ビデオ映像が証明する議長陳述の「嘘」【議会取材の自由を守る訴訟】
屋久島町議会議長、補助金不正事件の「重大性」を理由に取材許可と陳述
実際は「報道機関ではない」と断じて屋久島ポストを排除
「議長の好き勝手で取材の可否は決めさせない」
※屋久島ポストは訴訟の当事者であるため、主観を入れた取材記の体裁にしています。

屋久島町議会(石田尾茂樹議長)が市民メディア「屋久島ポスト」(共同代表・鹿島幹男、武田剛)の議会取材を拒否したのは、「表現の自由」などを保障した憲法に違反しているとして、屋久島ポストが町を相手取って提起した「1円訴訟」――。
この裁判に提出した陳述書で石田尾議長は、国庫補助金不正請求事件の問題が初めて報告された2021年11月26日の町議会全員協議会で、屋久島ポストの取材を「特例」で許可したことについて、次のように説明しています。
<屋久島町の行政を大きく揺るがすことになる口永良部島の口永良部地区簡易水道施設整備事業に関する国・県への補助金返還問題が初めて議会に報告されることが上げられていたことから、この問題の重大性を考えて、武田さんらにも撮影を許可したものであり、通常の扱いとは全く異なる例外的な扱いをしたものでした>

屋久島ポスト、石田尾陳述は「嘘」と反論へ
しかし、この陳述は「すべて嘘である」と、私たちは反論するつもりです。
会議当日、屋久島ポストは開会の30分前に取材禁止を告げられ、その後に議長室で石田尾議長に抗議しました。その際に撮影した17分24秒のビデオ映像をじっくり見ると、議長は屋久島ポストを「報道とは認められない」と言い張り、私たちの取材を拒否し続けています。その間に「この問題の重大性」を口にしたことはなく、「報道機関ではない」という理由だけで、私たちを議場から締め出そうとしました。
やや長くなりますが、石田尾議長の陳述書が「嘘」であることを証明するために、その当時に交わした主なやり取りを以下で振り返ってみます。
石田尾議長「県庁記者クラブに加盟しているのか?」
議長:(屋久島ポストは)県庁記者クラブ、放送協会、新聞協会(に加盟したり)、法人登録をしているのか?
武田:多くの方々が(屋久島ポストの記事を)読んでいるなかで、それを規制してしまうと、(開かれた議会にするという)時代の流れに逆行することになる。
議長:メディアとして、きちっと(県庁記者クラブなどに)加入しているものを、今の時点では「報道」と捉えている。
武田:石田尾さんが議長として、町民の知る権利を阻害したことになる。
議長:知る権利が阻害されたわけではない。

屋久島ポスト「知る権利を規制するには根拠が必要」
武田:議長が認めなければ、多くの町民が知ることができなくなる。報道機関として認めないと言っているが、フリーランスでも伝える仕事をしていて、(記者クラブに)加盟してない人もいる。憲法21条を超えて、知る権利を阻害することはできない。
議長:憲法21条は知っている。十分理解している。
武田:それを規制するには根拠が必要になる。
議長:今日の時点で報道として取り扱えない。
武田:どうして、それを議長が決められるのか。石田尾さんが「うん」と言えば、多くの町民が知れるのに、それを「だめだ」という理由がないと言っている。
議長:私としては、今日の時点で報道としての判断ができない。
武田:(私たちは)報道はちゃんとしているし、間違ったことは一つも書いていない。
議長:議長の判断に委ねられている。そのなかで言っている。
武田:それ(議長判断)をお願いしている。
議長:それは今後検討する。

「住民による住民のための報道」
ここまで9分40秒ですが、石田尾議長は補助金不正請求事件については、何も言及していません。言っていることは、二つだけです。
・県庁記者クラブなどに加盟していなければ、報道とは認めない。
・取材を許可するかどうかは、議長の判断に委ねられている。
そして、押し問答が延々と続くなかで、屋久島ポストを立ち上げた理由について、鹿島共同代表が強く訴えました。
鹿島:これは普通のマスコミだったら、(記事が)出ない。小さな地方自治体(の話)なので。だから、我々は住民による住民のための報道を、地域メディアを立ち上げてやっている。
武田:(議長が)知る機会を奪っていることがわからないのか?
議長:いやいや、一切私が奪っているとは思っていない。
武田:議長の判断だから、町民の知る権利をよろしくとお願いしている。
議長:すみません、ちょっと時間がないので。
武田:だから、取材しますよ。
議長:いえいえ、許可していない。
武田:知る権利だ。皆さん(記事を)すごく見ている。議長が「うん」と言えば済む話だ。
議長:今まで議会は、報道機関しか(取材を)認めてない。

補助金不正の「重要性」に触れないまま取材許可
これで15分35秒になりますが、やはり石田尾議長はこの事件の重要性について、何も言っていません。憲法21条が保障する知る権利を主張する私たちに対し、議会取材は「報道機関にしか認めない」と言い張っているだけです。
やがて、私たちとのやり取りに根負けしたのか、石田尾議長は15分40秒でやっと取材を認めました。
議長:なら、はっきり言います。今日は許可しましょう。
武田:わかりました。ありがとうございます。
その後、ビデオ映像の最後となる17分24秒までの1分44秒間、私たちは議会取材のルールを見直してほしいと訴え、フリーランスの記者も含めて、広く取材を認めるように求めました。それに対し石田尾議長は、ルールづくりは約束したものの、今回の取材はあくまでも「特例」であることを強調。その一方、補助金不正請求事件の重要性については、何も触れることはありませんでした。
そして、5分ほど遅れて開会した全員協議会の冒頭で、石田尾議長はこう発言しました。
議長:(取材を)よしとするのか、しないのかという議論をして、今回は許可することにした。傍聴規定の中の動画、録音、カメラ、そういうものについては、今後しっかり詳細なものを決めて、やっていくことにしたいと考えている。(屋久島ポストは)「知る権利を奪う」ということを言っているが、そういうことではない。

辻褄が合わない「後付け」の陳述
やはり、ここでも補助金不正請求事件の重要性について、石田尾議長が説明することはありませんでした。
それにもかかわらず、なぜ議長は裁判所に提出した陳述書で、「この問題の重大性を考えて、武田さんらにも撮影を許可した」と書いているのか?
ここからは今後の裁判で主張していくことになりますが、石田尾議長の陳述内容は、単なる「後付け」の説明でしかないのです。この全員協議会を最後に、私たちは約3年半にわたって議会取材から締め出されることになりますが、もし本当に事件の重要性を認識していれば、議長はその後も私たちの取材を認めたはずです。
いや、そうでなければ、話の辻褄が合いません。

一貫性がない石田尾議長の判断
2025年6月以降、それまで頑なに禁止されてきた屋久島ポストの議会取材は、一転して許可されています。議会取材に関するルールづくりは何もなされていないのに、なぜか対応が180度変わっていまいました。それも、石田尾議長の一存だけで。
これら一連の経緯を振り返ってわかるのは、石田尾議長の判断には一貫性がないということです。もっと踏み込んで言えば、その時々で、議長が恣意的に取材の可否を判断しているのです。
これ以上、石田尾議長の好き勝手で、町民の知る権利が侵害されては困ります。次回の裁判期日は9月9日なので、それまでに「議長の嘘」を立証する反論書を提出するつもりです。
※「屋久島ポスト」は訴訟の当事者であるため、この【議会取材の自由を守る訴訟】については、記事の文体を「です、ます調」にしたうえで、主観を入れた体験取材記の体裁にしています。
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