【視点】赤字が続く入山協力金、寄付金で海底清掃をしている場合ではない
入山協力金、7年連続の赤字で累積額は計1億3560万円
3000万円の横領事件で失った制度への信頼
年6億5000万円、ふるさと納税の寄付金で赤字の補填を

世界自然遺産・屋久島の山岳環境を守るために集めている入山協力金の収支が7年連続で赤字となり、山岳トイレの管理費などで不足した金額は計1億3560万円――。
6年ぶりに入山協力金の取材をしたところ、これだけ多くの赤字が続き、その全額を町が公費で補填していることがわかった。
当初は黒字だったが横領事件で赤字に転落
この制度が2017年度に始まった当初、1年間の寄付額は6430万円で、協力金を管理する「世界自然遺産屋久島山岳部環境保全基金」の残高は2710万円もあった。翌2018年度も5500万円ほどが寄せられたが、協力金を集める「屋久島山岳部保全利用協議会」(会長・荒木耕治町長)の職員が3000万円の横領事件を起こし、基金の残高は910万円に減少。2019年度からは赤字に転じ、そのまま2025年度まで毎年1000~2700万円ほどの赤字が続いているのだ。
協力金で避難小屋トイレや登山道の管理
入山協力金は屋久島の山岳環境を保全するため、登山者に任意で納入を求める制度だ。対象は縄文杉や宮之浦岳などがある「奥岳」に入る中学生以上の登山客で、金額は日帰りで1000円、山中泊で2000円。集まった協力金は、主に避難小屋トイレのし尿搬出や登山道の整備などに使われている。

屋久島町、管理責任を負わないまま事件に幕引き
本来であれば、協力金だけで成り立つ制度だったが、何が原因で立ち行かなくなったのか?
まずは、先述した横領事件の影響が最も大きい。
町や国(林野庁、環境省)、鹿児島県などでつくる協議会の職員が起こした事件なのに、協議会の執行部は「任意団体の協議会に法的責任はない」と主張。さらには、町の条例に基づいて集めている協力金なのに、荒木町長ら町幹部は「協議会の職員が起こした事件なので、町に法的責任はない」として、すべての責任を横領した職員個人に押しつけて、事件に幕を引いてしまったのだ。
だが、協力金を寄付する登山客は、屋久島町と協議会を信じて浄財を託している。それにもかかわらず、いざ事件が起きれば、町も国も県も、どこも寄付金に対する管理責任を負わないのであれば、そんな制度を信じる登山客が減るのは当然である。

法的責任が負えない協議会が収納業務を継続
また、新型コロナウイルスの感染拡大で、2020~2021年度は登山客が減少した影響もある。だが、その後も協力金の収納額は回復することはなく、直近の2025年度は2940万円で、当初の6430万円と比べて半分以下に留まっている。
つまり、屋久島町は入山協力金を集める地方自治体として、多くの登山客から信頼を得られていないということである。また、「任意団体なので法的責任はない」と主張した協議会が、いま現在でも町から協力金の収納業務を委託されている以上は、登山客の不信が完全に払拭されることはないだろう。

赤字が続けば町の財政に大きな負担
それでは、今後も続く赤字をどうやって克服すればいいのか?
何よりもまずは、協力金制度に対する信頼を得ることが重要だが、すぐには期待できない。だからといって、このまま町の公費から赤字を補填し続ければ、ただでさえ苦しい町の財政に大きな負担となる。
そこで思いつくのは、ふるさと納税の寄付金を活用することだ。2024年度に集まった金額は6億5000万円。そのうち、2億円は使途が「環境保全事業」に指定された寄付金で、「屋久島の自然を守ってほしい」という寄付者の思いが詰まった浄財である。
環境保全の寄付金を観光広報事業に使う町
ところが町は、環境保全のために託されたはずの寄付金を、本来の目的とは全く違った事業で使っている。2022年度に寄付金1700万円で海底清掃事業を実施したのだが、ふたを開けてみると、事業費の大半を屋久島の魅力を紹介する観光ガイド冊子と動画の制作費に使っていたのだ。
一方、事業の主目的である海底清掃では、実際に海に潜ったのは計2時間のみで、海底から回収したごみの量も実施報告書では明らかにされていない。これでは、海底清掃をしたと見せかけて、実は観光広報事業をしたのではないかと言われても、仕方がない状況である。
そして最も疑われるのは、そもそものところ、1700万円もの寄付金を投じて清掃するほど、海底に多くのごみが溜まっていたのかということだ。海底での潜水が計2時間で、回収したごみの量も報告できないのであれば、その必要性があったとは到底思えない。

屋久島への善意を頼りに山岳環境の保全を
こんな本末転倒な寄付金の使い方をするよりも、町は赤字が続く入山協力金の基金に繰り入れるべきではなかったのか。使途が環境保全に指定された寄付金なので、山岳トイレや登山道の維持管理に使ったと胸を張って報告すれば、多くの寄付者に喜んでいただけるのは明らかである。
物価や人件費が高騰している影響で、町の公共事業費は高額になる一方だ。そんな状況のなかで、このまま入山協力金の赤字を町の公費で負担し続けるわけにはいかない。
ここは一つ、屋久島の自然に思いを寄せる人たちの善意を頼りに、ふるさと納税の寄付金を山岳トレイの管理費などに活用してはどうか。荒木町長ら町幹部の賢明な判断を期待したい。
■屋久島観光への提言や意見
屋久島観光の将来的なビジョンについて、読者からのご提言やご意見をお待ちしています。記事としてご紹介するともに、荒木耕治町長ら町幹部に伝えさせていただきます。以下URLのフォームから投稿をお願いいたします。
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