屋久島町議会の取材禁止は議長裁量権の濫用で憲法違反【最終主張・上】

y@kushima-post-administrator@

石田尾議長「鹿児島県庁記者クラブの未加盟」だけを理由に取材を禁止

町議会とは全く関係ない県議会のルールを流用した「悪弊」

合理的な理由なき差別は憲法14条「法の下の平等」に反する

【議会取材の自由を守る訴訟】

※屋久島ポストは訴訟の当事者であるため、主観を入れた取材記の体裁にしています。

【左】取材拒否の理由を問う町議の発言を制止する石田尾茂樹議長=2021年12月7日【中】石田尾議長を撮影する屋久島ポストのビデオカメラ。この日の議会から取材が許可された=2025年6月20日【右】取材禁止を告げる石田尾議長=2021年11月26日、いずれも屋久島ポスト撮影

屋久島町議会(石田尾茂樹議長)が市民メディア「屋久島ポスト」(共同代表・鹿島幹男、武田剛)の議会取材を拒否したのは、「法の下の平等」や「表現の自由」などを保障した憲法に違反しているとして、屋久島ポストが町を相手取って提起した「1円訴訟」――。

この訴訟の最終弁論が10月28日にウェブ会議で開かれるのを前に、屋久島ポストはこれまでの町側の主張を精査し、鹿児島地裁に準備書面を提出しました。書面では、憲法が保障する「法の下の平等」(14条)と「表現の自由」および「報道の自由」(21条)の趣旨を踏まえたうえで、改めて私たちの議会取材を禁止した石田尾議長の判断は憲法違反であり、議長による裁量権の濫用であると主張しました。

強大な議長裁量権、議会取材の禁止はマスコミも例外ではない

2025年5月に提訴してから1年5カ月。本来であれば議会との話し合いで解決したかった問題ですが、石田尾議長が裁量権を振りかざして応じないため、私たちはやむなく提訴することになりました。そして、議長の裁量による取材禁止は、全国どこの地方議会でも起き得る問題であり、それは新聞やテレビなどのマスコミも例外ではありません。

つまり、それほど地方議会における議長の裁量権が大きいということです。さらには、マスコミの報道機関であっても、議長のひと声で議会から締め出され、それまで「当然の権利」だと思っていた取材ができなくなる恐れがあるのです。

その意味で、私たちの訴訟は市民メディアやフリー記者だけでなく、マスコミも含めたすべての報道機関と取材者にかかわる訴訟だと考えています。そして、全国の地方議会が住民に開かれたものになることを期待し、新たな時代にあった判例をつくりたいと願っています。

屋久島町議会=2026年6月、屋久島ポスト撮影

長い引用になりますが、私たちの最終の主張について、上中下の3回に分けて紹介させていただきます。以下はその1回目です。

*

第1 憲法14条「法の下の平等」違反について

1 取材の禁止及び許可の不可分性

憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定し、合理的な理由がある場合を除き、不合理な差別は許されないとされている。

これに本件を照らすと、石田尾茂樹議長が約3年半にわたり屋久島ポストの議会取材(撮影と録音)を禁止したこと及び、その後に一転して取材を許可した判断に、それぞれ合理的な理由があったのか否かが問題となる。

一転して取材を許可した判断については、屋久島ポストの権利を認めていることから、他者と比べて「差別」したことにはならない。しかしながら、その直前まで取材禁止を継続する判断をしていたことを踏まえると、一連にわたる取材可否の判断の合理性を検討するうえで、「禁止」と「許可」の両者は不可分の関係にあるといえる。

よって、この準備書面では、石田尾議長による取材禁止及び取材許可の双方について、それらの判断に合理性があったのか否かを検討する。

議会取材から締め出され、屋久島町役場に設置された議会中継用のモニター画面を撮影する屋久島ポストのビデオカメラ=2021年12月7日、屋久島ポスト撮影

2 県庁記者クラブ加盟社だけに取材を許可する不合理

町は答弁書で、屋久島町議会の取材を許可する判断基準として、「町議会に係る事実を正確かつ公平に報道することができる能力・資質を備えている報道機関といえるかを考慮することになる」と指摘したうえで、鹿児島県庁記者クラブの加盟社であれば、「組織的に事実を正確かつ公平に報道することが出来る能力、資質を備えている報道機関であることが制度的に担保されているとみることに相応の合理性がある。」と主張する。

