屋久島の魅力は「つくるのものではなく築くもの」【2026年度施政方針】
人口減少、物流コスト高騰、担い手不足などが一層深刻化
学校給食と屋久島高校通学バスを完全無償化
「物流は地域の生活基盤」フェリーの安定運航を守る
荒木耕治町長 2026年度施政方針説明

屋久島町の荒木耕治町長は3月10日に開会した町議会定例会で施政方針説明を行い、2026(令和8)年度の予算案や主要施策について、町議会14人に明らかにした。
荒木町長が説明した施政方針の内容は次のとおり。
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令和8年第1回定例会の開会にあたり、令和8年度一般会計および特別会計予算案ならび関連議案のご審議をお願いする際に町政運営に臨む所信の一端を申し述べ、議員各位ならびに町民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
世界に誇る自然環境、豊かな文化を次世代に継承
本町は豊かな自然、独自の文化、そして先人が築き守り続けてきた暮らしによってかたちづくられてまいりました。しかしながら現在、人口減少、若者流出、物流コストの高騰、産業の担い手不足など、離島特有の課題は一層深刻化しております。
一方で、屋久島には世界に誇る自然環境、豊かな文化、そして島を支えてきた人々の力が確かに存在しております。本町にはすでに多くの魅力と可能性が備わっており、それらを磨き、つなぎ、次世代へ確実に継承していくことこそ私たちの責務であります。
しばしば「魅力がない」「まず魅力を作らなければならない」との声を耳にします。しかし私は、魅力とはつくるものではなく築くものであると考えております。すでに存在する営みの価値を丁寧に伝えることで、その魅力に惹かれる人は必ずおります。島の魅力を再発見し、地域の活力につなげていく。令和8年度はその挑戦をさらに加速させる1年といたします。

有人国境離島法の改正で「離島の暮らしを支える」
私は町の未来にゆるぎない希望を抱いております。2017年に施行された有人国境離島法は航路・航空路の維持、生活コストの軽減、定住促進など、離島の暮らしを支える大きな柱となってまいりました。しかし燃料費の高騰、物流の不安定化、観光需要の変動、気候変動による災害リスクなど、当初の想定を超える課題が顕在化しております。このため、法の延長のみならず、時代に即した制度改正に対する予算の確保が不可欠であります。私は全国離島振興協議会会長として全国の離島自治体と連携し、国に強く働きかけてまいります。
屋久島高校の存続と魅力向上に「全力で取り組む」
本町では進学・就職時に若年層の流出が顕著であり、国の高校授業料無償化の流れでその潮流が強まることが懸念されます。島内唯一の高校の存続は保護者の経済的負担軽減に留まらず、地域社会の維持、伝統文化の継承、郷土への愛着の醸成に直結する重要な要素であります。このため、屋久島高校の存続と魅力向上に全力で取り組んでまいります。
島全体を学校と捉え、子どもが学びたい、保護者が学ばせたい、教員が赴任したい、地域が支えたいと思える学校づくりを推進し、子どもたちが島で将来を描ける環境を整備してまいります。
また島には仕事がない、給与水準が低いのは仕方がないといった固定観念を払拭してまいります。島で誇りをもって働き、しっかりと収入を得る姿を子どもたちに示すことが、将来島に帰りたいと思える希望につながります。屋久島高校通学バスの無償化、学校給食費の無償化は、保護者負担の軽減と子どもの学びの保障に資する重要な施策であり、引き続き子育て世帯に寄り添った支援を進めてまいります。

観光業と農林水産業の連携で「地域の稼ぐ力を高める」
観光業・農林水産業は本町の基幹産業であります。漁業と観光が連携する漁観連携、農業と観光が連携する農観連携を推進し、地域の稼ぐ力を高めてまいります。利尻島で水耕栽培に挑戦する若者が移住候補地として屋久島を挙げていたように、本町には挑戦者を惹きつける潜在力が備わっております。この魅力を積極的に発信し、移住定住の促進につなげ、住宅不足への対応として耐用年数を超えた町営住宅・教職員住宅の売却や民間賃貸住宅建築への助成など、新たな供給策を検討してまいります。
フェリーと高速船の更新問題は早期の方針決定めざす
フェリー屋久島2の長期運休は、町民生活に大きな影響を及ぼしました。離島におけるフェリーの安定運航がいかに重要であるかを改めて痛感したところであります。物流は地域の生活基盤であり、産業振興の根幹をなすものであります。国に対し、離島航路が持続的に維持される制度の充実化を求めてまいります。
また、フェリー高速船の更新問題については、熊毛地域1市3町兼船舶運航事業者と協議を進め、早期の方針決定を図ってまいります。屋久島空港滑走路延長事業につきましては現地推進本部を中心に、鹿児島県と協働し一日も早い完成を目指し、事業用地の確保に積極的に取り組んでまいります。

