5章 負の連鎖④『離島記者』

私たちの見立てでは、森山議員への高額な贈答は少なくとも12件あった。交際費使用伺いにある贈答先を詳細に見ると、黒塗りされた氏名部分の長さに短いものが多く、その下には「森山裕」の3文字が隠されていると推察。それらの贈答記録をまとめて計算したところ、贈答額の合計は約50万円にもなっていた。

その推察を踏まえて、私は「森山議員への贈答額は少なくとも50万円ほどですが、なぜそれほど多く贈る必要があるのですか?」と尋ねた。すると、荒木町長からはこんな説明が返ってきた。
「森山(議員の)事務所1カ所に送っているので、そう見えるが、そこから他(の国会議員)に(贈答品が)いっている部分もある。森山事務所に送ると、そこに(国会議員の)先生がいらっしゃって、私が世話になった人にそこで渡してもらっている」
なるほど、森山議員を介して、その他の国会議員に贈答品が渡っているということである。

それでは、なぜ焼酎の贈答がこれほど多いのか。その疑問に対する荒木町長の説明は、なかなか滑稽だった。
「なぜ焼酎かというと、やっぱり国会議員は『三岳』を知っている。私が行くと『(屋久島には)おいしい焼酎があるよね』と必ず言われる。そうすると、私も贈らないといけないのかな、という気持ちになってね。こちらからお願いごとや相談ごとをするときでも、そうなるので、数が多くなる」
これでは、国会議員たちから「おねだり」をされた荒木町長が、屋久島町の公費を使って、せっせと焼酎を貢いでいるようなものだ。見方を変えれば、頼まれると断り切れない、お人好しな町長とも言えるが、それなら町の公費ではなく、私費で贈るべきだろう。

主な贈答理由とする「町産品のPR」にも納得がいかなかった。そこで、私が「PR用として別予算にするべきではないか」と指摘すると、荒木町長は焼酎の贈答をめぐる「裏話」も聞かせてくれた。
「例えば、新庁舎を建設するために補助金をもらうときに、いろいろな(国会議員の)先生方にお世話になって、PRだけじゃなくて、そういう意味合いもある。(中略)私が森山事務所で(国会議員や関係者と)会うことが多いので、そこで話をして、お礼にというかたちで、1本か2本を『やってください』みたいな話になる」
これでは、国から補助金をもらうお礼として、国会議員たちに焼酎の贈答を続けているようなものである。それも、森山議員の事務所にまとめて送り、どこの誰に渡したのかも、全くわからないやり方で。さらには、その贈り先の議員名を私たち住民が知ろうとしても、町は「個人情報」を理由に隠すというのだから、公費の使い方としては、極めて不適切だと言わざるを得なかった。

それだからか、荒木町長の物言いはいつになく控え目な印象で、「やや多く贈り過ぎたか」と反省しているように映った。そして最後には、今後の贈答では金額や頻度をあらためる考えを示したうえで、こんな自省の念を口にした。
「私の政治は情の部分が多かったかもしれないと反省している」
荒木町長が反省したとしても、贈答された森山議員にも事情を聴く必要があった。ただ、農水大臣や自民党の国会対策委員長などを務めた大物議員なので、電話で取材するわけにもいかない。そこで、私たちは森山議員のウェブサイトを検索し、東京・永田町にある森山事務所の連絡先を見つけて、次の3点をメールで確認した。
➀ 屋久島町民の公費から、頻繁に多額の贈答品を受け取っていることについて、どのような認識と受け止めをされるのか。
➁ 受け取った贈答品はどのように消費されているのか。
➂ この交際費の件について、今後、荒木町長および屋久島町に対して、何らかの対応をするつもりはあるのか。
テレビの政治ニュースで、よく見かける森山議員である。果たして、市民メディアの取材に応じるだろうか。そんな不安を抱きながらメールを送ったが、意外にもすぐに議員の秘書から返事が届いた。

まずは、焼酎や魚介類などの贈答について、「個人からの贈り物だとの認識でした」という。私たち住民の公費から贈答しているのに、受け取った側は、荒木町長が私費で贈ったと誤解していたようだ。
次に贈答の趣旨に関しては、「名産品を県外の方にPRする趣旨で、ご当地の酒などを送って頂いたことがあります。趣旨に従い、地元産品のPRに努めています」という。これは町の説明どおりで、森山事務所を訪れた国会議員らに「お礼」で渡しているということだ。

さらに翌日、追加で送られてきたメールでは、「今後は『町民の大事な公金』での贈答品については、常識の範囲内での贈答につとめていただきたい」との要望があった。公費で贈っているのなら、高額な贈答は「もうやめてほしい」ということである。つまり、1回に36本の焼酎をまとめて贈り、合計で約10万円を支払うような贈答は「非常識」だと、森山議員は思っているのである。
いくら国会議員に世話になっているとはいえ、各議員には年間に計7500万円もの歳費や秘書給与などが国から支払われている。その議員たちが地域住民のために尽力するのは当然であり、私たち屋久島町の住民が、1年間に100本前後の焼酎を贈る必要がないのは明らかだった。

そんな憤りの思いを胸に秘めて、私たちが半月で計20本の記事を配信したところ、町議会9月定例会の一般質問で、この交際費問題が取り上げられることになった。出張旅費不正精算事件などを追及してきた真辺真紀町議が、町長の発した反省の弁を記事で読み、その真意を議場で確かめようとしたのだ。
(5章 負の連鎖⑤につづく)
※本文に登場する人物の肩書と年齢は当時のものです。
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