しかしながら、県庁記者クラブの加盟社でなくても、事実を正確かつ公平に報道できる報道機関やジャーナリスト、映画監督などが数多く存在することは、改めてここで立証する必要がないほど、至極当然のことである。

国内では、池上彰氏や江川紹子氏といった著名なジャーナリスト、映画監督の周防正行氏(代表作『それでもボクはやっていない』など)や森達也氏(代表作『福田村事件』『A』など)らは、県庁記者クラブ加盟社の記者よりも、はるかに優れた取材力を有していると思料されるが、誰一人として県庁記者クラブには加盟していない。

また、海外を見れば、英国の「The Times」や「BBC」、米国の「The New York Times」や「ABC」「NBC」など、卓越した取材力を有する報道機関が数多くあるが、同じくそれらも県庁記者クラブには加盟していない。

よって、石田尾議長が「事実を正確かつ公平に報道」できることを条件にしたうえで、県庁記者クラブ加盟社だけに限定して取材を許可する判断は極めて不合理である。

上記した県庁記者クラブに加盟していないジャーナリストや報道機関などが議会取材の申請をしても、石田尾議長は断ることになるが、その判断に合理的な理由はなく、社会的に容認されないことは明らかである。さらには、その事実が広く報じられれば、石田尾議長及び屋久島町議会は国内外から強い批判を浴び、屋久島町が広く嘲笑の対象になる可能性もある。

それでは、なぜ鹿児島県議会が県庁記者クラブ加盟社に議会取材を限定しているのかを、ここで考えてみたい。

県庁記者クラブ「青潮会」には南日本新聞社やNHKなど14社が加盟し、日常的に県庁3階の県政記者室に記者が出入りしており、県政に関わる様々な問題を取材している。県議会としては、まずはこの14社に議会取材の許可を出すことで議事の内容が報道され、広く県民に伝えられることになる。

また、何か県政に関する突発的な問題が発生し、県外から多くの取材者が訪れても、あらかじめ記者クラブ加盟の14社に限定しておけば、傍聴席に報道陣が殺到するという不測の事態を避けることができるなど、一定の秩序を守ることが担保される。

鹿児島県議会の議場=同県議会ウェブサイトより

それに対し、屋久島町議会が置かれた状況は県議会とは大きく異なり、特に報道をめぐる環境は全くの別物であるといえる。

まず、同町役場には青潮会に相当する記者クラブは存在せず、日常的に町政を取材するマスコミの記者は存在しない。町内には南日本新聞の屋久島支局もないため、町議会の様子が新聞やテレビで報道されることは皆無に等しい状況にある。

それにもかかわらず、議会取材の許可を県庁記者クラブの加盟社だけに限定すれば、実質的に同町議会はどこの報道機関からも取材を受けることがなく、町議会で審議されている内容が1万1000人の町民に知られることはなくなる。

民主的な社会を守っていくうえで、報道による情報伝達は必要不可欠であるところ、石田尾議長の判断はそれを侵害するものであり、結果的に町議会の審議内容について、あえて町民に伝えないようにしていると言っても過言ではない状況であるといえる。

つまり、石田尾議長が取材可否の判断基準としている「県庁記者クラブ加盟社」は、同町議会には全く当てはまらない見当違いのものであり、極めて不合理な条件であるといえる。さらに言えば、国会を筆頭にして、各都道府県議会及び各市区町村議会がそれぞれの事情や状況に合わせて設定すべき取材に関する基準づくりを怠り、屋久島町議会とは事情や状況が全く違う鹿児島県議会のルールを安易に流用した「悪弊」であることは明らかである。

よって、石田尾議長が2021年12月7日から約3年半にわたり、屋久島ポストの議会取材を禁止した判断には合理的な理由はなく、憲法14条1項が保障する「法の下の平等」に違反したものである。

3 一転して議会取材を許可した不合理

石田尾議長は2021年12月7日に町議会12月定例会が開かれて以降、約3年半にわたって屋久島ポストの議会取材を禁止し続けた。その理由について町は、屋久島ポストが鹿児島県庁記者クラブに加盟しておらず、「事実を正確かつ公平に報道することが出来る能力、資質」を備えているか、どうかが判断できないことを挙げた。

