「虚言」としか思えない屋久島町議会議長の陳述書

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石田尾議長「問題の重大性を考えて」特例で取材を許可した

実際は「知る権利」を主張する屋久島ポストに根負けして許可

【議会取材の自由を守る訴訟】

屋久島ポストは訴訟の当事者であるため、主観を入れた取材記の体裁にしています。

屋久島町議会(石田尾茂樹議長)が市民メディア「屋久島ポスト」(共同代表・鹿島幹男、武田剛)の議会取材を拒否したのは、「表現の自由」などを保障した憲法に違反しているとして、屋久島ポストが町を相手取って提起した「1円訴訟」――。

石田尾茂樹議長は6月25日付で陳述書を鹿児島地裁に提出し、屋久島ポストの取材の可否を決めた「議長判断」について説明しています。

この陳述書を踏まえて、前回6月28日付の記事で私たちは、2021年12月から3年半にわたって禁止されてきた議会取材が、一転して2025年6月に許可された理由がいかに不合理であるかを指摘。今回の記事では、国庫補助金の不正請求事件が初めて議題となった2021年11月の町議会全員協議会で、屋久島ポストの取材を「特例」で認めた理由を、どのように石田尾議長が陳述しているのかを紹介します。

議員席から取材を拒否する理由を問われた後、手を出して町議の発言を制止する屋久島町議会の石田尾茂樹議長=2021年12月7日

補助金不正請求事件で屋久島ポストを議場から排除

屋久島ポストは2021年11月9日、町が水道工事の国庫補助金を申請する際に、虚偽の工事完成日などが書かれた実績報告書を提出して、国から1億円超の補助金を不正に受け取っていたことを報じました。

この報道を受けて、町は11月26日に町議会の全員協議会で事情を説明することになったのですが、開会を前に石田尾議長は屋久島ポストの取材を拒否。それに対し私たちは、憲法で保障された「知る権利」や「報道の自由」を主張して、開会直前まで粘って取材を認めさせました。

議場での取材について石田尾茂樹議長(左)と交渉する屋久島ポストの鹿島幹男・共同代表(右)=2021年11月26日、屋久島町役場の議会棟

事実とは異なる石田尾議長の説明

ところが、屋久島ポストの取材を認めた理由について、石田尾議長は陳述書で次のように説明しています。

<屋久島町の行政を大きく揺るがすことになる口永良部島の口永良部地区簡易水道施設整備事業に関する国・県への補助金返還問題が初めて議会に報告されることが上げられていたことから、この問題の重大性を考えて、武田さんらにも撮影を許可したものであり、通常の扱いとは全く異なる例外的な扱いをしたものでした>

この説明は事実とは全く異なります。

全員協議会の当日、私たちは南日本新聞やKTS鹿児島テレビの記者と一緒に取材するため、傍聴席でビデオカメラ用の三脚を立てて準備をしていました。ところが、開会前に議会事務局長から「議長が議場での撮影は認めないと言っています」と告げられ、傍聴席から三脚を撤去するように指示されました。すぐに私たちは議長室に行き、石田尾議長と大角利成副議長に対し、憲法21条で保障された「知る権利」や「報道の自由」を主張して、議場での撮影を認めるように求めました。

石田尾議長が鹿児島地裁に提出した陳述書の1ページと5ページ

議論20分の末に「今回限りの特例」で許可

しかし、石田尾議長の態度は頑なでした。

議会取材は日本新聞協会などに加盟するマスコミ各社だけに許可しており、屋久島ポストは「報道機関ではない」と断じて、議場での撮影は認めないというのです。そして議論は約20分間にわたって続き、午前10時の開会を直前に石田尾議長が半ば根負けするかたちで、「今回限りの特例」として許可しました。

