【視点】福岡県と屋久島町の両議会にみる「住民不在」の議会運営
福岡県議会、事前承認など議会棟での取材規制案を白紙撤回
屋久島町議会、市民メディアの議会取材を拒否して訴訟沙汰に
「報道の自由は報道を続けて守る」

福岡県議会が大きく揺れている。
議会棟で取材する報道機関に対し、前日までに取材をしたい議員に了承を得たうえで、撮影と録音については議会事務局の承認を得ることを求めようとしたからだ。
この動きに対し、在福岡のマスコミ各社は猛反発している。
連日、憲法21条が保障する「報道・取材の自由」を前面に押し出し、「県民の知る権利を侵害する行為」などと報道。その結果、同県議会の蔵内勇夫議長は5月29日、取材規制のルール案を「白紙に戻す」ことを明らかにした。
不都合な事実を取材されたくないとの思惑か?
折しも同議会は、二つの事案で批判にさらされている。
一つは、県職員の互助会が議長らの政治資金パーティー券を組織的に購入していた問題。もう一つは、県議会の海外視察で特定の旅行会社が旅行を手配しているため、費用が高額になっている問題だ。
そのような状況で、こんな取材規制のルールを設けようとすれば、マスコミや県民から批判を受けるのは当然である。不都合な事実を探られないようにするために、なるべく取材を受けたくないという思惑があるのではと、誰もが疑うであろう。

石田尾議長、裁量権を振りかざして議会取材を拒否
振り返って屋久島町議会をみると、これと全く同じことが続いている。
町が水道工事の補助金を国に不正請求した問題について、屋久島ポストが2021年11月に報じると、石田尾茂樹議長は「屋久島ポストは報道ではない」と断じて、議場での撮影と録音を禁止。その後も、屋久島ポストによる議会取材を妨害したのである。
同町議会の傍聴規則では、議長が承認すれば、誰でも議場で撮影と録音ができると定められている。それにもかからず石田尾議長は「議長の裁量権」を振りかざし、日本新聞協会などに所属するマスコミだけに取材を限定すると主張し続けているのだ。

憲法が保障する「報道の自由」なのだが……
福岡県議会と同じく、屋久島町議会の対応は憲法が保障する「知る権利」や「報道・取材の自由」を侵害していることは明らかだ。
そこで、屋久島ポストは「議会取材の自由を守る訴訟」を鹿児島地裁に提起したのだが、なぜか、そのタイミングで暫定的に議会取材が認められた。だが、一転して許可された理由が説明されることはなく、同町議会が再び屋久島ポストの議会取材を禁止する可能性は残されたままである。

「住民に背を向ける」取材制限
福岡県と屋久島町の両議会の対応から言えることは、県民や町民から負託を受けた住民代表であるという自覚が全くないということだ。住民が一人ひとり、議会の様子を詳細に知ることはできない。そこで報道機関が代わって議会に足を運んでいるのだが、その取材活動を制限したら、議会は住民に背を向けているのと同じである。
福岡県議会の場合は、複数のマスコミが一斉に報道したため、取材規制のルール案は白紙撤回された。
それに対し屋久島町議会は、どこもマスコミが報道しないのをいいことに、市民メディアやフリー記者らの取材を拒否する姿勢を崩していない。訴訟でも石田尾議長は、暫定的に取材を許可した理由は「議長判断」とだけ言って、詳しい理由説明を拒否し続けている。

虚偽領収書や町長交際費の高額贈答など、次々と住民訴訟に
そんなことを続けているから、屋久島町は「自浄能力が欠如している」と批判されているのである。
町幹部らがニセの水増し領収書を使った出張旅費不正精算事件は、町議会が不正を調査する百条委員会の設置に反対し続けたため、今でも未解決のままだ。
国庫補助金の不正請求、高額な贈答が続けられた町長交際費問題、寄付金が不適切に使われた海底清掃事業については、町議会が見て見ぬふりを続けたため、いずれも住民訴訟に発展。司法の力に頼らなくては、町の諸問題が解決できない状況に陥っている。
こんな住民不在の町議会を、いつまでも放置しておくわけにはいない。そのためには、どれだけ取材を妨害されても、絶対に諦めないことが大切だ。
報道の自由は、報道を続けることでしか守れない――。
屋久島ポストは、そう信じている。
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