ところが、石田尾議長は2025年4月18日に屋久島ポストに書面を送り、それまで禁止してきた議会取材を一転して許可する旨を伝えた。これに対し、屋久島ポストは一転して許可する理由を尋ねたが、石田尾議長は「傍聴席からの撮影・録音等については、屋久島町議会傍聴規則第9条の規定により、議長の許可要件であることから、この規定により不許可及び許可の決定を行っております。」とだけ答え、具体的な説明をしなかった。

屋久島ポストとしては、この段階で石田尾議長から具体的な説明がなされ、納得できる一定の内容であれば、この訴訟を提起することはなかった。しかしながら、屋久島ポストが何度催促しても、石田尾議長から具体的な説明が得られず、そのままでは今後も議長の恣意的な判断で議会取材の可否が決められる可能性があると考え、やむなく訴訟を提起するに至った。

その後、この訴訟で屋久島ポストは禁止から許可に転じた理由の説明を求めてきたが、町は「議長の裁量権」や「説明する義務がない」ことを理由に、具体的な説明を拒み続けた。これに対し、屋久島ポストが石田尾議長の証人申請をしたところ、町は石田尾議長の陳述書を提出し、一転して許可した理由について、次の3点を挙げた。

・町民以外の全国民が議会の様子をYou Tubeで無料で見ることができるようになった。

・過去7年間に屋久島ポスト共同代表の武田と議会の間で新たな問題が発生していない。

・屋久島ポストが安定的に運営されている。

先述したとおり、石田尾議長は議会取材を禁止する理由について、屋久島ポストが県庁記者クラブに加盟していないことを挙げ、その条件だけを理由に屋久島ポストの議会取材を約3年半にわたって禁止した。そして、その後に一転して許可した理由が上記3点だと説明されても、それをもって、当初の理由であった「県庁記者クラブ加盟社」という条件をクリアしたことにはならない。屋久島ポストは依然として県庁記者クラブには加盟しておらず、当初に石田尾議長が示した許可条件に当てはめれば、屋久島ポストの議会取材が認められないことは明らかである。

また、町は準備書面で、屋久島ポストの議会取材を禁止する「議長の裁量権」を行使するにあたり、「①これまでの慣行に従い、県庁記者クラブ会員に包括的な許可を与える」「②自ら個々具体的に『議会の内容を公平公正かつ正確に伝えられる能力や経験があるかどうか』を判断する」という二つの選択肢のうち、「①を選択したに過ぎないものであり、この選択に裁量権の逸脱はないといえる」と主張する。

つまり、この主張は、屋久島ポストが「県庁記者クラブ会員」ではないことのみを理由にして、石田尾議長が議会取材を禁止したということに他ならない。そうなると、今現在でも屋久島ポストが「県庁記者クラブ会員」になった事実はないため、石田尾議長には議会取材を許可する理由は一切ないといえる。

それにもかかわらず、屋久島ポストは上記3点を理由にして、一転して議会取材を許可されていることから、町及び石田尾議長の主張は大きく矛盾したものとなっている。すなわち、上記3点を理由に屋久島ポストの議会取材が認められるということは、約3年半にわたる議会取材禁止の理由とされた「県庁記者クラブに加盟していない」という条件は、そもそも議会取材の禁止理由として成立しないことになる。さらに言えば、屋久島ポストの取材を禁止する理由は、そもそも当初から存在しなかったということにもなる。

よって、石田尾議長が2021年12月7日から約3年半にわたり、屋久島ポストの議会取材を禁止した判断には合理的な理由はなく、憲法14条1項が保障する「法の下の平等」に違反したものである。

屋久島町議会の議事を進める石田尾茂樹議長を撮影する屋久島ポストのビデオカメラ。この日の議会から、屋久島ポストの取材が許可された=2025年6月20日、屋久島町議会

4 過去の判例に照らしても不合理

町は準備書面で、議会取材(撮影と録音)が県庁クラブなどの加盟社に限定される運用は、「福岡高裁那覇支部令和3年1月21日判決(判例時報2536号66頁)でも認められている」と主張する。

