5章 負の連鎖⑩『離島記者』

屋久島町に権限がない「許可」を警察が認めた。
そんな説明は信じられなかった。
私は「焼却処分の許可は得ていましたか?」と質問してみた。すると、岩山町議は弱気な声で「廃棄物を燃やしたのは事実で、してはいけない(違法な)ことなので許可は得ていません」と答えた。そして、違法性を認識していながら、それでも焼却処分をした理由については、こう釈明した。
「木片だけを集めていたところに、リフォーム工事の大工さんとのすれ違いで、畑の小屋に入れていた濡れた畳を1枚置かれてしまい、自分の力では重くて運べなくなったんです。(中略)生活環境課長からは『置くのはいいが、燃やしてはいけない』と言われていたのですが、私が疲れてしまい、燃やしてしまいました」
「木片だけを集めていた」という説明も、住民が撮った現場写真を見れば、とても信じられるものではなかった。焼却前に撮影された廃棄物の山には、窓枠やドアなどが交ざっており、誰がどう見ても、リフォーム業者が処分すべき産業廃棄物にしか見えなかった。

ひと通り聴き終えた私は、最後に「現場の証拠写真を見て、岩山町議が『注意』で終わったことに不満や疑問をもつ住民がいます。廃棄物を燃やさずに片づけても、50万円の罰金を支払った人もいますが、どう思いますか?」と尋ねてみた。
すると岩山町議は、短くこう返してきた。
「そこに悪意があったということだと思います」
廃棄物処理法に違反して、不法な投棄と焼却をしたとしても、自分には「悪意」がないから「注意」で終わったということである。だが、あの山のような廃棄物を燃やして、「悪意はありませんでした」と言えば、警察と検察は許すものなのか?
いやいや、そんなはずはない。この事件の裏には、何か公にできない隠された事情があるに違いない。
確証はなかったが、鹿島さんと私はそんな疑いをもちながら、それまでに取材した事実を記事にまとめて、2022年2月1日に初報を配信した。

すると、現職の町議が起こした事件とあって、読者からは厳しい意見が寄せられた。
「廃棄物を捨てることの違法性を認識していたのですね。であれば、なおさら検察の『口頭注意』だけの処分は到底納得できないです」
さらに、岩山町議が町から受けたと主張する「許可」についても、読者から鋭い指摘があった。
「許可をもらったと言っているようですが、法律が廃棄物の投棄および焼却を禁止しているわけですから、地方自治体である町に許可を出すなどの権限はないと考えるのが普通でしょう。そもそもこの事に関して、許可や不許可など存在しないのです」
確かにそのとおりだ。廃棄物処理法で禁止された投棄と焼却に対して、どこも許可を出すことはできないのは当然だった。
そうなると、「許可」を出したとされる生活環境課長に事情を聴かなくてはならない。課長は岩山町議から相談を受けたことは認めたが、「町として許可を出した事実はない」と否定した。仮置きは一時的だという話だったため、「それならいいのではないか」と、口頭で私見を伝えたということだった。

さらに念のため、その「許可」を確認したとされる警察にも取材したところ、屋久島警察署の次長は「(廃棄物関連の)許可をするのは県であり、警察は関係ないので、何もわからない」と話した。
岩山町議が強弁する「許可」は、これで実際には存在しないことがわかった。嘘とまでは言わないが、町議本人が勝手に「許可をもらった」と思い込んでいたのである。
ところが取材を続けると、その思い込みの「許可」を根拠にして、事件の調査を町議会に求める陳情が却下されていたことがわかった。陳情書が提出されたのは、事件が発覚した直後の2021年8月で、地検が出したとされる「注意」に疑問を抱いた住民が、岩山町議に事情を聴くことを町議会に要請したのだ。
陳情を受けて、町議会は8月12日に議会運営委員会を開催。近く開会する定例会で、陳情書をどう扱うかを協議したのだが、大半の町議が「岩山町議が許可を得ていた」ことを理由に、この陳情を定例会で審議することに反対した。
まず、岩山町議と一緒に町長を支持する石田尾茂樹町議は、こう主張して陳情に異議を唱えた。
「先ほど(岩山町議)本人が説明したが、許可を得ていたということで、厳重注意に終わった。ということからいけば、この陳情を取り扱うのはどうかと思うので、私は賛成しがたい」

さらに、同じく町長派の日高好作町議も、まるで許可が「免罪符」であるかのように説明して、石田尾町議に続いた。
「警察の捜査は受けたが、(中略)ちゃんと許可を得ていたという点では、問題があるとは思わない」
最終的に採決となり、この陳情は反対多数で却下され、定例会に上程されることなく門前払いされてしまった。
その議会運営委員会から半年が過ぎ、私たちの取材によって、岩山町議の「許可」は単なる思い込みだったことが判明したのだが、住民の陳情を却下した町議たちは、どのように釈明するのか。
まずは石田尾町議に電話で取材すると、こんな答えが返ってきた。
「委員会の休憩中に岩山町議から『許可をもらっていた』と言われた。許可の内容まで説明された記憶はないが、許可を受けていること自体は、同僚議員の言っていることなので信じた」

つまり、許可の内容を確認することもなく、岩山町議の説明を鵜呑みにして、陳情に反対したということである。実に無責任な判断だが、それに続く日高町議は、おなじみの常套句で責任を放棄した。
「どんな説明だったか、今では記憶が定かではない」
その一方、門前払いされた住民に話を聴くと、「違法行為で捜査を受けた以上、公人の岩山町議には住民への説明責任がある」と強く批判した。また、陳情の却下については、「議会は初めから陳情を受けつける気がなかったのではないか」と、憤りをあらわにした。
(5章 負の連鎖⑪につづく)
※本文に登場する人物の肩書と年齢は当時のものです。
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