6章 住民訴訟⑥『離島記者』

一連の贈答について、森山議員の事務所は「町長個人からの贈り物との認識」と答えていた。それでは、他の4人はどうなのか。
この口頭弁論の前に、町から準備書面が届いていたため、期日前に真辺町議は各議員の事務所にメールで質問を投げかけていた。
➀ 荒木町長からの贈答についての認識。公費による贈答なのか、それとも町長個人からの贈答なのか?
➁ 贈答理由として町は、離島振興法改正を見据えた要望活動などで、支援を受けたことへの謝意や、今後も協力が得られるようにとの趣旨だったと説明しているが、それに対して、どのような認識か?
すると、この質問に対し、各事務所は次の内容で回答してきた。
宮路事務所「個人からの贈答品との認識です」
小里事務所「本件については係争中のため、お答えできません」
武部事務所「送り状も現存していないため不明です」
谷川事務所「係争中とのことで回答は控えさせていただきます」

4人からの回答を踏まえると、森山議員を含めた5人のうち、2人が「町長個人からの贈答」という認識だとわかった。また、その他の3人が「係争中なので回答を控える」「不明」としており、町が主張する<離島振興法改正延長を見据えた要望活動>に関係する贈答であることは確認できなかった。
真辺町議は、裁判所に提出した準備書面でこう主張して、各議員に対する贈答の違法性を訴えた。
<(町は)衆議院議員5人に贈答した理由として「日頃から離島振興を含む各種要望活動に協力をいただいている」「日頃から全国離島振興協議会の用務遂行の場で様々な尽力をいただいていた」などと主張しているが、5人の衆議院議員の回答を踏まえると、一連の贈答に対して、屋久島町民の公費を支出することは不適正かつ不適法であることは明らかである>
また、自民党離島振興特別委員会のメンバーである谷川、武部の両議員について、真辺町議は<離島振興法改正に関わる重要な立場にある>と指摘。2人が<国民に対して、公平公正が求められる立法行為>に関わっていることを踏まえ、<その利害関係者ともいえる荒木町長からの要望を受け付けたうえで、約1万7千円分の贈答を受けることは、立法の平等性の観点からも不適切>だと主張した。

第6回口頭弁論は12月26日に開かれた。前回、裁判官から「宿題」を出された町は、公費とは別に、私費で荒木町長が贈った森山議員への贈答品について、品物や金額を報告することになっていた。
町は荒木町長に聴取した結果として、町長が<イセエビ、すり身、マンゴー、山芋、ありとあらゆるものを送ったことがある>と説明したと報告。最近の贈答としては、<ミズイカ、すり身、やくとろ、トビウオ、ポンカン、タンカンは贈った>と言ったとした。
また、送付の手続きについて、荒木町長は<だいたいは、自分で店に行って頼んでいる>と説明。支払いは<そこで財布から自分で払って頼んでいるから、領収とかは残っていない>と言ったという。

前回の口頭弁論で、荒木町長は<いつ何を贈ったかはあまり覚えていない>と説明したとされていたが、なぜ今回は、これほど詳細に思い出したのか。そんな疑念をもった真辺町議は強く反論した。
<荒木町長の証言は大きく矛盾しているほか、贈答した事実を立証する証拠を示す姿勢を全くみせていないことを踏まえると、「町長になってからも家の住所から個人名で送っていた」とする証言を信用することは到底できない>
その一方、森山議員への贈答について、町は新たな主張をした。
<当該交際が純粋に公人としての交際か、個人としての交際かを明確に区別することはそもそもできない>
また、目的に私的な要素が含まれたとしても、<当該交際費の支出全体が違法となると解するのはいかにも不合理である>と訴えた。
それに対し、真辺町議は<公費を支出した贈答は、そのすべてが公務に関わる公人としての交際のためでなくてはならず、そのなかに私人としての交際に関わる贈答が含まれることは、絶対に許されない>と反論。国会議員との個人的な交際関係を維持する目的も含まれるのであれば、荒木町長の私費で贈るべきであり、<屋久島町民の公金を支出することは許されることではない>と主張した。

最大の争点だった社会通念についても、真辺町議は長く訴えた。
<荒木町長が続けている高額贈答は、日ごろの町政運営に対する国会議員らの支援や協力に感謝、または期待することを主な目的に行われており、その意味では、30年ほど前に解決したはずの「官官接待」と同じ構図であるといえる。中央省庁と同様に、議員立法などの権限を有する国会議員も、各地方自治体に対しては平等であることが求められ、何か特別な接待や贈答を受けた場合は、国民から疑念の目を向けられることになる>
<荒木町長が国会議員らに続けていた高額贈答は、1件で数万円から10万円という金額に加えて、社会的には認められない「官官接待」と同様の行為でもあることから、社会通念上著しく妥当性を欠き裁量権の範囲を逸脱、濫用した贈答であったことは明らかである>
この日で裁判は結審したが、それまで開かれた口頭弁論では、国会議員に対する贈答以外についても審理が続けられた。
まず、荒木町長が知人社長に贈った8件、計約38万円分の贈答について真辺町議は、1件の支出額が平均で約4万8000円になることを踏まえ、<一般的な贈答としては極めて高額>だと指摘。1件の贈答で約11万円を支出し、60本の焼酎を贈るなどした例を示し、予算の執行について<必要且つ最小の限度をこえて、これを支出してはならない>と定めた地方財政法に違反すると主張した。

それに対し町は、入山協力金3000万円の横領事件の際に<総額で1100万円という多大な寄附金により町の窮状を救ってもらった経緯もある>と説明。社長が町の親善大使である「屋久島いとこ」を務めていることも踏まえ、今後も<一層の助力、協力を期待する趣旨でなされたもの>として、社会通念に照らして妥当な支出で、町長の裁量権の範囲を逸脱、濫用していないと主張した。
だが、この社長を除き、町が高額寄付者に贈答した例はないため、真辺町議は<極めて平等性を欠く対応>だと反論した。
(6章 住民訴訟⑦につづく)
※本文に登場する人物の肩書と年齢は当時のものです。
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