屋久島町政

【視点】物価高騰「Payどん」支援、ハードル高く屋久島町民の暮らしは置き去り

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スマホ、アプリ、銀行口座、ポイント獲得競争……

数多くのハードルで恩恵は全町民の1割未満

予算6000万円、恩恵をフルに受けるのは鹿児島銀行など4銀行

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【手前】鹿児島銀行の「Payどん」アプリを利用した屋久島町プレミアムポイントの案内チラシ【背景】屋久島町役場

いったいどこを向き、誰のために支援しているのか?

物価高騰に苦しむ町民を助けるというふれこみで、屋久島町が国の「重点支援地方交付金」を活用して始めた支援事業を取材していると、そんな疑問がわいてくる。町内の商店などで使えるプレミアム付き「地域振興ポイント」(1万円につき4000円)を購入するには、鹿児島銀行のキャッシュレス決済サービス「Payどん」を利用する必要がある。ところが、その恩恵を受けるまでに屋久島町民は、数多くの「ハードル」を越えなくてはいけないのだ。

初めの入口ではじかれる高齢者と子ども

第1のハードルは、必ず1人1台ずつスマートフォンを持つこと。

ポイントを購入するにはPayどんアプリを利用する必要があり、当然だが「ガラケー」と呼ばれる従来型携帯電話を使っている人や、そもそも携帯電話を持っていない人はポイントを買うことができない。スマートフォンを持っていない、または携帯電話を契約していない高齢者や子どもは多く、まず初めの入口でふるいにかけられ、多くの町民がはじかれてしまうのだ。

鹿児島銀行のキャッシュレス決済サービス「Payどん」のウェブサイト画面

手間で煩雑なPayどんアプリ

第2のハードルは、Payどんアプリをスマートフォンに入れ、利用登録するまでの手間と煩雑さ。

手順としては、まずは「App Store」または「Google Play」からスマートフォンにアプリを入れる。次にメールアドレスや電話番号を登録してアカウントを作成。さらにマイナンバーカード、または運転免許証で本人確認をする。これも当然だが、すべてネット上での手続きになるので、スマートフォンを持っていても、高齢者やデジタルに疎い人は断念するケースが多くなる。

「Payどん」の登録方法を紹介するウェブサイト画面

ゆうちょ銀行やJAバンクの利用者は脱落

第3のハードルは、鹿児島銀行や南日本銀行など4銀行に口座を持っていること。

Payどんアプリの登録手続きを進めて、やっと本人確認まで辿り着いたと思ったら、その先に最後の関門がやってくる。アプリに自分が使う銀行口座の登録を求められるのだが、それが鹿児島銀行、南日本銀行、鹿児島相互信用金庫、鹿児島信用金庫の4銀行だけに限られるのだ。町内では、日本郵便のゆうちょ銀行や農協のJAバンクを利用している人も多い。鹿児島銀行や南日本銀行など4銀行に口座がない人は、この段階で脱落することになる。

「Payどん」が利用できる銀行を紹介するウェブサイト画面

「早い者勝ち」で上限6000万円分のポイントをめざす

第4のハードルは、いち早くポイントを購入するための競争。

今回の支援事業の予算は6000万円で、販売額の合計が上限に達すると、その段階でポイントが買えなくなる。そうなると「早い者勝ち」になるので、支援を受けたい人は我先へと急ぎ、必死にスマートフォンを操作しなくてはならない。これもそうだが、高齢者や子ども、そしてデジタルに疎い人は、やっとここまで来ても、この競争を勝ち抜くのは難しくなる。

地域振興ポイントの購入方法を紹介するチラシの一部

町外在住者と少ないパイを奪い合い

そして第5のハードルは、ポイントの「購入競争」に参入してくる町外の居住者だ。

これは意外だったが、屋久島町が町民のために付与するポイントなのに、町外に住んでいる人でも買えるというのだ。そうなると、たださえ上限6000万円の予算なのに、その少ないパイを町外居住者と奪い合うことになるのだ。

全町民の9割近くは「蚊帳の外」

これだけの多くのハードルがあると、どれほどの町民がポイントの恩恵にあずかれるのか?

まずは町内におけるPayどんの利用者数をみると、わずか約1600人に留まっている。2月末現在の町の人口は約1万1100人なので、そもそもの段階で、全町民の9割近くが「蚊帳の外」に置かれている。

鹿児島市や姶良市、東京都の住民もポイント購入

次にポイント獲得の競争に勝ち残れる町民は、どれくらいいるのか?

前回2022年度にPayどんを使って実施した支援事業では、計5500万円分のポイントを購入できたのは836人で、全町民1万2000人(当時)の1割に満たなかった。さらにポイントを買えた836人のうち、約1割の83人は鹿児島市や姶良市、西之表市などの住民で、なかには東京都内の在住者も3人いた。

屋久島町役場

数多くのハードルで町民に支援届かず

ここまで取材してわかるのは、今回の支援事業では、屋久島町で暮らす住民の大半が置き去りにされているということだ。

まずは最初の段階で、Payどんの高いハードルを設けて、全町民の9割近くとなる約9400人をはじいている。そして、なんとかPayどんを利用しようとしても、その先にはアプリを入れる手間や煩雑さや、銀行口座によって制限された条件などで、多くの町民が脱落する。さらには、予算の上限額をめざしたポイント獲得競争に巻き込まれ、そこには町外から強いライバルも現れる。

これだけ多くのハードルがあると、ほとんどの町民が支援を受けられないことは明らかである。

町、鹿児島銀行などの要望でPayどんを採用

それでは、なぜ屋久島町はそれでもPayどんを使って支援事業をするのか?

荒木耕治町長ら町幹部の説明よると、屋久島町商工会や屋久島観光協会、そして鹿児島銀行などが入る経済団体からPayどんの利用を要望され、地域経済の活性化のために採用したという。その結果、今回でいえば予算額の6000万円は町内の商店などで消費され、町の経済が潤うというのだ。

担当課「地域の商店を支援するのが第一」

この事業の主目的について、担当の産業振興課は「地域の商店を支援するのが第一」「キャッシュレス化を図ることが町の方針」と説明するが、そこには町民一人ひとりに対する配慮はどこにもない。ポイントが町内の商店など消費されるといっても、それは加盟店だけに限られ、キャッシュレス化に対応できない小さな商店に恩恵はない。さらには、加盟店になったとしても、決済額の1.5%を手数料として鹿児島銀行などに支払う必要がある。

「Payどん」を利用した支援事業の参加店を募集するチラシ

「物価高騰に苦しむ町民」は助からない

こうなると、今回の予算額である6000万円の恩恵をフルに受けられるのは、Payどんを運営する鹿児島銀行などの金融機関だけではないのか。町内でPayどんの利用者や加盟店が増えるほか、決裁手数料も確実に入り、将来的な普及促進にもつながることになる。

その意味で、この支援事業の実質的な目的は、Payどんを普及させたい鹿児島銀行など4銀行を後押しすることだといえる。そして、そこには「物価高騰に苦しむ町民を助けたい」という屋久島町役場の思いは微塵も感じられない。

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