなくてはなりません。
これは屋久島ポストにも同じことが言えます。共同代表である私は、フリーランス及び朝日新聞とKKB鹿児島放送の屋久島駐在の記者として、2015年以降は屋久島町議会の取材をしていましたが、議会の内容を公平公正かつ正確に報道しており、何ら問題になるような記事を配信したことはありません。それは石田尾議長も十分に認識しており、私が議会報道を正確にできることは、屋久島町議会においては周知の事実でした。
さらに言えば、国庫補助金不正請求事件が発覚したのちに開かれた2021年11月26日の全員協議会で、石田尾議長は屋久島ポストの取材を「特例」で許可しています。そして、私たちが全員協議会を取材した結果、何も問題になるような報道はなされませんでした。
つまり石田尾議長には、屋久島ポストの取材を拒否する合理的な理由がなかったということです。
しかし、それでも石田尾議長は2021年12月7日以降の本会議や全員協議会において、屋久島ポストが鹿児島県庁の記者クラブに所属していないことだけを理由に、私たちが議場で取材することを拒否し続けました。これは所属や身分で人を差別することを禁じる憲法14条に反する行為であり、住民代表が集う地方議会としては、決して許されないことであると、私は考えています。
これらの経緯を踏まえると、石田尾議長による議場取材禁止の判断は、屋久島ポストに対する取材妨害であると、私は感じています。屋久島町議会のなかにおいて、石田尾議長は荒木耕治町長を支持する町議を束ねるベテラン議員であり、荒木町長に不都合な事実を報じている屋久島ポストには、できる限り取材をさせたくないという思惑があったと、私は推察しています。
なぜなら、それ以外に合理的な理由が見つからないからです。
私には議会の内容を公平公正かつ正確に報じる能力と経験があり、それは石田尾議長も十分に認識しています。「特例」で取材した2021年11月26日の全員協議会でも、屋久島ポストは正確に報道しました。さらに、石田尾議長が一転して議場取材を許可した2025年6月以降についても、屋久島ポストは議会の内容を正確に伝えており、何ら問題は起きていません。
それにもかかわらず、石田尾議長は屋久島ポストの議会取材を約3年半にわたって拒否し続けました。屋久島ポストに限らず、合理的な理由がないまま議会取材を拒否する行為は、一般市民の知る権利や表現の自由を侵害する行為であり、民主的な社会を守るためにも絶対に許されないことだと、私は考えています。
第4 議会取材の可否の判断方法
先述したとおり、議場での取材を許可するか否かの判断は、まずは取材許可の申請者が公平公正かつ正確に報道する能力と経験を有するのかどうかを確認することが重要です。その結果、議会の安全と秩序が保たれると判断されれば、申請者の取材は認められるべきであると、私は考えています。
なお、記者クラブに所属しているという事実については、取材の能力や経験の検討をしなくても容易に判断できる基準として有効ですが、ただ単に、それだけが絶対的な条件になることはありません。もし例外的に、記者クラブの所属だけが取材許可の条件となる場合があるとすれば、国会や都道府県議会など、多くの報道機関が取材するケースが考えられます。物理的に記者席のスペースが限られるため、取材許可を記者クラブに限定することには一定の合理的な理由があると言えます。
しかし、多くの報道機関が取材するような議会であっても、記者クラブに所属していない報道機関やジャーナリストから取材許可の申請がある場合は、取材の目的や実績などを精査したうえで、取材の可否を判断するべきであると、私は考えています。
ところが、本件における石田尾議長の判断では、そのような検討が一切なされていません。また、日常的に屋久島町議会を取材しているのは屋久島ポストだけであり、その他のマスコミ各社が議場を訪れることはほとんどありません。そのような状況のなかで石田尾議長は、記者クラブの所属だけを絶対的な条件として、屋久島ポストの取材を拒否しており、これは憲法14条が保障する「法の下の平等」に反することは明らかです。
