作業日報の勤務時間、1日6時間半に「改ざん指示」【なぜ牧場職員は過労死したのか?】(2)

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同僚職員、実際の勤務時間だと「査察が入った場合やばい」と指示された

担当課長、改ざん指示は「知らない」「本人も否定している」

屋久島町営牧場 過労死訴訟・証人尋問

屋久島町役場=屋久島ポスト撮影

2019年8月に町営牧場職員の田代健さん(当時49)が過労死した公務災害をめぐる損害賠償請求訴訟で、証人尋問が7月7日に鹿児島地裁で行われた。証言したのは次の3人。
産業振興課 鶴田洋治 元課長(牧場所管課責任者)
産業振興課 松本彰文 元統括係長(牧場管理責任者)
牧場元職員 片山吉清さん(田代健さんの元同僚)

屋久島ポストはそれぞれの証言を踏まえて、訴訟の主な争点を複数回にわたってまとめる。

地方公務員災害補償基金の鹿児島県支部(支部長・塩田康一知事)は2023年2月、田代健さんの死亡事故を過労死による公務災害と認定した際に、屋久島町の労務管理体制について次のように指摘した

<時間外勤務が生じないことが所与の前提となっており、また、時間外勤務を含めた業務配分を現場の職員に任せ、そもそも業務命令権者として主体的に勤務時間を管理する体制になっていなかったものと認められる>

地方公務員災害補償基金のウェブサイト画面

雇用契約への切り替えで労基法を守る必要性

この基金の判断を踏まえて、田代さんの元同僚である片山吉清さんは、町から作業日報の勤務時間を「改ざん」するように指示されていたと証言した。

町は2018年4月、それまで片山さん・田代さんと結んでいた業務委託契約を雇用契約に切り替えた。理由は、地方自治体が個人に業務委託するのは不適法だとの指摘を町議会で受けたためだ。これによって、町は労働基準法に従って職員2人の勤務時間を管理する必要に迫られた。

係長、雇用契約の「週40時間以内」に従って指示か?

町との契約が雇用に切り替わった後の同年5月、片山さんが町営牧場を所管する産業振興課に4月分の作業日報を提出すると、畜産担当だった安藤幸尋・元係長からこう言われた。

「この作業時間だと(労働基準監督署から)査察が入った場合やばい(違法になる)」

そして、雇用契約書で規定されたとおり、「週40時間以内」に収まるように作業日報を書き直すように指示されたという。

片山さんは「1日8時間」であれば労基法上は問題ないと考えて、1日の勤務時間を8時間に書き直して作業日報を再提出。だが、日報上は週6日勤務にしていたため、安藤元係長から「まだ時間が多い」と言われ、1日6時間半に書き直して提出し直した。

それ以降、片山さんと田代さんは実際の勤務時間がどれだけ長くなっても、作業日報には1日6時間半と記載して提出するようになったという。

遺族代理人、改ざんをめぐり反対尋問

一方で同課の鶴田洋治・元課長は、安藤元係長が実際より勤務時間を短く書くように指示していたことについて、遺族代理人の立野嘉英弁護士から問われると、そのような指示があったことは「知らない」と答えた。また、田代さんが亡くなった後に直接本人に確認したところ、安藤元係長は作業日報の改ざん指示を否定したという。

鹿児島地方裁判所の法廷(左)と外観=裁判所ウェブサイトより

統括係長、作業日報は「賃金を払うためのものだと認識」

それでは作業日報について、町営牧場の管理責任者だった同課の松本彰文・元統括係長はどう証言したのか。

立野弁護士が問いただすと、松本元統括係長は「作業日報の詳細を確認していなかった」と認めた。

各月の作業日報には<確認検査調書>と記載された表紙が付けられており、そこで松本元統括係長は<検査員>として署名と押印をしたうえで、<業務日誌により契約書どおり施行されていることを確認 合格>と書いたことになっていた。だが、実際には署名も押印もせず、田代さんと片山さんの勤務時間を確認することもしていなかった。

この理由を問われると、松本元統括係長は「作業日報は仕事をしたのかどうかを確認するもので、賃金を払うためのものだと認識していた」と証言。立野弁護士が「検査の実態はなかったのか?」と質問すると、元統括係長は「はい」と答えた。

2014(平成26)年10月分の作業日報の確認検査調書の一部。その当時、鶴田洋治元課長は「課長補佐」だった

作業日報の改ざん指示はあったのか否か?

片山さんの詳細な説明を聞く限り、証言の信憑性は高いとみられる。だが、指示したとされる安藤元係長が証言台に立っていないため、今回の証人尋問だけでは明確な判断は難しいと言わざるを得ない。

その一方、労務管理をするべき鶴田元課長と松本元統括係長が、職員2人の勤務時間を確認していなかったことは明白になった。むろん、もし詳細に確認していたとしても、改ざんされていた作業日報であれば、過重労働があったことはわからなかった可能性が高い。

つまり、同基金が認定したとおり、屋久島町は業務命令権者として、牧場職員の労務管理を全くしていなかったということである。

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