住民サービスの基盤となる職員の育成と確保に注力
行政需要が多様化し新たな業務が累積するなかで、行政運営を持続可能なものとするためには、職員一人ひとりの力が不可欠であります。私は職員に対しやりがいを持ち、達成感を得ながら働いてほしいと考えております。働き方改革を推進し生産性を高めつつ、職員が能力を最大限発揮できる職場環境を整備してまいります。コーチング技法の習得等を通じ、指示待ちから自ら考え行動する職員への転換を図り、住民サービスの基盤となる職員の育成と確保に引き続き力を注いでまいります。
デジタル化で行政の仕組みを変えて町の未来を守る
私たちの町は今、大きな転換点に立っています。人口減少、物流の不安定化、地域経済の縮小。これらの課題はもはや従来の延長線では乗り越えられません。時代に合った改革が求められています。行政DX(デジタル・トランスフォーメーション)は単なるデジタル化ではありません。行政の仕組みそのものを変え、町の未来を守るための改革です。
住民サービスは、役場に来なくても受けられる時代へ。内部事務は、紙とハンコに縛られない効率的な体制へ。そして政策は、勘や経験ではなく確かなデータに基づいて判断する時代へ。観光・人流・物流・教育・防災、あらゆる分野でデータを活かし、島の暮らしを支える新しい仕組みを作ります。
私はデジタル技術を冷たいものとは考えていません。むしろ人を支え、地域を守り、未来を拓く力だと確信をしております。高齢者やデジタルに不慣れな方を置き去りにするのではなく、誰もが使える、誰もが恩恵を受けられる改革を進めます。2月に情報担当職員を中心に、若手職員7名で構成するプロジェクトチームを立ち上げ検討を始めているところであり、国の制度を最大限に活用し財源を確保しながら、町の実情に合った行政DXを着実に進めます。

屋久島と口永良部島を守り未来へつなぐ
日本の国土は約38万平方キロでありますが、離島の存在により領海・排他的経済水域を含めると、約447万平方キロに広がります。島を守ることは、国を守ることに等しいものであります。
屋久島と口永良部島を守り未来へつなぐことは、私たちに課せられた重大な責務であります。口永良部島新岳噴火から10年の節目を迎え、5月29日を屋久島町防災の日と定めました。防災・減災・インフラ維持・医療・福祉・教育の確保など、自然と共に生きる島だからこそ備えを怠ることはできません。住民の生命・財産を守り、安心安全な暮らしを実現するため、引き続き取り組んでまいります。

屋久島らしさを大切にした地域経済の活性化
令和8年度は第2次屋久島町観光基本計画、屋久島町地域福祉計画など、新たな計画が始動いたします。町の未来をかたちづくる重要な計画であり、着実に推進してまいります。
屋久島は世界自然遺産という大きな価値を有する一方、自然と共に生きる厳しさも抱えているからこそ、この島には強さがあります。町民の皆様が安心して暮らし続けられるまちづくり、若い世代が働き子育てができる環境づくり、そして屋久島らしさを大切にした地域経済の活性化に全力で取り組んでまいります。
来年度は町政施行20周年「私はこれからも挑戦を続ける」
また、来年度は町制施行20周年を迎える節目の年であります。これまでの取り組みを踏まえ、屋久島町未来デザインを掲げる機会でありますので、屋久島の果たすべく役割を提起できればと考えています。私はこれからも挑戦を続けてまいりますので、今後ともご指導、ご助言を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