それを踏まえ、これまで私は石田尾議長に対し、「なぜ屋久島ポストの取材を拒否してきたのか?」、そして「なぜ一転して屋久島ポストの取材を許可したのか?」と、議会事務局を通じて具体的な理由を尋ねてきました。しかし、石田尾議長は「議長判断」と回答するだけで、何ら具体的な理由を説明することはありませんでした。
屋久島町議会は、私たち屋久島町民ための議会です。その町民のための議会を、町民である私たちが取材したいと申し出たにもかかわらず、具体的な理由も説明されないまま、一方的に取材を拒否されたとすれば、それは「町民不在」の議会であると言えます。さらには、そのすべての判断が「議長判断」という、たった一言で認められるのであれば、それは議長が町民のための議会を「私物化」していると言わざるを得ません。
第5 新たな時代の市民メディアと議会取材
新聞各社が大きく発行部数を減らして衰退するなかで、全国の地域社会では報道機関の監視の目が届かない「ニュース砂漠」が広がっています。
私の古巣である朝日新聞をみると、2015年に地方支局は282ありましたが、2024年には約6割も削減されて113支局になり、県庁所在地から遠く離れた市町村に記者を派遣する余裕はなくなっています。
その窮状は全国紙だけでなく、地方紙でも同じです。南日本新聞は長年にわたって屋久島支局を置いてきましたが、2024年3月に常駐記者が撤退しました。そして、屋久島町内からはマスコミの記者がいなくなり、町役場を身近に取材するのは屋久島ポストだけになってしまいました。
ニュース砂漠が広がると、その先にどのような社会が待っているのか。
それは、日本より地方紙の衰退が激しい米国を見れば明らかです。カルフォルニア州のベル市は、地元紙の支局が2003年に閉鎖されたのち、いつの間にか市幹部の給与を10倍に増額しました。そして、「口止め」のために警察署長や市議会議員の給与も上げていたことが2010年の報道で明らかになり、全米を揺るがす大事件に発展しました。
鹿児島本土から遠い離島で取材する私たちにとって、このベル市の事件は他人事ではありません。もし、私たちが取材をしていなければ、町長ら町幹部は出張旅費の着服を続け、その被害額は1000万円、2000万円と膨れ上がっていたはずです。さらには、町長による国会議員らへの高額贈答も続き、住民の大切な公費が無駄に失われ続けていたことでしょう。
そして、これは屋久島町だけではなく、全国の地域社会でも言えることです。マスコミの報道機関に頼れなくなったいま、民主的な社会を守っていくためには、住民が自ら行政を監視して、情報を広く共有する活動が求められています。
そのような状況のなかで、私たちはマスコミが取材できなくなった「空白地帯」を埋めるために、市民メディアとして取材活動を続けています。しかしながら、石田尾議長は屋久島ポストを「報道機関」とは認めず、議会取材から排除しました。その一方で石田尾議長は、県庁記者クラブに所属するマスコミ各社には取材を許可していますが、議会を取材するマスコミの記者はほとんどいない状況が続いています。
第6 まとめ
これまで本陳述書で示したとおり、屋久島町議会について、屋久島ポストは公正公平かつ正確な報道を続けており、議会の秩序を乱したり、議事を混乱させたりするようなことは何もしていません。そして、マスコミ各社の報道が極めて少ない屋久島町政を丁寧に取材し、数多くの記事を広く屋久島町民に届けています。
それにもかかわらず、私たち屋久島ポストの議会取材を拒否する石田尾議長の対応は、憲法21条で保障された「表現の自由」や「取材の自由」などを侵害する行為であると、私は考えています。さらには、屋久島ポストを「報道ではない」と断じて取材を拒否する一方で、マスコミ各社だけに議会取材を許可する対応は、憲法14条で保障された「法の下の平等」に反する判断だと、私は考えています。
※「屋久島ポスト」は訴訟の当事者であるため、この【議会取材の自由を守る訴訟】については、記事の文体を「です、ます調」にしたうえで、主観を入れた体験取材記の体裁にしています。
