【展望】なぜ、屋久島町営牧場の職員は過労死したのか? 元担当課長が裁判で証言へ
地方公務員災害補償基金、過労死による公務災害と認定
元課長、陳述書で勤務時間は「週40時間以内」と認定事実を否定
元同僚職員「作業日報の改ざんを指示された」
7月7日 鹿児島地裁で証人尋問

2019年8月に屋久島町営牧場で町職員の田代健さん(当時49)が公務中に死亡し、過重労働で心筋梗塞を発症したことによる公務災害と認定されたことを受けて、田代さんの遺族が町に約7000万円の損害賠償を求めた民事訴訟――。
この訴訟の証人尋問が7月7日に鹿児島地裁で予定され、町営牧場を所管する町産業振興課の鶴田洋治・元課長が当時の労務管理体制などについて証言する。
公務災害、死亡までの休日は「半年間で5日」と認定
田代さんの死亡は、過重労働で心筋梗塞を発症したことが原因だとして、地方公務員災害補償基金が民間の労災にあたる公務災害と認定。公的な機関が認めた「過労死」に対し、鶴田元課長がどのように証言するのかが注目される。
同基金は田代さんの勤務状況について、死亡する3日前までの連続勤務は50日間で、発症前1カ月間の時間外勤務は約81時間だったと判断。約100頭の牛を職員2人で飼育していたため満足に休むことができず、亡くなるまでの半年間で取れた休日は5日だったと認めた。

元課長、朝夕の定型作業は「1日4時間程度で完了」
この公務災害の認定事実に対して、鶴田元課長は5月15日付で鹿児島地裁に提出した陳述書で、次のように主張している。
まず、田代さんの労働内容について、「放牧地及び牛舎内における給餌作業と哺乳ロボットを用いた子牛の授乳という定型的な作業を、朝と夕に1回ずつ行ってもらうことに主眼がおかれていました」と説明。それを踏まえ、「朝・タに行う定型的な作業は、1回当たり2時間程度、1日にして計4時間程度あれば完了する」としたうえで、牧草地の管理作業などを加えても「週40時間以内で適宜行ってもらうという体制」だったという。
職員は「自家用車内で寛いでいることが多かった」
そして不定期ではあったが、鶴田元課長は「月数回」昼食後に牧場を訪れ、田代さんら職員2人の様子を確認していたという。その際の田代さんの様子については、「昼食を取るために外出しているのか牧場内におらず、または、通勤に使用している自家用車内で寛いでいるということが多かったと記憶しております」と陳述している。

元課長が主張する勤務状況は推定
これらの記述を読む限り、同基金が認定したような過重労働はなかったということになる。
ただ、ここで気になるのは鶴田元課長の陳述内容が、一般論的な「定型作業」や不定期の「月数回」という条件を前提にしたもので、実際の勤務状況を踏まえていないことだ。それゆえに、元課長は「労働時間が週50 時間を超えて60時間に至る事態が頻回に発生するような労働環境でなかったことは間違いないと思います」などと、あくまでも推定の範囲で自身の主張を述べている。

実際の勤務時間が確認できない町保管の作業日報
それでは、実際の勤務時間はどうだったのか?
実は田代さんがどれほど働いていたのか、町は正確な記録を残していなかったのだ。町が保管する作業日報の勤務時間は「週40時間以内」になっていて、同基金が認定したような時間外勤務は記録されていない。休日も定期的にあったことになっており、公務災害で認定された「半年間で取れた休日は5日」という事実も確認できない。
作業日報に改ざん指示はあったのか?
この勤務記録の食い違いについて、田代さんの元同僚は「労働基準法に触れるということで、週40時間以内で作業日報を書くように指示されていた」と証言。これに対し、鶴田元課長は陳述書で「週40時間以内で勤務するよう伝えたことはあっても、作業日報を改ざんするよう指示したことなどない」と否定している。
7月7日の証人尋問では、作業日報の改ざん指示があったのか否かが、大きな争点の一つになる。同日は田代さんの元同僚も証人として出廷する予定で、改ざんを指示された際の状況を具体的かつ詳細に証言するとみられる。

荒木町長、和解案に納得せず訴訟を継続
田代さんが亡くなってから7年。関係者の記憶が薄れるなかで行われる証人尋問だが、同基金が田代さんの過労死を認定したことは、揺るぎない事実だ。基金は元同僚の証言を認めて公務災害と判断しており、その認定事実を覆すのは極めて難しいだろう。
そもそもだが、この訴訟で鹿児島地裁は町に一定の管理責任があったことを認めて、町が解決金4000万円を支払う和解案を提案していた。それに同町の荒木耕治町長が納得せず、判決を求めて裁判を続けている格好で、本来であれば、この証人尋問は必要なかったのだ。
その意味で、今回の証人尋問は遺族にとって重い負担になるが、一方では、田代さんが過労死した責任の所在をより明確にできる。そして、判決が言い渡された暁には、今度こそ過労死の認定事実を受け入れて、荒木町長には再発防止策を講じてもらいたい。
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