続いて、新年度における重点施策の概要について説明申し上げます。
行政管理
行政管理分野では会計年度任用職員を含めた定員管理を適切に行い、人材育成基本方針に基づき、業務遂行能力の向上を目的とした研修を計画的に実施します。
令和7年度にリニューアルしたホームページの運用については、町民の知りたい、欲しい情報を意識して制度を向上させてまいります。
国の方針により取り組んだ標準化基幹業務システムは、本年度から運用が開始されます。安定運用に向けて、関係団体と連携し進めてまいります。
防災・減災
防災・減災事業は、防災の日を旗印に地域参加の裾野を広げ、防災に備える意識向上を図ってまいります。また、安房班の水槽付消防ポンプ自動車および吉田班の消防ポンプ付軽積載車の更新、永久保地区に防火水槽1基の新設を行い、地域の消防力を強化します。
固定資産税賦課業務について、町内一円の全島調査を実施し、公平・適正な課税による自主財源の確保に努めてまいります。
離島割引
有人国境離島法は離島割引制度など、町民の暮らしになくてはならない離島振興策として認知されています。制度延長および支援の幅が広がるよう、予算枠の確保に努めてまいります。
屋久島高校魅力化プロジェクト
屋久島高校への支援として、屋久島高校魅力化プロジェクトを継続しているところですが、令和8年の出願者数は昨年度に比べて増加したものの普通科が38名となり、残念ながら3年連続して募集定員の80名を大きく下回りました。島内唯一の高校が存続されるよう、担うべく役割を果たしたいと考えています。
住宅支援
町内における住宅不足、居住環境の向上を目指し、さらに入居しやすい家賃設定を実現するために、民間主導の賃貸住宅建設に対し一部補助する制度を新たに実施します。
福祉支援
福祉分野では、誰もが住み慣れた場所で自分らしい暮らしができるよう、多様な家族構成に対した支援事業を行ってまいります。社会福祉事業の拠点であり、福祉避難所として機能を維持するため、縄文の苑のエアコン改修を継続して実施します。
シルバー人材センターについては設立準備委員会を設置し、必要経費、事務所の位置、民間事業所との調整、町民への広報など設置に向けた具体的な活動を進めてまいります。
また本年度は障害者計画・障害福祉計画・障害児福祉計画の策定時期であることから、相談支援体制や障害サービスの充実を再検討します。子ども・子育て支援分野では、児童手当や児童扶養手当に加え、子ども医療費や一人親医療費、子ども通院費と助成による医療費等の助成を行い、安心して子育てできる環境を支援します。
また一時預かり、延長保育、さらには放課後児童クラブ等、切れ目のない子育て支援事業を推進します。1カ月検診の費用助成、産前・産後宅配弁当購入費用助成、遠方への分娩施設で出産する際の交通費および宿泊費の助成事業も継続して取り組みます。
健康づくり
健康づくり分野では、生活習慣病の予防、早期発見・早期治療を図り、住民の健康増進に資するため、各種検診への受診喚起を行ってまいります。また町内の医療機関に対し、医療機関物価高騰対策支援金を公布し、医療提供体制の維持を図ってまいります。令和8年度から栗生診療所医師を新たに職員として採用し、口永良部島を含め巡回診療や、救急時に連携した地域医療に取り組みます。
斎場整備
屋久島町斎場については、老朽化と利用件数が増加していることで機器類の不具合が生じていることから空調設備の更新工事を実施し、適切な施設運営に努めてまいります。
ごみ処理施設
新廃棄物処理施設については、運転コストを抑え、法を順守した適切な処理ができるよう、管理事業者との連携を図ります。また旧施設の解体に向けた解体仕様書の作成を行い、さらに未利用であった炭化物の再資源化に取り組みます。
農業振興
農業振興については、昨年度から出荷した屋久島牛や奨励作物の様々な手法でのPR事業に取り組み、地域の魅力を高め、選ばれる農林水産物づくりを目指します。また農業資材物価高騰対策支援と茶工場の補助を実施します。
牧場運営
牧場運営については指定管理による子牛の商品性を高め、高騰する飼料費の削減や、今年度から牛糞のたい肥活用などに取り組み、経営の持続化を目指します。
有害鳥獣対策
