5章 負の連鎖⑫『離島記者』

住民代表として立つ議場で、ここまで不法投棄が多いことを「残念」だと嘆く人が、果たして本当に自ら不法投棄をしてしまうものなのか。
ところが、その先でも耳を疑う発言が次々と続いた。
「私はきょう来るときもですけども、ペットボトル、空き缶、紙くず、道路に落ちていました。数日前は、車を運転していたら、私の前の車が、ナンバーを控えていますけど、タバコの灰を窓の外にポイポイってしましたね。あれ見たときは町長、もうなんか、悲しさをとおり抜けて、わナンバーじゃないですよ。地元の人の車ですよ。もうふざけないでよ、という。火のついたタバコもポイってされた経験もあります」
ペットボトルや空き缶をポイ捨てしたり、火がついたタバコを車外に投げ捨てたりするのは、決して許されることではない。だが、大量の廃棄物を投棄して燃やす方が、もっと悪質なのは明らかだ。車のナンバーを控えられるどころか、現場の証拠写真を撮られ、警察に通報されたとしても、それは当然だと言うしかない。

そして、ついには条例で罰金を科す提案まで飛び出した。
「屋久島町でごみのポイ捨てをすると罰金が科されるというような(条例を)、例えばつくったとします。そうすると、子どもたちにもそういうのが周知されて、『あっ、やっちゃいけない』ということが、『罰金を払わんといかん』というような、何と言うのかな。(中略)親が捨てなければ、たぶん子どもも捨てないんじゃないかと思うんですが、なかにはやっぱり、子どもたちのなかにも、ツツジのなかに(ごみを)投げ込んだりする子どもたちもいたりします」
ここまで非常識な発言になると、選挙で岩山町議を選んだ私たちの方が恥ずかしくなってきた。子どもにごみを捨てないように教えるために、条例で罰金を科すという発想は、まともな大人の考えることではない。これでは、屋久島の子どもは言って聞かせてもわからないので、罰金で脅かすしかないと言っているのと同じだ。
まだまだ驚く発言があったが、最後に岩山町議は、役場内に通報窓口を設けて、ごみのポイ捨てにも罰金を科すべきだと主張。荒木耕治町長に町独自の条例を制定することを求めるため、こう訴えて一般質問を締めくくった。
「タバコ1本でも許さない。ごみのポイ捨てを許さない。きれいな町をつくっていきましょうということで、徹底していくやり方を考えてもらいたいと思います。世界に通じるきれいな屋久島を、大人も、子どもも、めざしていきましょうということで、どうですか、町長!」

岩山町議にしてみれば、なんとも恥ずかしい動画になってしまったが、公人である町議の発言である以上、私たちはこの事実を報じざるを得なかった。さらには、住民による不法投棄やごみのポイ捨てが多いことを批判し、罰金を科す条例を制定すべきだと町長に進言したとなれば、多くの住民に知らせるより他に道はなかった。
ところが、私たちが2022年3月10日に<【動画】で検証 岩山鶴美町議の議会発言 犯罪性を認識>と見出しをつけて、短く編集した議会動画を屋久島ポストで配信すると、思わぬ反発があった。翌11日に石田尾議長から私に電話があり、いきなり「著作権法に違反している」と主張して、動画の削除を求めてきたのだ。
報道を目的として、情報公開請求で開示された議会動画を配信しているため、著作権法が認める「著作物の引用」にあたり、法的に問題はないと、私たちは考えていた。だが、その見解を伝えようとすると、石田尾議長は「伝えましたよ」と口早に言って、一方的に電話を切ってしまった。

石田尾議長は、岩山町議が町から受けたとする「許可」の真偽を確かめもせず、事件の調査を求める陳情書を門前払いした張本人だった。ありもしない「許可」を根拠に、陳情を却下した事実を報じた屋久島ポストに反感があったのかもしれないが、私たちの言い分も聞かずに電話を切る姿勢は、公人として許されないと感じた。
私はすぐに議会事務局長に電話をして、「今回の動画配信は、公文書として開示された議会動画の一部を引用したもので、公益性のある報道だと考えている」と主張し、石田尾議長に伝えてもらうように頼んだ。また、町議会として反論があれば、屋久島ポスト宛てに文書で出すように求めたが、その後は何の連絡もなかった。

さて、岩山町議が刑事告発され、地検が再捜査を決めたまではよかったが、その後は急に静かになってしまった。告発した住民は、何度か地検に電話を入れたが、担当の事務官からは「捜査中で何も説明できない」と言われ、捜査の進展を知ることはできなかった。
一方、司法記者クラブに加盟していない私たちは、地検で取材ができないため、告発した住民から情報を得るしかなかった。だが、新たな進展がなく、続報を出せなくなった。やがて、町長交際費の取材で忙しくなり、岩山町議の取材から徐々に遠ざかってしまった。
そして年月が流れ、事件の記憶が薄れかけていた2023年7月21日午後、告発した住民から私に、久しぶりに電話がかかってきた。初めは慌てた様子で要領を得なかったが、よく話を聴くと、検察官から電話があり、岩山町議を略式起訴したという。
ただし、さらに住民から詳しく聴いたところ、検察官が妙な説明をしていることがわかった。「不法投棄」の証拠写真を提出したことで再捜査が決まったのに、略式起訴の罪状が「不法焼却」だというのだ。不法投棄については、罪の事実は認められたが、起訴猶予の不起訴処分にしたということだった。
(5章 負の連鎖⑬につづく)
※本文に登場する人物の肩書と年齢は当時のものです。
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