屋久島町役場は「林業振興のフラッグシップとして役割を十分に果たしている」【寺田久志町議 一般質問】
観光産業と林業が相乗効果を生みだす仕組みづくりに取り組んでいく
チップ材等の島内での地域内循環を構築して収益化を目指す
分収造林は問題が山積、森林環境譲与税を財源に持続可能な森林管理の実現につなげる

屋久島町議会の寺田久志町議は9月17日の定例会で、「林業・製材業の活性化」「国と町による分収造林」について一般質問をした。
寺田町議の質問に対する岩川茂隆副町長らの主な答弁は次のとおり。
1 林業・製材業の活性化について
寺田町議 令和元年(2019年)に完成した新庁舎の建設にあたっては、「林業の活性化」が一つの柱としてあげられている。約8年が経過したが、この間どのような成果があったか?
岩川副町長 令和元年(2019年)に完成した新庁舎は屋久島の地杉をふんだんに使用し、地元の大工、工務店が施工できる汎用的な工法を採用することで、地域内経済循環のモデルを示すことができたと思っている。
完成から7年間の成果の第一は、地場産材のブランド化だ。内外装材・屋久板の島内加工体制が構築され、島外の建築物でも多数採用されるなど、持続可能な活用スキームが定着した。また、屋久板の加工の際に生じる削りかすを使った枕の開発。おがくずについては、畜産の敷材としての活用、またたい肥の原材料として活用するなど、利用できるものを活用している。
第二に、新庁舎が内閣総理大臣賞を受賞するなど全国的に高く評価され、町民や来訪者に地杉の魅力を直接体感していただいたことだ。先日、庁舎内を見学する方向けにホームページの説明が見られるQRコードも設置したので、ぜひ時間があればご確認いただきたいと思う。
屋久島地杉を使ってもらうには、まず島地杉の良さを知ってもらうことが重要だと考えており、本庁舎は本町林業振興のフラッグシップとしての役割を十分に果たしていると評価しているところだ。

寺田町議 山元(森林所有者)の個人所有者にとって、実際この8年間にどのようなこの効果があったのかを示してほしい。
松田賢一・産業振興課長 屋久板単体での流通量だけを見れば決して膨大な量が出ているわけではないが、しかしながら、新庁舎というシンボルを通じて、屋久島の地杉の魅力を広く発信され、島外の建築物などで実際に使っていただく機会が増えたことは、極めて重要な成果だと思っている。
この知名度の向上によって、地杉全体の需要が高まり、結果として島内における原木の持続的な取引、価格の下支えにつながり、森林所有者の皆様への還元が進むものと考えているので、引き続きPRに努めていきたいと思っている。
寺田町議 環境税により速度が増し、更なる成果が期待されているが、物価高騰等により各林業・製材関係者は素材生産量や収入が伸び悩むなか、町として積極的な政策に踏み出すことが必要ではないか。
岩川副町長 昨今の物価高騰は全ての産業に影響を及ぼしているが、公益的な役割を担う林業・製材業も例外ではなく、事業者の経営体力低下により本町の森林整備が停滞することに強い危機感を持っている。森林環境譲与税は、法令上、森林整備およびその促進に関する費用に充てることが定められているため、単なる経費補填ではなく、厳しい環境下でも持続可能な森林管理ができる体制づくりへ活用していきたいと考えている。

寺田町議 新たな取組や政策について、検討していることがあるか。
松田賢一・産業振興課長 脱炭素社会に向けた観光等と林業分野の連携という視点においては、世界自然遺産の島である本町にとって、非常に重要かつ有意義なアプローチであると認識している。観光と連携した具体的な取り組みの方向性として、次の2点が考えられる。
1点目は宿泊施設や観光施設等における島内産材の積極的な活用の推進である。島外からの観光客の皆さまに地杉の豊かな香りやリラックス効果を体感していただくことは、観光地としての付加価値を高めるだけでなく、炭素を固定する木材利用の推進として、脱炭素社会へ直接的に貢献する取り組みになると考えている。
2点目としては、観光客自身が森林の保全や木材利用のサイクルに関わる体験型観光の可能性である。本町の人工林や森林整備の現場をフィールドとして、植樹活動や地元産材を活用した木工体験などを通じて、環境保全に貢献できる仕組みを構築することは、世界自然遺産の島ならではの環境教育や脱炭素の意識啓発につながると思っている。
町としては、こうした観光産業と林業が相乗効果を生みだす仕組みづくり向けて、森林環境贈与税などの財源活用を視野に入れながら、観光事業者や関係機関等との協議を重ね実行に向けて取り組んでいきたいと考えている。
寺田町議 特に未利用材(チップ材)を島内で製品化することで、原木で島外へ輸送するよりもコストの削減につながる。結果、原木の高価買い取りが可能となれば森林所有者の所得向上につながることを目指すことが重要であるが、町の見解は。
岩川副町長 未利用材の活用は海上輸送コストの壁を克服し、森林所有者への適切な利益還元を通じた山林への有機関係を図るため極めて重要な視点であると考えている。本町においてもチップ材等の島外搬送に取り組んでいるが、依然として海上輸送コストが採算面を圧迫しているのが実態である。
早期に収益化を目指すためには、チップ材等の島内での地域内循環を構築していく必要があると考えている。例えば木質バイオマス利用や、化石資源由来プラスチックの代替製品としての利用等が考えられる。これにより、輸送コストの削減分を買い取り価格へ反映させることも検討できるものと考えるが、それぞれ取り組みにあたって課題もあろうかと思うので、関係機関と協議しながら課題を整理し、島内で完結できるサプライチェーン構築に向け研究を進めていきたいと考えている。

2 国と町による分収造林について
寺田町議 国と屋久島町が分収造林契約している、更に町と個人または共有等で分収契約をしている森林の約308ヘクタールが伐期を向かえています。この分収造林について、今後どのように進めていくのか。
岩川副町長 分収造林につきましては、主伐を行うためには種々解決しなければならない問題が山積しているところだ。町では現在、今年度中の完成に向けて「屋久島町森と人との共生ビジョン」の策定を進めている。このビジョンは、屋久島憲章や環境文化村構想に即して共生と循環の理念に基づき、将来にわたる持続可能な森づくりの方向性を示すもので、本町の林業政策を進めていくうえで、重要な転換点となると位置づけている。
このビジョンは国有林をはじめ屋久島全域の森林を対象としたものであり、策定メンバーには林野庁、鹿児島県森林整備公社もメンバーとして参加している。今後はこのビジョンに基づき具体的な施策を進めていく考えであり、分収林についても関係機関と連携しながら今後の道筋を作っていきたいと考えている。
ビジョンの実施に向けては、森林経営管理法に基づく経営管理支援法人などの制度活用も視野に入れながら進めていく。具体的には森林環境譲与税を財源とし、森林所有者の意向確認に重点的に取り組みつつ、契約完了後の森づくりも含めてビジョンが掲げる持続可能な森林管理の実現へとつなげていく所存だ。
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