それゆえ、石田尾議長が一転して許可したのは、「この問題の重大性を考えて」判断したからではありません。

国庫補助金不正請求事件の報告を受けるために開かれた屋久島町議会の全員協議会=2021年11月26日、屋久島町役場の議会棟、屋久島ポスト撮影

町から何も説明がないのに「行政史上まれに見る大問題」

特例で取材を認めた経緯について、石田尾議長はこうも説明しています。

<後に、行政訴訟にまで発展して大きな問題となったこの口永良部島の水道事業に関する補助金返還問題は、屋久島町の行政史上まれに見るような大問題であり、その後、大きな問題に発展する可能性が十分に見込まれたので、広く、町民等に知らしめる必要性が高いと判断しました>

これについては、石田尾議長に「虚言癖」があるのではないかと思えるほど、事実無根の説明です。

まず、「屋久島町の行政史上まれに見るような大問題」と言っていますが、11月26日の全員協議会が開かれる事前の段階で、石田尾議長を含めた全町議は、この事件の全容を誰も知りませんでした。なぜなら、荒木耕治町長ら町幹部から何も説明を受けていなかったからです。

国庫補助金の不正請求について、初めて屋久島町議会の全員協議会で説明する荒木耕治町長(右)。左は日高豊副町長(当時)=2021年11月26日、屋久島町役場の議会棟、屋久島ポスト撮影

5カ月後の補助金返還・1年後の行政訴訟も特例許可の理由に!?

それゆえ、「その後、大きな問題に発展する可能性が十分に見込まれた」とする説明も、その時点では予想が不可能でした。国が補助金の返還命令を町に出したのは、それから5カ月後の2022年3月16日。また、不正受給に対する行政訴訟が始まったのは、それから1年後の2022年11月2日で、いずれについても、屋久島ポストの取材を特例で認める理由とするのは無理があります。

「広く町民に知らしめる必要性が高いと判断」は虚言?

そして、虚言性が最も高いと思われるのは、「広く、町民等に知らしめる必要性が高いと判断」したという説明です。それならば、なぜ全員協議会が始まる前に、屋久島ポストの取材カメラを議場から排除しようとしたのでしょう? また、なぜ「取材を許可するのは日本新聞協会などに加盟するマスコミ各社だけ」と言って、約20分間も許可を求める私たちの訴えを拒否し続けたのでしょう?

「知る権利」を奪おうとしたのに「広く町民に知らしめたい」

そして、その後に開会した全員協議会の冒頭では、石田尾議長は全町議にこう説明しました。

<知る権利を奪うということを(屋久島ポストは)おっしゃいましたが、そういうことではありません。議会は議会なりの、しっかりしたルールの判断の基で、今回は遠慮していただきたい、というふうに言いましたが、今回はどうしてもということで承諾しました>

この説明を聞いて、石田尾議長が「広く、町民等に知らしめる必要性が高いと判断」したと、誰が思うでしょう? 屋久島ポストが訴えた「知る権利」、すなわち議長の言葉を借りれば、「広く、町民等に知らしめる必要性」があるとする私たちの主張に対し、石田尾議長は町議会のルールを根拠に「そういうことではない」と否定しています。

つまり、石田尾議長が屋久島ポストの取材を特例で許可したのは、私たちの強い要望を拒み切れなかったからであり、この事件を町民に広く知らせる必要があると考えていなかったことは明らかです。

屋久島町議会の全員協議会で、屋久島ポストに特例で取材を許可したことを報告する石田尾茂樹議長=2021年11月26日、屋久島町役場の議会棟、屋久島ポストさ撮影

客観的な証拠がない後付けの議長の説明

この記事で紹介した石田尾議長の発言は、当時の取材で録音したファイルから書き出しており、私たちはそのすべてが事実であると立証できます。それに対し石田尾議長の説明は、何の根拠もない後付けの説明であり、その事実を裏付ける客観的な証拠は何もないと思われます。

おそらくですが、そこを追及されると、石田尾議長はこう言うのでしょう。

「私としては、その認識だった」

しかしながら、屋久島ポストが保管している取材記録に照らすと、その認識は極めて不合理であり、「虚言」であると言わざるを得なくなるのです。

※「屋久島ポスト」は訴訟の当事者であるため、この【議会取材の自由を守る訴訟】については、記事の文体を「です、ます調」にしたうえで、主観を入れた体験取材記の体裁にしています。

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