連続勤務 269日 215日……それでも職員は働き続けた【なぜ牧場職員は過労死したのか?】(5)

2019年8月に町営長峰牧場の職員・田代健さん(当時49)が過労死した公務災害をめぐる損害賠償請求訴訟で、証人尋問が7月7日に鹿児島地裁で行われた。証言したのは次の3人。
産業振興課 鶴田洋治 元課長(牧場所管課責任者)
産業振興課 松本彰文 元統括係長(牧場管理責任者)
牧場元職員 片山吉清さん(田代健さんの元同僚)
屋久島ポストはそれぞれの証言を踏まえて、訴訟の主な争点を複数回にわたってまとめる。
「269日」「215日」「194日」「124日」……。
町営牧場を所管する町産業振興課の元上司2人に対し、遺族代理人の立野嘉英弁護士は反対尋問で、2016年以降に田代健さんが1日も休むことなく、連続で勤務した日数を列挙した。そして厚生労働省のガイドラインを示し、労災認定する際に30日以上の連続勤務があった場合は、業務による心理的負荷の強度が「強」と認められることを伝え、こう問いただした。
「連続勤務が30日続くとストレスが『強』となって労災が認められる基準になっているが、この厚労省のガイドラインを知っていますか?」
この質問に鶴田洋治・元課長は「(ガイドラインは)見たことがありません」と即答。厚労省の基準を踏まえて「研修や実態調査をすることは考えていなかったのか?」と尋ねられると、短く「ありません」と答えた。

研修や労働時間の管理「町から指示はなかった」
同じ質問を受けた松本彰文・元統括係長の反応も似たものだった。ガイドラインについて「知識はなかった」と答えたうえで、「研修を受けたことはなく、町から労働時間の管理に関する指示はなかった」と述べた。
続いて立野弁護士は、田代さんが亡くなった2019年の連続勤務の日数について、「平成31(2019)年3月31日から6月9日は71日間、令和元(2019)年6月23日から8月4日は53日間だった」と指摘して、「そういう(連続勤務の)状況を知らなかったのか?」と尋ねた。これに対し、月に2~3回は長峰牧場で作業の様子を確認していたという松本元統括係長は「(連続勤務を)認識していなかった」と答え、労働者側から要請がない限り、労働環境を改善する必要はないという考えを示した。

作業日報の改ざんで連続勤務が把握できず
ここで問題となった田代さんの連続勤務は、町が保管する作業日報には記載されていない。元同僚の片山吉清さんの証言によると、同課の安藤幸尋・元係長が労働基準法に触れないようにするために、勤務時間を週40時間以内に収めるように指示したからだという。
その結果、田代さんは完全に休める日がほとんど取れず、亡くなる3日前までの連続勤務は53日間だった。
片山さんへの反対尋問で、町代理人の新倉哲朗弁護士が「安藤さんの指示を課長に報告しなかったのはなぜか?」と質問すると、片山さんは「生き物を相手にする仕事なので、仕方がないということで受け入れていた」と回答。さらに新倉弁護士が念を押すように「なぜ相談しなかったのか?」が問いただすと、「そういうものだと思って(受け入れて)いた」と述べた。

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長峰牧場では100~200日間超の連続勤務が常態化していたことが、証人尋問によって明らかになった。だが、この事実について、鶴田元課長と松本元統括係長は全く認識しておらず、労働者側から要請がない限り、改善する必要性はないと認識していたという。
そして最も問題なのは、厚労省が過労死を認定する際に用いているガイドラインについて、2人が全く知らなかったことだ。まだ荒木耕治町長に尋問していないが、おそらく町長ら幹部も知らなかった可能性が高いとみられる。
つまり屋久島町は、どれだけ長く連続勤務が続いていたとしても、職員から「休みたいです」と声が上がらなければ、休日を取らせる必要はないと考えているのである。
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