5章 負の連鎖⑯『離島記者』

それに続く略式起訴に至った説明は、輪をかけて興味深かった。
「そして、2年前と同じく事情聴取を受けました。このとき私は、『なぜ、また』という気持ちでしたので、気が動転しており、略式起訴の書類にサインをしたようです」
この説明のとおりだとすると、岩山町議は略式起訴に自らサインをした記憶がないということだ。おそらくだが、屋久島ポストの取材で、略式起訴に対する同意を否定してしまったため、「サインをしたようです」と言わざるを得なかったのだろう。
その一方、もし記憶がないのなら、略式起訴に同意していないことになる。そうなると、岩山町議は地検に異議を申し立て、裁判で無罪を主張すべきところだ。だが、それでも罪状を争わずに認めたということは、自ら略式起訴を受け入れたということである。

また、報道に対する不満も口にした。
「いろいろと報道もされましたが、私は産業廃棄物の不法投棄の罪には問われていません。私は、不法投棄はしておりません」
投棄された廃棄物について、一時的に屋久島ポストや一部マスコミが「産業廃棄物」と伝えたことはあったが、それは住民が産業廃棄物を投棄および焼却した容疑で告発していたからだ。略式起訴されたあとも、地検はマスコミの取材には応じておらず、取材する側としては、告発状しか情報がなかったのだ。
そのため、屋久島ポストや一部マスコミは、何度も岩山町議に取材を申し込み、詳細な事情を聴こうとしたのだが、それを拒否したのは岩山町議である。また、自身が経営する賃貸アパートのリフォーム工事で出た廃棄物で、そこにドアや窓枠なども交じっていたとなれば、産業廃棄物と判断される可能性は十分にあったはずだ。

さらには、「不法投棄はしておりません」という説明も事実とは違った。岩山町議が罰金命令を受けたのは「不法焼却」だが、その前段階で「不法投棄」があったことは明らかであり、その容疑については、起訴猶予処分となって罪の事実が認められていた。
そもそもだが、不法投棄をしなければ、不法焼却はできない。もし、それでも岩山町議が「不法投棄はしていない」と言い張るのであれば、工事業者が投棄した可能性があり、さらに別の容疑者がいることになる。
焼却した廃棄物の説明も、私には全く信じられなかった。
「私が法律違反に問われたのは、一般廃棄物の木くずを燃やしたことによります。これは農家が畑でごみを燃やしたり、一般家庭が庭で紙くずを燃やしても、同じ違反に問われてしまうことと同列です」
しっかりと証拠写真に記録された、あの大量の廃棄物を目にして、誰が「木くず」だと思うだろうか。また、一般家庭が紙くずを燃やしたことと「同列」だというが、庭で紙を燃やしただけで、50万円もの罰金命令が出るとは到底思えなかった。

終盤になると、岩山町議は鹿児島地検への不信感もあらわにした。
「2年前に宮之浦の検察庁に呼ばれ、きょう述べたような経緯を説明し、そのときは注意という処分で済んだものの、今また、この時期に刑事告発された理由もよくわかりませんが、検察庁の処分が変わってしまったことにも驚きを感じています」
何も驚くことはない。2年前に「注意」で終わったのは、検察官が写真で大量の廃棄物を見ていなかったからだ。それが今回の告発で証拠写真が提出され、窓枠やドアなどの廃材が焼却されたことが判明。「注意」から一転、罰金50万円になったということである。
最後に近づくにつれて、明確に罪を認めたものの、なんとも往生際が悪い語り口だった。
「この結果につきましては、一部というものの、焼却したのは事実でありますし、罰金50万円という略式命令が出ましたので、野外でごみを焼却することは(法律)違反であることを真摯に受け止め納付いたしました」

また、町議としての進退も、不祥事を起こした議員の常套句を使い、あいまいのまま終わらせた。
「議員職の進退につきましては、家族や支持者の方々と相談をいたしたいと思っています」
表面的に謝罪しても、罰金命令には納得していないと言いたげなまま、約10分間にわたる岩山町議の釈明は終わった。
だが、それだけでは、この全員協議会は散会とはならなかった。真辺町議が批判の声を上げたのち、石田尾議長に厳しい選択を迫ったのだ。
「今回、屋久島町議会の現職議員が、初めて略式起訴されたというかたちになっていますので、議会全体として、その対応を考えるべきだと思っています」
真辺町議が問いただしたのは、岩山町議に対し、議員辞職を促す辞職勧告決議案を、町議会として出すか否かということだった。

議員辞職勧告決議とは、不祥事を起こした議員に対し、議会が「公職にふさわしくない」として辞職を促す発議である。法的な拘束力はないが、議会の意思表示としては重い意味をもつものだ。
その真辺町議の指摘を受け、石田尾議長にしては、珍しく仲間内の岩山町議を突き放した。
「議員としてやはり、あるまじき行為だった」

それまで一貫して、まるで保護者のように岩山町議を擁護してきた石田尾議長だが、有罪が確定したことを広く知られてしまったため、もう守り切れなくなったのだろう。だが、そのすぐあとには腰が砕け、議長としての説明責任を放棄してしまった。
「これからの行動は議員個々が判断することで、それが次の行動につながる。それは私が、どうこう言うことではないと思っている」
(5章 負の連鎖⑰につづく)
※本文に登場する人物の肩書と年齢は当時のものです。
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