これに対し、屋久島ポストは準備書面で、この判例は議会取材を県庁記者クラブなどの加盟社に限定することの合理性を認めたものではなく、被告である沖縄県議会の議長が、原告である映画会社の取材を認めなかった個別の判断理由について、その合理性を認めたものであると反論した。その詳細はすでに準備書面で主張しているが、ここでは屋久島ポストの反論理由を簡潔に述べたい。

福岡高裁那覇支部の判決文を精読すると、同県議会の議長が映画会社の議会取材を認めなかった理由として、次の3点について、その合理性を認めていることがわかる。

・映画会社は典型的な報道機関ではないため、取材申請から4日間で、会議に関わる事実を正確かつ公平に報道する能力と資質があると判断するのは極めて困難だった。

・映画会社が取材を希望した本会議では、激しい意見対立がある辺野古新基地建設に関する議案を審議するため、傍聴人による不適切な撮影行為によって議事進行に弊害が出る可能性があった。

・前例がない映画会社の取材申請を認めれば、その後に同様の申請が増えて、ニュース報道を目的とする報道機関の取材が阻害される可能性がある。

上記の3点からわかるとおり、同支部の判決は、ただ単に議会取材を県庁記者クラブなどの加盟社に限定する運用に対して、その合理性を認めたものではない。映画会社の議会取材の可否を判断する時間的な余裕がなかったことや、世論の対立がある議案を審議した状況などを踏まえ、議長が取材を不許可としたことに合理性を認めたものであり、この判決によって、県庁記者クラブ加盟社だけに取材を限定する運用が「合憲」であると判示されたわけではない。

沖縄県議会=Wikimedia Commons より

その一方、屋久島町議会の石田尾議長は、屋久島ポストの議会取材の可否を決めるにあたり、県庁記者クラブの加盟社であるか否かだけで判断している。その過程で、屋久島ポストが事実を正確かつ公平に報道する能力と資質があるかどうかは一切考慮されず、「県庁記者クラブ加盟社」という社会的な立場だけを条件にして、屋久島ポストの議会取材を禁止したのである。

先述したとおり、憲法14条1項は「社会的身分」や「社会的関係」などによる差別を禁止しており、合理的な理由がある場合を除き、不合理な差別は許されないと規定している。

これに石田尾議長の判断を照らすと、屋久島ポストは屋久島町議会とは何の関係性もない鹿児島県議会のルールを一方的に流用され、「県庁記者クラブ加盟社」という「社会的な立場」だけを条件にされ、議会で取材する権利を奪われたことになる。これはすなわち、憲法14条1項が保障する「法の下の平等」に反する判断であり、合理的な理由のない不合理な差別であることは明らかである。

5 石田尾議長の判断は「法の下に平等」に反し違憲

上記1~4で示した客観的な事実を踏まえると、屋久島ポストが議会取材を禁止される合理的な理由はどこにもなく、ただ単に「県庁記者クラブ加盟社」ではないという理由だけをもって、議場で取材する権利を奪われたことになる。これは町議会の運営を任された石田尾議長の裁量権の範囲を大きく逸脱し、その権利を濫用したものに他ならない。

もし仮に、このように不合理な判断が認められるならば、同町議会では「議長の裁量権」という極めて抽象的な理由を示すだけで、屋久島ポスト共同代表の2人も含めた一般住民の権利を自由に左右できることになる。さらには、議長の恣意的な判断を許す温床にもなることから、この訴訟で石田尾議長が主張する「議長の裁量権」を認めることは到底できない。

よって、石田尾議長が屋久島ポストの議会取材を禁止した判断は、憲法14条1項が保障する「法の下の平等」を侵害する不合理な差別であり、このような悪弊を同町議会に残すことは、屋久島町を民主的な社会にするうえで、大きな弊害になることは明らかである。

※「屋久島ポスト」は訴訟の当事者であるため、この【議会取材の自由を守る訴訟】については、記事の文体を「です、ます調」にしたうえで、主観を入れた体験取材記の体裁にしています。

■屋久島町政への提言と意見
屋久島町政について、読者からのご提言やご意見をお待ちしています。以下URLのフォームから投稿をお願いいたします。
https://forms.gle/4jwVGJ144BYUYESYA

関連記事
これらの記事も読まれています
記事URLをコピーしました