【視点】屋久島観光の将来ビジョン、縄文杉の倒壊に備えて早急に検討を
縄文杉登山、観光客の8割が島訪問の目的に
荒木町長「二代目、三代目の縄文杉が出てくる」
島西部の森、世界的に希な「植生の垂直分布」は真の魅力
屋久島空港の滑走路延伸より喫緊の課題

もしも縄文杉が倒れたら、その後の屋久島観光のあり方はどうするのか?
3月10日にあった記者会見で問われた屋久島町の荒木耕治町長は、質問に立った記者を一蹴した。
「私は全然そうは思っていない。二代目、三代目の縄文杉が出てくると思っている」
詳しく聞くと、荒木町長が20年数年前に山を歩いた経験から、屋久島の森には縄文杉に匹敵する巨木が、まだ相当数あるとのこと。なかには縄文杉より立派だと思うようなものもあり、どれも実に生き生きとしているという。ただ、それらの巨木は明確なルートがない足場の悪い場所にあるため、観光客が訪れていないそうだ。
一方、縄文杉へのルートはしっかり整備されており、大勢の観光客が訪れているのだという。さらには、旅行会社やマスコミがシンボルとして祭り上げたため、屋久島観光の象徴になっているとの見方を示した。

あす突然に倒れるかもしれない縄文杉
そうであれば、二代目、三代目の巨木に通じるルートを整備して、いつ訪れるかわからない、縄文杉が倒壊する日に備えなくてはならない。2024年8月の台風では、あの美しい弥生杉が無残にも倒れたことは記憶に新しい。これは樹齢数千年を生きた屋久杉にとっては、避けることができない定めである。
そして、次々と世代を更新していく森の循環のなかで、それは縄文杉にとっても同じことだ。その日は、遠い将来ではなく、あす突然に訪れるかもしれない。
町長は観光客を「分散」と言うけれど……
だが一方で、荒木町長はこうも言った。
「屋久島には、山や森、川、海がある。縄文杉があったから世界自然遺産になったわけではない」
それを踏まえ、ヤクスギランドや白谷雲水峡、里めぐりツアー、ダイビングなどの例を挙げて、「いろいろなものに(観光客を)分散するように、屋久島はやっていかなければいけない」と語った。
ただ、そうは言っても、屋久島を訪れる観光客にとって、縄文杉の人気は絶大だ。
10年前に策定された第1次屋久島町観光基本計画を見ると、20~50代の観光客の約8割が、観光の目的を「縄文杉等への登山」と答えている。その傾向はいま現在も続いており、屋久島の魅力を紹介するガイドブックや広告、ポスターなどには、必ず縄文杉の雄姿がメイン写真として掲載されている。

縄文杉が倒れてからでは遅すぎる
そうなると、縄文杉なきあとの屋久島観光のあり方を真剣に協議することは、喫緊の課題だといえる。
荒木町長が会見で指摘した白谷雲水峡やダイビングなどへの「分散」は、すでにこれまで続けてきたもので、それ自体が縄文杉に代わる存在になるとは思えない。何か抜本的な対策を立て、屋久島観光の未来図を描かなければ、「観光立島」を掲げる屋久島町の行く末は危ういものになる。
町長が言う「二代目、三代目の縄文杉」をどう紹介するのか?
まずは荒木町長が言う「二代目、三代目の縄文杉」があるのなら、その存在を明らかにして、登山ルートの整備や見学の方法などを早急に検討するべきだ。新たな巨木の場所が知られると、それを目当てに登山客が殺到するという心配もあるが、それは町長が林野庁や環境省、鹿児島県などと入念に協議することで防げるはずだ。
西部の森が新たな屋久島観光の魅力に
さらには、世界自然遺産・屋久島の真の魅力ともいえる西部林道地域の森をうまく活かすことも重要である。島のなかでは、標高2000メートルからゼロメートルにかけて、伐採などで痛めつけられていない、手つかずの森が残されているのはここだけだ。
だが、西部の森を屋久島訪問の主目的に挙げる観光客はほとんどいない。この世界的にも希な存在である「植生の垂直分布」の価値を広く知ってもらうことで、これまでの屋久島観光に新たな魅力が生まれることは明らかである。

新空港に降り立つのは「閑古鳥」だけかも
かねがね荒木町長は、屋久島空港の滑走路延伸を一日も早く実現し、東京・羽田空港から直行便を誘致したいと訴えて、それを選挙公約にも掲げてきた。東京からジェット機が飛べば、いま現在より島を訪れる観光客は増えるかもしれない。
しかし、新たな空港が完成するのは、これから10年以上も先のことだ。もし、それまでの間に大きな台風にでも襲われて、2年前の弥生杉のように縄文杉が倒壊してしまったら、どうするのか。屋久島は観光の目玉を失い、立派な新空港に降り立つのは東京からのジェット機ではなく、「閑古鳥」だけになってしまわないか。

そんな心配を抱えながら、2026年度から第2次屋久島町観光基本計画が動き出す。
これを機に、荒木町長には屋久島町のトップとして、将来の観光ビジョンを明確に示してもらい、即座に実行してもらうことを期待する。
■屋久島観光への提言や意見
屋久島観光の将来的なビジョンについて、読者からのご提言やご意見をお待ちしています。記事としてご紹介するともに、荒木耕治町長ら町幹部に伝えさせていただきます。以下URLのフォームから投稿をお願いいたします。
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