有害鳥獣対策として、サル・シカ駆除の継続のほか、ヒヨドリ被害に必要なサンテ、防鳥ネット購入補助を実施いたします。
林業振興
林業振興補助については、森林環境譲与税を活用して苗木生産補助や林道の維持管理費用の一部補助、高性能林業機械等の購入、リース費用の補助を実施をします。また屋久島独自の森林ビジョンを引き続き検討し、森林資源の活用と保護の明確な方針やゾーニングの決定を目指します。
水産業振興
水産業振興については、安房漁港内浄化施設の台車などを新設し、漁船修理が行える環境を整えるとともに、一湊漁港内の給油タンクの更新を行います。
商工業支援
商工業につきましては従来の支援策に加え、働き手不足と働きたい人をマッチングする、デジタル技術を活用した求人・求職マッチングシステムを構築し、雇用の掘り起こしを図ります。創業支援等事業計画に基づき商工会と連携し、創業予定者および創業して3年以内の事業者を対象とした創業軸を開催します。
地域活性化対策
地域活性化対策については、集落の自主的な振興活動と集落の文化継承を支援するため、集落の活力アップ事業を継続して取り組みます。また、希望の多い移住の要望に対し、住宅取得や空き家改修支援、家賃支援を引き続き取り組みます。
ふるさと納税
近年の多くの支援をいただいている屋久島町だいすき基金は寄付額を6億円に目標設定し、魅力的な地場産返礼品の掘り起こしを行うとともに、だいすき基金の活用に適した事業を各課から要望を取りまとめ、地域の活性化につなげます。
エコツーリズム
エコツーリズムの推進については、公認ガイド制度の拡充と特定自然観光資源の指定の検討を続けます。また、ユネスコエコパークとしての経済収益につながるエコ活動を行うとともに、登録地に課せられた定期報告の事務を行います。
脱酸素社会
脱炭素の取り組みとして、屋久島町ゼロカーボンアイランド宣言に基づき、引き続き電気自動車の導入推進を行ってまいります。
観光基本計画
観光分野では、本年度初年度に10年間を計画期間とする第2次屋久島町観光基本計画に関連する各種施策を展開します。また屋久杉自然館のエレベーター改修工事をはじめ、観光施設の適正な管理を行います。
港・道路・住宅の整備
水産業の振興として水産基盤機能保全事業のため、栗生漁港の護岸新設工事を実施します。また社会資本整備総合交付金を活用して、中通り線舗装補修工事、竹山線道路改良工事を引き続き実施をします。さらに橋梁の長寿化を点検業務を行うとともに、一湊海岸線港橋、永田中央線土面橋の補修工事を実施をします。その他、地域から要望のあった道路・農林道の整備を順次実施してまいります。
都市計画見直しについては令和10年度決定を目指し、引き続き都市計画マスタープランおよび立地適正化計画の策定に取り組みます。
町営住宅管理事業では、深川団地の防水塗装および玄関ドア取り換えを順次実施し、調寿命化に取り組みます。
教育支援
教育分野では、特別支援教育支援として11校2施設に25名の支援員を配置し、必要な対応に務めます。スクールバスについては県内でも交通事業者の撤退が見られるなか、本年度からは高校も無償化し、保護者の負担軽減を図ります。
小学校トイレの洋式化、小中学校の校舎のLED化について順次進めてまいります。また、安房中学校体育館の床改修工事を実施いたします。学校給食費の支援については国の小学校無償化方針に合わせ、対象外の補填および対象を中学校まで拡大し、完全無償化といたします。またこの業務に従事する職員29名の継続確保と、配送車1台を更新いたします。さらに、新給食センター建設に向けた整備基本計画を策定をいたします。
社会教育分野では中間公民館の大規模改修に加え、次年度に改修予定している小島観光農林漁業経営管理施設の設計業務を実施します。生涯スポーツを推進するため、体育館・グラウンドなどの維持管理を行い、各種大会等の実施や町民融和の場、町民が楽しみを見つける場づくりに取り組みます。また、宮之浦川橋の映像記録を保存する取り組みを実施をします。
物価高騰対策
物価高騰対策として、これまで提案いたしました施策に加え、新たに水道使用量のうち基本料金を6カ月減免し、物価高騰により影響を受けた町民生活を支援します。
以上、事業実施にあたりましては、引き続きご理解とご協力を賜りますようお願いをいたします。
